||||| 昔話の残酷を嫌う傾向は……1980年代に |||

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──小澤俊夫 2009年『こんにちは、昔話です』p158より

昔話の残酷を嫌う傾向は日本経済の高度成長と比例している

 わたしは1952年から昔話の研究に入ったのですが、そのころは昔話は残酷だという意見はまったくありませんでした。そういう意見が耳に入るようになったのは、1980年あたりからです。今から考えると、それはちょうど、日本がいわゆるバブル経済の波に乗り始めたころだったのです。
 日本人の生活は戦後の経済の高度成長によって、飛躍的にきれいになり、清潔になり、便利になりました。家庭のトイレットが従来の汲み取り式落とし便所から水洗便所に取り替えられていきました。畑の肥料が堆肥から化学肥料に切り替えられました。生活がきれいになり、清潔になるのと比例して、昔話のなかのいわゆる残酷な出来事が気になりだしたのだと、わたしは思います。それが、1980年代のバブル期になると、世間一般に、「昔話は残酷だ」という風潮となって広がったのです。

2019.8.25引用して記す

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