||||| tide pool 潮だまり |||

Home


写真の撮影地:兵庫県芦屋市
(参考)いのちが生まれた海、潮だまり

フリーテーマ・コラム tide pool 潮だまり

||| 前> this page |||||||| 記事一覧 |||
紙版 pdf 1 : 2022.11~2023.4
紙版 pdf 2 : 2023.4~ 続刊

「生得的」取扱説明書

 あなたの「うまれつき」やわたしの「うまれつき」をいうのではない。あなたやわたしの「うまれつき」は褒めそやしたり慰めにつかったりする。ここでいう「生得的」つまり「うまれつき」はヒトであればおよそ皆に共通することである。ヒトは日本人に限らない。地球上の人類に共通することである。
 その一つに褐色脂肪細胞組織がある。肥満やダイエットで話題になる体脂肪(脂肪組織)には2種類あって褐色脂肪細胞組織と白色──だ。このうち肥満とかかわりがあるのは”白色”で”褐色”ではない。”褐色”は脂肪を燃焼させて体温調節の役割がある。新生児やあかちゃんには褐色が多く、成長するに減少する。生存のために生得的に”褐色”が機能している。ハダカで生存できるようになって生まれた。
 その一つに「かわいい」がある。かわいいと思わせることで親に保護され養育される。動物生態学者コンラート・ローレンツが「かわいい」を「ベビーシュマ」と名づけた。ベビーシュマはヒトだけでなく、ライオンの子どもも野鳥のヒナもかわいい。
 その一つに「抱きつく」がある。ニホンザルの母にしがみついている子ザルを見たことがあるだろう。あかちゃんのてのひらに指をおくと握ってくれる。生得的というのは、身を守る知恵が生まれる前から身についているということだ。

 宇沢弘文『社会的共通資本』(岩波新書 2000年)p125//教育とは、一人一人の子どもがもっている多様な先天的、後天的資質をできるだけ生かし、その能力をできるだけ伸ばし、発展させ、実り多い、幸福な人生をおくることができる一人の人間として成長することをたすけるものである。//
 宇沢はインネイトという聞き慣れない言葉をつかって論を立てている。//innateという言葉は、生得的、あるいは先天的、本有的などと訳されているが、ここでは、そのままインネイトとして使う//同p127とし、//言葉を理解し、数学の考え方を理解する能力を生まれながらもっている。このような能力、理解力を生まれながら、インネイトなかたちでもっているわけである。//同p127
 言語についてはノーム・チョムスキーの指摘で承知していたが、//数、空間、時間にかんしてもっている生得的な、インネイトな知識、能力//同p128に驚いた。では、なぜ数学に苦手が生じるのだろう。

 生得的な能力、資質、機能は多くある。五感は生得的であるとわたしは説明している。教育に携わる人は職務として学んでほしい。職務ではない”子育て”においては、子どもと向き合うことで失敗を含め学びながら身につければよい。子どもを育てる社会的環境(条件)は子どもの生得的営みに恭順であってほしい。それをわかりやすくいうと、安心して十分に遊べる環境が優先されなければならないということだ。

2024.4.15記す

© 2024 ||||| YAMADA,Toshiyuki |||, All rights reserved.