||||| 新渡戸稲造『武士道』:補遺:芥川龍之介『手巾(はんけち)』より | 新渡戸の義憤 |||

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補遺:芥川龍之介『手巾(はんけち)』より

新渡戸の義憤

  • 1916(大正5)年の作品 青空文庫より
  • 先生の信ずる所によると、日本の文明は、最近五十年間に、物質的方面では、可成(かなり)顕著な進歩を示してゐる。が、精神的には、殆(ほとんど)、これと云ふ程の進歩も認める事が出来ない。否、寧、或意味では、堕落してゐる。では、現代に於ける思想家の急務として、この堕落を救済する途(みち)を講ずるのには、どうしたらいいのであらうか。先生は、これを日本固有の武士道による外はないと論断した。武士道なるものは、決して偏狭なる島国民の道徳を以て、目せらるべきものでない。却(かへつ)てその中には、欧米各国の基督教的精神と、一致すべきものさへある。この武士道によつて、現代日本の思潮に帰趣(きしゆ)を知らしめる事が出来るならば、それは、独り日本の精神的文明に貢献する所があるばかりではない。延(ひ)いては、欧米各国民と日本国民との相互の理解を容易にすると云ふ利益がある。或は国際間の平和も、これから促進されると云ふ事があるであらう。
    • 「最近五十年間」は、明治維新以降の50年間に相当すると思われる。
    • ここでいう「先生」とは、新渡戸稲造らしい。

2019.11.18記す

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