アナログ伝達(思考)をする脳 | 学習ノート

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p119
//ニューロンの電気的な活動は、コンピュータのようなデジタル信号処理と捉えることができますが、広範囲調節系は、ゆっくりかつぼんやりとしたアナログ的な伝達です。この点において、脳はコンピュータとは本質的に異なります。ひょっとするとこのアナログ伝達こそが、生き物らしさや「こころのはたらき」を担っているのかもしれません。//

  • p117
  • 広範囲調節系……(脳の)広範囲の活動を同時に活性化させる
    • 神経修飾物質……細胞外スペースの中で(//シナプスを形成せず//p122)拡散し(//拡散性伝達//p122)、(脳の)広範囲の活動を調節する物質
      1. ノルアドレナリン
      2. セロトニン
      3. ドーパミン
      4. アセチルコリン

細胞外スペース(脳のすきま)
──脳科学最後のフロンティア──

p108
//脳における間質の存在は、神経科学では古くから知られていて、細々と研究が続けられていました。それが近年の測定方法の進歩によって、新しいはたらきが見えてきて、脳の間質、つまり脳の細胞外スペースが重要な役割を果たしている可能性が出てきたのです。こうした研究は、アメリカのチャールズ・ニコルソンを中心としておこなわれてきました。彼は総説論文の中で、脳の細胞外スペースは「神経科学最後のフロンティア」であると言っています。//

 細胞外スペースのスペースつまり「すきま」と指摘されると、たとえば、絵(左)のようなイメージをもつ。すきまには違いないが、すきまの要素(間隔長さ)に、より意味があるようだ。
神経細胞の束に意味はあるのか? | 学習ノート

間質 かんしつ

  • 体重比
    • 皮膚…約16%
    • 間質…約20%

p105
//従来、人体最大の器官は「皮膚」であると考えられてきました。ところが、これまでの常識を覆す驚くべき報告がありました。これだけ医学が発展したというのにもかかわらず、アメリカの研究者〔※上記〕が、最近になってようやく「人体最大の器官」を発見したというのです。それは間質と呼ばれる、体組織と体組織の「すきま」です。//

p105
//間質は、皮膚の下や臓器、筋肉など、体のあらゆる部分の「すきま」に存在しています。//

p106
//今回の研究では、間質は「すきま」といっても何もない乾いたスペースなのではなく、間質液と呼ばれる無色透明の体液で満たされていることがわかりました。この液体が流動し、老廃物を排泄したり、体の免疫機能を支えるリンパ系へと液体を運んでいて、間質はその通り道になっていると考えられます。したがって、間質の存在は不可欠であり、もはや「器官」と呼んでも良いのではないかと、研究者らは主張しています。//
※→ 脳の間質(すきま | 細胞外スペース)

細胞外スペースの「スペース」

p112
//テトラメチルアンモニウムを使用して、さまざまな状態のマウスやラットの脳組織の細胞外スペースが測定されました。その結果、脳の細胞外スペースの体積は一定ではなく、脳の状態に応じて、あるいはライフステージによって、伸び縮みすることがわかってきたのです。//

  • たとえば……(マウスやラットの場合)p113
    • 寝ているとき、麻酔下……(脳全体の;以下同じ)約23%
    • 覚醒下……14%
    • 脳梗塞などの理由で虚血状態……5%
    • 若い未成熟の発達期……約40%
    • 老齢動物……13~16%
  • //細胞外スペースが減少するということは、逆に脳の中の細胞が膨らんだ状態になっているという可能性が考えられます。しかしながら、脳の中のニューロンなのか、グリア細胞なのか、どの細胞が膨らんでいるのかについてはまだ完全にはわかっていません。//

p121
//細胞外スペースの体積の制御にもノルアドレナリンが関与していることが報告されていますが、細胞外スペースの減少が何に起因するかはまだ完全には理解されていません。近隣のニューロンが膨らむという説と、アストロサイトが膨らむという説と、その両方という説があり、決着はついていません。//

p119
//ニューロンの電気的な活動以外のはたらきが私たちの「気分」を決める、つまり“脳のモード”を調整しているとも言えると私は考えています。//

脳の「すきま」……旧来の表記

//中枢神経系は、頭蓋骨および脊椎で囲まれた上下に長い中空の領域に収まっています。頭蓋骨の作る腔(くう)(頭蓋腔といいます)は丸く大きく、脊椎骨が作る腔(脊椎管とよびます)は狭く長くなっています。これは中枢神経系の先端部(頭側とか前方ともいいます)が大きく発達し、それ以外の部分はそれほど発達しないままであることを示しています。中枢神経系のうち、頭蓋腔に収まっている部分をまとめて脳と呼び、脊椎管に収まっている部分を脊髄と呼びます。脊髄は第1頸椎からだいたい第1腰椎のあたりまで長く伸びています。//山鳥重『心は何でできているのか』2011年 ♠p66

