本庶佑『いちのとは何か ──幸福・ゲノム・病』
+ 岩波書店 2009年
+ 第1部 〔生命の思想〕
+ 第2部 生命科学と物理学の対話
第1部 〔生命の思想〕
01 幸福感の生物学
02 ゲノム帝国主義
03 流動性──有限のゲノムの壁を超える仕組み 1
04 時空間の階層性──有限のゲノムの壁を超える仕組み 2
05 ゲノムに刻まれる免疫系の〈記憶〉
06 内なる無限──増え続ける生物種
07 生・老・病・死
08 がん、細胞と個体の悩ましき相克
09 心の理解への長い道
10 生命科学の未来
幸福感の生物学
幸福の由来
倫理性を生みだす進化
偶然と必然
幸福感を支配する遺伝子
感覚は麻痺する
不安感というもうひとつの要素
物理学帝国主義 & ゲノム帝国主義
物理学帝国主義と生命科学の歴史
情報の集積体としての生命 p30 //生物がもっている分子や情報の複雑度は、//……//おそらく物理学で扱う対象のレベルをはるかに超えるものと思われる。//
生命科学における二つの”原理” ① メンデル、遺伝の法則 ② ダーウィン、進化の原理
進化における偶然 + ジャック・モノー 偶然と必然
ゲノム帝国主義 p37 //「生命の原理は、生命独自の法則によってつくり上げられたゲノム情報に規定される」
有限のゲノムの壁を超える仕組み 1 ──流動性
〈有限〉から〈無限〉へ
遺伝子自体が変わる”しなやかさ”
ゲノムの転写後の情報編集
有限のゲノムの壁を超える仕組み 2──時空間の階層性
情報発現の階層性
情報伝達の階層性
階層性の逆行
ゲノムに刻まれる免疫系の〈記憶〉
歴史を動かした感染症
免疫系の進化
〈記憶〉する免疫系
記憶の鍵となる分子AID
内なる無限──増え続ける生物種
記載しつくせぬ多数の種
細菌が秘めた大きな力
共生細菌がもたらすメリット
進化へのインパクト
DNAの交換が新種を生みだす p78 //この分野の研究はまだ始まったばかりであるが、地球上の生物系のなかでは、遺伝情報を交換することによって次々と新しい種を生み出すということが、かなりの頻度で起こっているとすると、生命体の種類は、まさに”無限”ということになる。//
生・老・病・死 しょう ろう……
細胞の死と個体の死 p80 〔生命三要素〕①自己複製 ②適応性 ③自律性
寿命を規定する遺伝子 p82 //人は永遠に生きられるのではないかという発想をもつ人もあったように聞く。//……//生命体の歴史と特性を考えると、そのようなことを目指すことは適切ではない。//……//命は、滅ぶことによってその存在が活きると、私は考える。//
環境との戦い──適応が生存を決める
〈環境〉と〈遺伝子〉の狭間にある病
医学の使命 p89 //患者が真の幸福感を味わうことができるようにするかが今日の医師の使命である。//
がん、細胞と個体の悩ましき相克
がんとは〈遺伝子病〉である
「原がん遺伝子」と「がん抑制遺伝子」
織り込まれた発がんのリスク
がんの治療薬はどこまで進んだか
がん免疫療法の展開
生きることの業
心の理解への長い道
心は脳の働き
脳損傷が教えてくれること
脳の活動原理 p108 //脳活動として従来の生命科学の基礎原理を超えるものは、まだ発見されていない。//
脳の情報処理
回路と機能の関係
心の理解へ向けて何を問うのか
生命科学の未来
p115
人類に課せられた二つの巨大な疑問
①宇宙の根源──物質の起源、宇宙の果て
② //われわれ自身が何者であるのか//……//生命とはどのようにして成り立っているのか//
「生」を知ることは社会に多大な影響を与える
地球規模の問題解決へ
生物としての人類の未来 p121 //種としての人間も滅びる日がやがて来ることを覚悟しなければならない。//
第2部 生命科学と物理学の対話
対話者 本庶佑×米沢富美子(よねざわ・ふみこ 理論物理学者)
p127
