真に、自分で考えることを促してくれる本──高校生ら青年期に薦めたい
「考える」ことの鉾先(ほこさき/テーマ)を、心や意識そして「考えるということ」としたとき、哲学ではなく、心理学でもなく、”解を、脳に、” そのしくみやはたらきとして明らかにしようとすると、たちどころにむずかしくなってしまう。〈宇宙のはじまり〉の理解もむずかしいが、ビッグバンやブラックホールを耳にしたことがあるように、課題への向き合い方は安定的に支持を得ている。しかし、心や意識のしくみとなると、科学界の最難問として未解決のままだ。が、解くカギは出始めている。
わたしが気に入っているのは、胎児時代、脳発生のときから、心や意識のしくみは仕込まれているらしいということだ。即ち、物理的化学的生理的に、心や意識は発生していると考えられている。
このスタートラインに立てるよう、次の本を紹介したい。
(1-1)ラマチャンドラン『脳のなかの幽霊』
(1-2) 〃 『脳のなかの幽霊、ふたたび』
ラマチャンドランはインド出身の神経科学者。奇妙な臨床例を多く集めている。脳に障碍を負った患者の苦悩を著者(医師)が受けとめる。わたしたちの”日常”ではなく、有り得ないとも思える症例を受けとめることで、心や意識について深く考えることができる。
(2)リチャード・ドーキンス『神のいない世界の歩き方』
『利己的な遺伝子』の著者として有名。イギリスの生物学者。
p318
//神さまが私たちをつくった可能性より、私たちが神さまをつくった可能性のほうがはるかに高かったの。//
ダーウィンの進化論を味方にして、神の存在を正面から否定している。「心と意識」については、理解がむずかしいというよりも、神と結びつけてしまうことが困難のもとであると言い切る。「心と意識」と「神」──この結びつけ方が、脳を理解する最大の障碍になっていることを巧妙に解き明かしている。本のサブタイトルは──「科学的思考」入門。
「体験」解明に、きら星!
毛内拡『脳を司る「脳」』講談社ブルーバックス 2020年
p212
//脳の細胞数を数えるのは非常に大変な作業ですが、現在わかっている数値では、脳全体では、ヒトではニューロンとグリア細胞の総数は大体同じであるという説が支持されています。つまり、脳を構成する細胞群の半分はグリア細胞なのです。//
フロイド・E・ブルーム他『新 脳の探検 上』講談社ブルーバックス 2004年
p113
//ニューロン間にある空間は、グリアとよばれる特殊化された支持細胞で埋められています。グリアの数はニューロンの5倍から10倍もあるといわれます。研究者たちの大変な努力にもかかわらず、大部分のグリアの機能はわかっていません。//
ニューロンに対して、グリア(グリア細胞)は初耳かもしれない。その数も、文献によって大きな差があり、研究が進まないあるいは困難さをうかがわせている。
毛内拡『面白くて眠れなくなる脳科学』PHP研究所 2022年
p153
//グリア細胞の中でも何度か登場したアストロサイトは、マウスの脳では、規則正しく配置され、それぞれ自分の守備範囲を持って存在しており、突起同士が重なり合わないことなどが報告されています。
一方、このアストロサイトが興味深いのは、進化的な側面があります。//
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先日、2025年10月16日、理化学研究所のプレスリリースに驚いた。主役は「アストロサイト」。
「体験」とは何かを考えるに、《「体験」を3つで考える》とわたしはしている。
その体験の2つめ──「繰り返す体験」を演出しているのがアストロサイトということだ!(と思う)
体験の1つめ〈感動する体験〉は、ヴィゴツキーの学習理論「発達の最近接領域」を根拠としてきた。アストロサイトの作用=記憶第一段階は、「発達の最近接領域」と同じ意味をなしているのかもしれない。(将来、ノーベル賞候補になるのでは!と、わたしは凄い期待をもった)
野外活動でフィールドを選択するとき、新しい場所も気になるが、幼児の場合、同じ場所を続けて繰り返すことのほうが主体が発揮されると、子どもの行動から気づいていた。絵本をパパとママ、違う人に読んでもらうなど、繰り返すことの意味合いはいくらでもありそう。
2025.11.1記す