♠p106
//では、どうしてこれまで間質は見逃されてきたのでしょうか? 顕微鏡を使った従来の観察法では、組織標本の腐敗を防ぐためにホルムアルデヒドなどの化学物質で処理する必要がありました。この過程で、間質液は流出してしまいます。間質液が流出すると、コラーゲンとエラスチンで構成される編目構造が破壊され、結果として、ただの厚いかたまりのように見えていました。//

ヨーロッパ古代、精気(たましい)は空気に由来していた

♠p38 1000年にわたり欧州で席捲した医師ガレノス(129年頃~199年頃)の言説
//たましいについては、そのもっとも重要なエッセンスは空気に由来し、空気が脳室で生命精気と混ぜられて、精神精気になるというのですから、ギリシア時代とあまり変わりません。
 先のアリストテレスの、脳中央部には空洞がある、という記載が脳室についての最初の記載だそうですが、ガレノスの時代には(ガレノスが言いだしっぺかどうかははっきりしません)、この脳室をたましいの住み処と考えるのが医学の常識になっていたようです。たましいのもっとも重要な部分は空中に瀰漫〔びまん〕していると考えられていたのですから、大脳中央の空所である脳室は、たましいの収まる場所としてはまさにうってつけでした。//

♠p38
//ヨーロッパの医学的停滞時代に、一貫して信じられ続けたのが、こころの働きは脳室にあるという考えです。脳には3つの脳室があるとし、これら3つの脳室がこころの働きを分担するという、いわゆる3脳室説です。脳室ドクトリンと呼ばれています。//
♠p39
//この空洞に空気は存在せず、脳脊髄液がゆっくり流れています。//

♠p77
//この網状の構造が、頭側から順番に、側脳室、第3脳室、中脳水道、第4脳室と呼ばれる中空部のまわりをびっしりと取り巻いています。//


//脳脊髄液は、脈絡叢によって血液が濾過されてできます。この液は脊髄から脳表面まで脳室を循環し、髄膜で再吸収され、脳の静脈に排出されます。この脳脊髄液が脳室に満たされることにより、柔軟な衝撃吸収空間ができます。よって、頭蓋骨や脊柱と脳が接触することなく、神経系を支えることができるのです。//フロイド・E・ブルーム他『新脳の探検 上』講談社ブルーバックス 2004年 ♣p120

♣p119
//脳脊髄液の循環がもつ機能はよくわかっていませんが、//

♣p113
//研究者たちの大変な努力にもかかわらず、大部分のグリアの機能はわかっていません。科学者たちは漠然と、ニューロンを助ける仕事をすると考えています。//
♣p113
//星状グリアは、シナプス機能の調節に非常に重要なある種の信号をつくり出す役割もはたしているのかもしれません。//

絶妙なモード調節(こころのはたらき)のしくみ
》4つの神経修飾物質《

1: ノルアドレナリン
……脳のアラートシステム(予期しない刺激に対応)

毛内拡『脳を司る「脳」』p120

p119
//ノルアドレナリンを産出するノルアドレナリン作動性ニューロンの核は、脳幹に存在する青班核(せいはんかく)と呼ばれる部位に位置しています。青班核は左右1つずつあって、ヒトでは約1万2000個のニューロンが存在しており、その一つ一つが25万個以上のシナプスと接触しています。このことからも、ノルアドレナリンがいかに広範囲の脳機能を調節しているかがわかるでしょう。//

  • ノルアドレナリンのはたらき
    • //未知の環境に置かれたときにノルアドレナリンの放出が促進される//p120
      • //脳の覚醒水準を高めて注意を集中し、目新しい環境(新奇環境)に置かれたときに生じる不安やストレスなどの気分を制御しています。//p121
    • //環境に適応するために、記憶を活性化し、学習効率を高める作用も持っていると言われています。//p121
    • //脳がフル回転するのに備えて、脳に蓄えられているエネルギーを分解して利用するはたらきもあります。//p121
    • 火事場の馬鹿力
  • はたらきが異常になると──
    • //常にアラートシステムが亢進したような状態になり、ストレス関連障害である外傷性ストレス障害(PTSD)を患うことになります。//p121
    • //ノルアドレナリン作動性ニューロンが活発すぎると注意欠如・多動性障害(ADHD)になり、少なすぎると覚醒レベルが落ち、眠気が生じることになります。//p121
    • //外部環境の変化だけでなく、体の内部環境の危機的な変化にも対応しています。//p121
      • //血管が詰まって酸素の供給が滞る低酸素状態に陥ったり、外傷などによって出血が生じたり、飢餓によって低血糖になると、ノルアドレナリンの放出が促進されることが報告されています。//p121

p120
//ノルアドレナリンは、アミノ酸のチロシンから合成され、さまざまな工程を経てドーパミンとなり、その後、ノルアドレナリンへと変化します。ノルアドレナリンはさらにアドレナリンへと変化します。
 ノルアドレナリンは脳で作用するのに対して、アドレナリンは全身に作用します。//
ドーパミン……//ノルアドレナリンの前駆体//p125という表現も

