川村満ほか「脳と心のしくみ」要約版

 川村満テキストをベースにして「脳と心のしくみ」を要約、整理する試み。他の文献やテキストを参照する場合は、個々に明記する。

  • 川村満 かわむら・みつる
    • 昭和大学医学部神経内科教授
    • 昭和大学病院附属東病院院長
  • テキスト
    • 山田規畝子『壊れた脳も学習する』角川ソフィア文庫 2011年
    • p254~266
    • //解説 それでも生存する「知・情・意」//
  • 心を操る脳のしくみには、個人差はあるが、それはわずか。
    • 多くの人に共通した原則がある。

脳の機能 A,B

脳の機能A ①認知 ②行為 ③記憶 ④思考 ⑤感情

  • 認知
    • 言語
      • 視覚
        • 絵画など
      • 聴覚
        • 音楽など
      • 体性感覚(触覚など)
  • 機能箇所
    • 中心溝より前/運動脳(前頭葉)
      • 思考中枢:前頭前野
        • 前頭葉の前方部分にあり、前頭葉の約半分を占めて大きい。
        • 右脳にも左脳にもある。
        • //前頭前野こそ意志の発現、未来への展望といった意の働きの発現にもっとも深くかかわっている。実際、この領域が両側性に大きく壊れると、患者は未来を失い、過去だけに生きるようになる。行動は以前に獲得した習慣的なものの繰り返しになり、新しい行動は生み出されなくなる。行動は状況に合わせて選択されることがなくなり、内的なリズムだけを頼りに選択される。//山鳥重『ヒトはなぜことばを使えるか』
      • 運動脳は自己を主張し
        感覚脳は外界の刺激を捉えて認知する。
      • 運動脳の障害では、環境依存的になり、
        感覚脳の障害では、自己依存的になる。
      • 運動脳の前頭前野
        感覚脳の頭頂・側頭連合野は密接な線維連絡を持ち、互いに影響しあって環境と自己との関係を統制している。
        • 諸事項の判断能力にもっとも関係し社会的認知機能と密接に関与している。
    • 中心溝より後/感情中枢:感覚脳(3つの領域)
      1. 後頭葉〈視覚〉
        • 領域のすべてが視覚と関与
      2. 頭頂葉〈体性感覚〉
        • 隣接する境界部分は機能が曖昧
        • 連合野という特殊な機能
        • 頭頂連合野……体性感覚、視覚、加えて聴覚も連合し、側頭葉と接する大きな領域
          • //自分がどこにいるか、そばに誰がいるか、周囲の風景はどのようなものであるか、自分がこれから進む方向はどちらかの方角なのか//など
          • //「あ」という音を聞いて「あ」という文字を思い起こすことができるのは、聴覚刺激と視覚刺激とが交流しているということであり、頭頂連合野の機能なのです。文字や文章を書くこと、それに読むことにも頭頂連合野は関係し、それらの機能にとってもっとも重要な領域です。//
      3. 側頭葉〈聴覚〉
        • 後方部は視覚にも関与
        • 内側部は大脳辺縁葉と隣接し、記憶・感情と関与
          • 「大脳辺縁葉」と「大脳辺縁系」はほぼ同じ意味だが、前者は形態を、後者は機能を意味する。
        • 側頭連合野……聴覚と視覚を連合。
          • //ある人を見て一方で声が浮かび、電話の声を聞いてその人の顔を思い浮かべる//など
  • 行為
    • 認知①と行為②は、感覚機能の交流
    • たとえば、「あ」という文字を書くとき //最初に横線を引きますが、それをどのくらいの長さにするか調節するのは体性感覚機能と視覚機能の運動制御です。手の体性感覚機能のフィードバックが必要なのです。「あ」という文字の形態は、幼少時のいつかに見て覚えた、つまり視覚的に学習したものです。//
    • //体性感覚・視覚・聴覚の交流があって初めて遂行される機能には、ものを見て捉える動作、着衣、道具使用、物品と物品の位置関係を認知する機能など、日常生活の随所に関連するさまざまなものがあります。//
  • ③記憶
  • 判断能力/意思決定
    • 思考
      • 推論、判断、善悪、内省、計画など
    • ⑤感情
      • 好き、嫌い、喜怒哀楽、恐怖、美意識など
  • 認知①は、思考④または感情⑤またはその両方で処理され→外界の変化に応じて行為②がなされる。
  • 頭で覚えた記憶③
    • 認知① 思考④ 感情⑤……過去の経験と比較参照される。
    • 顕在機能と感じられるが、潜在的にも働き、かつ非常に大きな部分を占めていることが最近の脳科学の研究で明らかにされつつある。
  • 体で覚えた記憶③(手続き記憶)
    • 行為②
    • 潜在機能であり、無意識のうちに獲得され発揮される。
      • 自転車や自動車の運転技術。スキーやテニスの技術向上など。

脳の機能B

  • 顕在化(意識されるシステム)
  • 潜在性(無意識)
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意識のコントロール=脳幹

  • 意識のコントロールの中心は、大脳ではなく脳幹
    • 新しい >……> 古い 
    • 前頭前野(大脳新皮質)>大脳辺縁葉>扁桃核・脳幹

 脳の機能A(5つの機能)について、意識はこれら機能5つの活動レベルを調整する。意識がぼんやりすれば脳のしくみは十分に機能せず曖昧となる。逆に、意識が覚醒することで脳のしくみは機敏となる。

大脳機能の左右差

//大脳の機能に左右差があることを発見したのは、アメリカのロジャー・スペリーという神経科学者で、1981年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。ただし巷で流れている右脳(うのう)俗説は、全部が正しいわけではありません。また学術用語に「右脳(うのう)」という用語はなく、「大脳右(みぎ)半球」と呼びます。
 多くの人では、「大脳左(ひだり)半球」(以下、左半球)には言語中枢があります。言葉にすること、計算、それから分析してどちらが大きいかなどと比較するようなことは、左半球が得意です。
 それに対し、「大脳右半球」(以下、右半球)は空間を認知したり、全体を把握したり、顔の判別や、意味を理解するということが得意です。// 山口和彦(脳神経科学者)『こどもの「こころと脳」を科学する』(ジャパンマシニスト社 2022年)p171

2022.9.18記す

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