〔米沢〕//ダーウィンは、突然変異と生存競争と適者生存という単純な3ステップによって、偶然に起こる突然変異から必然的に適者生存が生じるプロセスを考えたわけですけれども、//……//進化は何万年、何十万年、時として何千万年、何億年までかかっています。そこで起こってきたいろいろなことは、実はすべて必然だ、というのが物理屋の見方なのです。//
p133
〔米沢〕//複雑系とか、自己組織化とか、いろいろな試みの言葉がたくさん飛び交っていますけれども、//
p133
〔本庶〕//先生〔米沢〕は、階層性と自己組織性があって、あるところで創発が生じるというのが基本的な考え方だといわれたと思います。//
p136
〔本庶〕//〔これが生き物ですよの試み→〕方向として大きくは二つあって、一つは生命体自身を必要最小限の要素にもっていくもの。//……//〔もう一つは、〕情報要素からある生命現象が演繹できないかという試みです。//
p137
〔米沢〕//パラメータを増やせばある程度は近づけるけれども、増やせばすむというものではないんです。//……p138//パラメータがいろいろあるとき、全体の状態を3つにわけて考えることができます。一つは非常に静まった状態//……//〔二つめは〕しょっちゅう動いているという状況//……//〔三つめ〕「カオスの縁(ふち)」//
p138
〔米沢〕//そこで、パラメータを増やせばよいかというと、パラメータが百万倍になったからといって、予測できないものはやはり予測できないと……。//
〔本庶〕//そうですか。すると先生のいわれる「予測不可能」という概念は、「降参した」という意味ではないですね。//
〔米沢〕//降参したという意味ではないです。//
〔本庶〕//それは必然として予測不可能だと。//
〔米沢〕//そうです。そうです。//
p140
〔米沢〕//いつ死ぬかなんてわかったら、生きていられない(笑)。//
p140
〔本庶〕//予測不可能というのは、私なりの理解としては、ある階層を超えた大きな階層へいくと、それなりの理解のできる塊になる。そういうことなんでしょうか。//
〔米沢〕//そう思ってよいと思います。//
p141
〔本庶〕//そうすると、生命現象でいえば、パラメータがたくさんあるけれども等価ではないんですよね。//
〔米沢〕//そうなんですね。//
〔本庶〕//そのなかで取捨選択をしていって、全体像を構築できる情報は何であるのか、それをどうすれば選べるか。それが、重要な要素になるんですね。//
p142
〔本庶〕//還元論的なやり方で切り刻んでいったために、情報があふれているわけです。だからといって、「生きているとは何か」がどういえるかというと、手も足も出ないといっていいような状況です。//
p143
〔米沢〕//細分化したからこそ非常に進んだ。いわば細分化は進歩の代償として生じています。//……//進めば進むほど情報が増えて細分化していくという今の状態は、一つの過渡期なのだしょう。//
※保育も、そう! //再構成して全体像を捉えようというとき//p142〔本庶〕
p146
〔米沢〕//ニュートンのときは万有引力定数が入った。量子力学ではプランク定数が入った。それから相対論だったら光速が式のなかに入った。そういうふうに新しいパラメータが入るわけです。//
p147
〔米沢〕//宇宙も実は有限なのです。無限には広がっていない。そして、その有限さは、たとえば130数億光年という形であって、「じゃあ、端っこはどうなってるんだ?」というと、端っこはないのです。ちょうど、三次元空間のなかでは、二次元の地球表面はどこまでいっても端っこはないのと同じです。赤道だって端っこはない。だけど有限であるわけです。//……//それと同じように、四次元空間のなかでの三次元表面が宇宙になっている。だからグルッと回ってこられて有限なのです。//
※三次元”表面”とは?
2025.12.29記す