2: セロトニン
……うつ病(気分や不安)とも関係

毛内拡『脳を司る「脳」』p123
  • セロトニンのはたらき
    • //本能的な行動を制御//p122
      • //血圧調節体温調節摂食行動性行動睡眠覚醒のサイクル概日リズム攻撃性や不安などの情動活動をはじめとする、生存に必須の機能をいくつも制御しています。//p122
  • うつ病との関連
    • //多くの抗うつ剤はセロトニン量の制御をターゲットとしています。//p122
      • //一般的にうつ病と呼ばれる気分障害や不安障害では、脳内のセロトニン代謝物が減少している//p124
      • //ある種の麻薬もセロトニンの放出を過剰にするはたらき//p122
  • セロトニン×ノルアドレナリン p122
    • ノルアドレナリン……//痛みや騒音、恐怖などの情動刺激や、低酸素、低血糖になると//急上昇
    • セロトニン……痛みなどの刺激に対して、//ビクともせずに淡々と規則的な活動を続けます。//
      • しかし……//歩行や咀嚼、呼吸、マウスなどの動物で見られるグルーミング(毛づくろい)のような規則正しいリズミカルな行動をすると、//活動が増強する。
    • 睡眠の場合……覚醒サイクルに重要な役割
      • ノンレム睡眠……ノルアドレナリン、セロトニンとも減弱
      • レム睡眠……両方とも完全に消失
      • 覚醒時……セロトニンは、//きわめて規則的な活動をしていて//p122

3: ドーパミン
……やる気やモチベーション、感情を左右。高度な知性。

毛内拡『脳を司る「脳」』p126

p127
//ドーパミンが作用する淡蒼球(たんそうきゅう)と呼ばれる部分は、報酬の量を予測し、やる気をコントロールすることから、脳の「やる気スイッチ」とも呼ばれています。意欲やモチベーションというのは、のちに来るであろう報酬を予測できるからこそ持続できるのであり、高度な「知性」だと言えます。//

  • ドーパミンのはたらき
    • 運動機能……//自分の意思で体を動かす随意運動開始に関わっている//p125
      • //パーキンソン病との関連//p125
      • //姿勢の維持や、適切な行動を選択するなどの細やかな運動の制御//p125
    • 情動機能……感情(快不快、嫌悪や恐怖、喜怒哀楽など)

//腹側被骸野(ふくそくひがいや)に存在するドーパミン作動性ニューロンは、大脳皮質を含む広範囲に投射しています。//(上図)
//情動や報酬行動に関与していて、統合失調症との関連が報告されています。//127 (※//ドーパミン仮説//p128)

p127 報酬系
//報酬行動とは、空腹時に食事をすることや性行動など、本能が満たされる際の快感や、これらの快感をより多く得ようとするために将来を予測した結果生じるやる気などと関連する行動のことです。また記憶とも密接に関与していて、受けた感覚情報を過去のものと参照して、評価することにも関わっています。//

p127
//たとえば、ある食べ物がとても美味しくて良い気持ちになったとします。脳は素早くそれを学習し、次に同じ「報酬」を得ようとして、報酬が最大になるように適切な行動をとる、すなわち好きなものばかりを食べるようになるというわけです。//

4: アセチルコリン
……記憶や学習、モードチェンジも!

毛内拡『脳を司る「脳」』p129

p130 アセチルコリンは、
//シータ波のリズムの発生に重要であることが報告されています。//
……//作業記憶のような短期記憶は、睡眠中に長期記憶として変換されているという考え方があるため、一時的な記憶が長期記憶として定着するのに、シータ波が何らかの役割を果たしていると考えられているのです。

  • アセチルコリンのはたらき
    • //筋肉を動かす末梢神経と筋肉の接合部ではたらく//p129
      • //1921年に最初に同定された神経伝達物質//ブルーム『新脳の探検 上』p96
    • //筋肉だけでなく、脳の中でもはたらきを持っていて、とくに大脳皮質や海馬と呼ばれる脳部位の情報伝達に関与している//p129
      • //すなわち、学習や記憶に重要なはたらきをしている//p129

p129
//マイネルト基底核は、アルツハイマー病との関連がよく知られています。大半のアルツハイマー病の患者では、マイネルト基底核のアセチルコリン作動性ニューロンの数が少なくなっている「脱落」と呼ばれる現象が報告されています。//

p130
//麻酔下のノンレム睡眠中の動物(マウス・ラット)に痛み刺激を与えると、脳波が徐波から一時的に速波へとシフトします。このとき、前脳基底部のアセチルコリン作動性ニューロンの活動頻度が上昇することが報告されていて、アセチルコリンのはたらきが脳全体のモードチェンジを担っていると考えられます。//

2022.10.28Rewrite
2022.10.18記す

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