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松本三和夫『科学社会学』東京大学出版会 2021年
p11
//元来、科学と技術の特性は大きく異なる。科学の来歴は17世紀のいわゆる近代科学革命を推進した自然科学に端を発する。技術は、治水、種まき、灌漑といった目前の実用にこたえる技として古代以来蓄積されてきた経験則(例。農業暦、求積法など)に端を発する。科学の担い手の多くは学者の出自であり、技術の担い手の多くは職人の出自である。科学者の目的は論文を書くことであり、未決の問題には、わからないとこたえる(例。フェルマー予想が証明されるのに300年以上を要した)。技術者の目的は有用物を生みだすことであり、往々にして未決の問題を繰り延べにすることができない(極端な場合、なぜそうなるかはともかく、とにかくなんとかすることがもとめられる)。
 このように、来歴も、担い手もおよそ趣を異にする(場合により、正反対である)にもかかわらず、科学と技術は接近の度合いをふかめ、あたかも科学技術(techno-science)というひとつのものであるかのようにふるまいはじめる。そういう状態がはじまるのは、19世紀なかば以降のことである。//

pⅰ
//社会学はあらゆるものを社会現象とみる。ただし、例外がひとつある。例外は、科学技術である。事柄が科学技術に及ぶと、事実上社会現象には属さないとみなされることが多い。//
pⅰ
//称揚されるにせよ、批判の対象になるにせよ、科学技術は所与とみなされてきた。社会学にとって科学技術はタブーに属する主題であった。//
pⅰ
//はたして、福島第一原子力発電所事故を経験した後でも、事故の背景にある科学技術と社会のかかわりを分析する社会学者の試みは乏しい。
 他方で、科学者や技術者は、自然を対象とする際に用いる精緻な方法を社会に向けることはない。//
pⅱ
//この本〔『科学社会学』〕は、そういう反作用〔※★〕を受け止め、科学技術と社会のかかわりをあえて社会学の視点をふまえて捉えなおそうとする。//
※★……//科学技術という知の営みを対象とすることは、当該分野への反作用を被ることは避けられず、そういう反作用をふまえつつ、それでもなおみずからの分野のなかに学問的な基盤を新たにつくりあげるという再帰性(reflexivity)と向きあわざるをえない。//pⅱ

2026.9.1記す

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