||||| R.スペリー『融合する心と脳』読書メモ |||

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ロジャー・スペリー『融合する心と脳』
+ 副題:科学と価値観の優先順位
+ 須田勇・足立千鶴子/訳
+ 誠信書店 1985年
+ 原書:1982年

pⅰ
//大脳両半球を離断したときの影響に関する私見
ノーベル賞受賞講演 1981年12月8日//
pⅴ
//喋る左半球は答えたことがらを認識していないか、まったく気がついていないということが分りましたので、答えることができたのは、その源が右半球にあるとされたのです。いずれの分離半球も、その相手半球の認知した事態をまるで意識していないかのように振舞いました。//……//言い方をかえると、それぞれ半分ずつの脳は、それ自身の私的な知覚、学習、記憶経験を伴った、主として別個の自分の認知領域をもっていて、すべて他側半球の対応する出来事については、見たところ無頓着なように思われました。//
pⅵ
//しかし、あるばあいには、半通俗的な拡大解釈や思いつきだけの波に乗った「左の脳」対「右の脳」の働きに関する結論には、警告をしておく必要があります。認知様式における左右の二文法は、ともすれば暴走しやすい考え方だからです。心の制御における質的なかたよりは、左右差と同様に、上下、前後、あるいは種々のほかの組織化上の変動が含まれているに違いありません。さらに、正常状態では二つの半球の、一方が怠けているのに他方が回転しているというのではなく、一つの単位としてしっかり一緒に働いていると思われます。すべてこれらの問題には、まだ解決しなければならないことがたくさん残っています。//
p91
//二つの半球は常態では統合単位として、一緒に働いていると考えなければならない。//

p16
//人がこの世の中で何をするかは、およそすべてが主観的な価値と信念によって決定されるもので、それによって人は生き、動かされ、導かれるものである。//
p111
//脳が働いているときに脳に入ってくる現実はつねに価値と作用しあい、価値を形成してゆく。//

p81 全文引用
//マックス・デルブリュック 1980
工学と科学 インタビュー//
//誰でも価値観の真の由来について詳しく知りたいと思うものである。あなたでも、本当の価値はどこから来たのか、一体価値観というのはどうあるべきなのかを問いただしてみたいであろう。しかも、たとえ価値観とはかくあるべきものだとの答えが返ってきたとしても、それを自分の価値観とすることが実際できるものであろうか。これらは科学上の疑問ではなく、その答えによって、他のなにものにもまして今後の歴史の歩みが決定されるような疑問である。歴史がこれからどのような道を歩むかは、科学の今後の発見によって決定されるのではなく、価値観に関するこういう疑問によって決められるものだと私は考える。//

p97
//科学は事実を扱うもので価値を扱うものではなく、その当然の結果として価値判断は科学の領域外にある、という古くから言いならされてきた言葉に反映されている。//


p56
//その人は医療上の治療の目的で大脳半球間を同じように手術によって切り離されているが、情動や感情にあずかる下位脳間の左右連合は元のまま無傷で残っている。こういう人の右側の心での認知、知覚、記憶などのような体験は、左側の心の対応する体験とはまったく接触がないのであるが、各切半脳は他側の情動体験は共有しているものと思われる。例えば、一連の普通の幾何学模様を刺激として投映しているなかに、右半球にだけ、予想外のヌード写真を挿入してみると、視覚を介する情動が誘発されて、対側の脳(すなわち、直接には興奮していない方)を介しての言語による応答から判断すると、この第二の脳に見えているものに関係なく、すっかり当惑していることが極めてはっきり分る。しかしこの第二の脳はなぜそのような感情が起こるかは考えても分らず、その原因を述べることはできないのである。//

p62
//意識に対して我々の提案したモデルは、超感覚的知覚や死後の知覚を借りてきて、人の希望を支えるようなことはしない。同様に、出生前の胎児の知覚は恐らく無視してよいであろう。脳の仕組みが意識性を必要とするのは、胎生後期およびそれに続く出生後の発達で、機能的な成熟を達成しはじめてからである。//

p63
//心は、幼児のときに愛と憎しみ、恐れと怒りのような二、三の要素的反応から出発して、引き続きおこる条件反射連合の連鎖から、生涯にわたって徐々に発達すると考えられた。行動パターンが遺伝的に継承されるという考え全体は、無理矢理放棄を迫られるようになった。「本能」という用語は専門家のあいだでは不評になり、その排斥と意識の排斥の白熱状態はほぼ匹敵した。//
p65
//この問題にかかわりを持つ科学的研究の専門の領域内では、今日なお、遺伝の方向づけの意見の振り子はゆれ続けている。//

p82
//私が最初にこの領域の仕事をてがけた頃を振り返ると、神経科学では、脳の機能はほとんど無限の可塑性があるという考え方が完全に受け入れられていた。//

p87
//前述の9つの遺伝因子型の組み合わせがあるということは、左右脳の心的因子の釣り合いと負荷に違いがあることを表わすもので、そのこと自体のなかに人間の知能構造に個性の生得性のスペクトルを持っているということになる。左利きの心的構成は、IQや他の検査プロフィールによると、右利きとは統計的に異なる一群であることが示されている。同様に、男性と女性との違いが現われる。また母胎内で男性化した、あるいは一個のX染色体を欠いた女性と、正常の女性との違いも現われる。//

p99
//この時代に広くはびこっている社会的神経症は、価値の喪失、無関心、無気力、目的や存在の意義の喪失などが増大してゆくことであるといわれている。//

p124
//「…に他ならない」という意味での還元主義をきっぱり放棄してきた。//
p57
//古くからある「……にほかならない」というやり方が誤っていたことになるのである。つまりこの場合についていえば、心は脳の働きにほかならないとしてしまったり、患者は神経インパルスの流れにほかならないと還元するやり方である。//

p157
//私はそれを「心を物質の上位に置き直すこと」、また「観念や理想を、物理的化学的相互作用や、神経インパルスの往来や、DNAの上位に描くという図式」として特徴づけた。それが脳のモデルで、そのなかに、5億年〔※〕以上もかけて進化が成し遂げた極致である。//
※5億年……生命の起源をさすと思われる。

2025.10.25記す

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