||||| あかちゃんの心 |||

Home > 砂をすくうように

  1. 「共感する」は生得的らしい
  2. 間主観性(かんしゅかんせい)
  3. ミラーニューロンの発見 1996年

1:「共感する」は生得的らしい

 後述する「ミラーニューロン」が私たち肉体の一部として備わっているのであれば、「共感する」は意思によるのでなく生理的なことになる。あかちゃんは胎児のとき、母の声を感じていた。生まれてきて母に抱かれ、心臓音や母の声をからだで受けとめ安堵する──というストーリーでよいだろうか。つまり、あかちゃんも共感する能力をもっている。ミラーニューロンの存在に左右されるストーリーだが、生得的に共感する能力をあかちゃんがもっていることは確かなようだ。

2: 間主観性(かんしゅかんせい)

 あかちゃんと母は一体だ。この状態に「間主観性」という馴染みにくい用語が与えられている。母はおとなであり、自己が確立している。あかちゃんは自己が確立していない。あかちゃんは自身の心や体をどう感じているのだろうか。心としては「仮の自己」とでもという間主観性の状態にある。母から独立する前、心は母に支えられている。
 他者の心を読む能力(「心の理論」)は4歳を待つことになる。それまでに、間主観性から独り立ちし、自己を表出できるようになる。間主観性として自己が守られる”期限”は3歳の誕生日を待つことになるらしい。おかあさんは、3歳になるまで我が子のお世話で大変だ。
 入園年齢について3歳未満と定められている〈小規模保育園〉は、間主観性という心で満たされているといえるだろう。

3: ミラーニューロンの発見 1996年

 ミラーは鏡。何かを映す鏡。ニューロンは脳にある神経細胞。鏡の役割をもつ神経細胞が脳のなかにあるという。イタリアの科学者が1996年に発見した。

 レストランでメニューを見て注文した。注文を待つ間、隣のテーブルでは別の客が注文していた料理が運ばれてきた。(美味しそうだあ)(注文を変えたいが無理だなあ……)(魚と肉で迷ったけれど、肉にすればよかった……)これがミラーニューロンの作用だ。過去に味わった経験が食べる前に想像できる。食経験が豊富なら、目で見ただけで想像がふくらむ。
 〈共感〉はミラーニューロンの仕業ということになる。新生児に間主観性が伴うのもミラーニューロンの仕業で、ミラーニューロンの発見者は「スーパーミラーニューロン」と名づけたりしている。ミラーニューロンの役割については未解明が多く、誕生前から備わっている理由は謎だ。進化のなかで受け継がれ続けているのだろうか。共感する能力は生得的なのだ。コミュニケーションに支障をきたす自閉症スペクトラムは、このミラーニューロンが関与する障碍ではないかと研究が続いている。

 これらを理解し、自分のものとするには、なかなか苦労がいるだろう。しかし、現場で保育事例の多くを体験しているならば、そのことが最も近道にいることになる。ヴィゴツキーのいう最近接領域にいることになる。

2021.1.2記す

© 2024 ||||| YAMADA,Toshiyuki |||, All rights reserved.