光は1秒で地球を7周半まわるスピードだ。地球上で最も速い。あなたは、光より速いモノはあると思うか?
──レイ・カーツワイルは、//もしもわずかでも光速の限界から逃れることができれば、ついには、超光速の能力を駆使できるようになるだろう。//(『ポスト・ヒューマン誕生』p33)
レイ・カーツワイルはニューヨーク生まれ(1947年)の未来学者だ。
──レイ・カーツワイルは、毎日サプリメントを250粒を”食べる”。
──//やがて人間はサイボーグとなり、知能における非生物的な部分は、そうした脳内の装置を足がかりとして、機能を指数関数的に拡大させていく。//……//2040年代には非生物的な脳のほうが数十億倍もの能力を発揮するようになる。//(同上p500)これが、”未来学者”の言い分だ。
──あなたは、これを信じるか?
「指数関数的に拡大」としているそれは、巨大データセンター心臓部《記憶素子》のことである。家庭用個人パソコンにテラバイト級の記憶素子(ハードディスク)があれば、生涯の記録を収めることができる。データセンターは、地球全人類の生涯を幾世代にもわたって蒐集する。いわゆるビッグデータである。そのデータをさばくのは、AI(人工知能)である。
森川幸人/編著『僕らのAI論』SBクリエイティブ 2019年
p58
//AIがらみの話でよく目にする「シンギュラリティ」は、前述の〔※1〕物理学のシンギュラリティと区別して、「技術的特異点」と呼ばれます。「技術的特異点」という言葉を提唱したのは、アメリカの未来学者であるレイ・カーツワイルです。//
※1……//「シンギュラリティ」という言葉はもともと物理学の用語で、日本語に訳すと「特異点」となります。物理学で言う「特異点」とは、ブラックホールや宇宙の誕生時のような無限に小さい空間に無限の大きなエネルギーがある「点」ということになります。//p58
p140
//カーツワイルは、次のようなことを述べています。
どんどん進化していくAIは、やがて人間の「知能」を超えてしまう。そうなったとき、AIが何を考えているかわからなくなる。どうしてだかわからないけれど、人間より正しい計算や判断や推測をするので、人間はAIの判断に従わざるを得なくなる。
そして、AIが人間の知能を超えて、それ以降はAIが自律的に自ら進化を続け、人間との能力差はどんどん広がり、後戻りできなくなる。やがて人類はAIに支配されることになる。//
p140
//人間とAIの能力がひっくり返る時を「技術的特異点」と呼び、著書の中で、それはだいたい2045年くらいになるんじゃないかと予測したことから、「2045年にAIが人間を支配する!」というセンセーショナルな警告が一気に世に広まりました。
もっとも彼自身は、警告と言うよりは素晴らしい未来として発言している気がします。//
※ただし、著者の森川は、この”警告”について多くの疑問をつらねている。
『ポスト・ヒューマン誕生』(上記)本の帯には以下の”推薦広告”が記されている。
//レイ・カーツワイルはわたしの知る限り、人工知能の未来を予言しうる最高の人物だ。ITが急速に進化をとげ、人類がついに生物としての限界を超える未来を、本書は魅惑的に描いている。そのとき、われわれの人生は想像もつかない大変革を経験するだろう。 ビル・ゲイツ//

▶情報の脱偏食:「回し車からの自由」を考える
▶鳥海不二夫/山本龍彦『デジタル空間とどう向き合うか』
▶AIと原発 | 想田和弘
▶AIが文学作品や芸術作品を”創作”する意味
▶読み・書き・算盤(そろばん)・リテラシー
山本龍彦『おそろしいビッグデータ 超類型化AI社会のリスク』朝日新書 2017年
p194
//ビッグデータやAI。シンギュラリティ。
なんかおかしい……。私たちは、何か重要なものを失っているのではないか。//
p195
//私たちは、データ的存在として常にスキャンされ、そこから引き出される「属性」の組み合わせによって確率的に評価され、仕分けされる。
ベルトコンベアーに載せられる製品のように。
これが個人の尊重原理と矛盾することは明らかである。//
p181
//イタリアの哲学者であるフロリディの言葉を借りれば、私たちは常にネットワークに埋め込まれた情報有機体である。//
p169
//しかし、ヨーロッパやアメリカは、確実に日本と異なる議論状況にある。//
p169
//特にヨーロッパは、憲法の価値理念が経済秩序をも包摂するという考え方が強く(憲法秩序⊃経済秩序)、民間企業による個人情報の取り扱いを規制するデータ保護法制と人間の尊厳・個人の尊厳(個人の尊重)といった基本的な憲法価値とが切り離れることなく議論される傾向にある。//
p174
//アメリカでもまた、ビッグデータと憲法とのかかわりは自覚的に論じられている。//
p176
//アメリカでも、ビッグデータに基づくAIの確率的な評価が「独り歩き」することを防ぐための法制度が整備されつつあると考えてよいだろう。//
p176
//それに比べて日本はどうだろう。もうおわかりかと思うが、完全に立ち遅れている。//
p177
//AIのリスクというと、AIが暴走して人間を殺し始めるのではないか、という「かなり先」の話になり、バーチャル・スラムのような近い将来起こりそうな話は根拠もなく楽観視される。
デジタル・マーケティングを専門にしている私の知人は、ビッグデータを用いたプロファイリングは、いま日本が一番やりやすいという。//
山本龍彦 略歴の出典
1976年生まれ。1999年慶應義塾大学法学部卒。2007年博士(法学)。内閣府消費者委員会専門委員、デジタル庁・経済産業省「国際データガバナンス検討会」座長、総務省「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」座長代理、同検討会ワーキンググループ主査、総務省「ICT活用のためのリテラシー向上に関する検討会」座長などを務める。
2026.7.8記す

