── 以下、「まえがき」(編者 田中和雄による)を、全文を掲載します。
子どもたち、詩を読みなさい。
とびきり上等のいい詩を読みなさい。
いい詩というのは、
詩人が自分の思いをどこまでも深く掘りさげて普遍(ほんとうのこと)にまで届いた詩のことです。
詩人の仕事は、生きる歓びをうたうことです。
いい詩はみな、生きる歓びにあふれています。
いい詩を読むと、ふむふむそうか、となにかがわかります。
やさしい気持ちになります。
疑問に思っていたことがぱっと解けることもあります。
自分の存在に疑問をもったら
「くまさん」や「ぼくがここに」を読みなさい。
友だちとの関係に悩む人は 「聴く力」を読むといい。
恋しい人ができたら「鳩」を。
この人と一緒に生きていこうと決心したら
「祝婚歌」を読んで、
男と女が一つ尾根の下に暮らすときの礼儀を考えなさい。
自分はどう生きたらよいかわからなくなったら、
「雨ニモマケズ」や「表札」「わたしを束ねないで」を読みなさい。
考えることをサボってすれっからしになったと気づいたら
「奴隷根性の唄」「自分の感受性くらい」を読んで、
自分の頭をガーンと殴りつけてやりましょう。
生まれてから死ぬまでの一生の間、
自分はなぜ生まれてきたのか、
何の用事でこの地球上にいるのか、
ほんとうの生き方というものがあるのか──悩みはつきません。
その折り折りにこの詩集は役に立ちます。
気に入った詩にであったらなんども読み返し、時には声にだして読んでごらんなさい。
読み返すたびに、階段をおりてゆくように、真実の底にたどりつくでしょう。
生きていてよかった、と思う時が、かならず、きます。
この詩集を、ほんとうの子どもたちと、子どもの心を持った大人たちに捧げます。
このページの作者(山田利行)から一言
私は「ほんとうの」という形容詞=飾り言葉には注意が必要と考えています。上記「まえがき」には、3箇所に見られます。「 普遍(ほんとうのこと) 」とあるように、「ほんとう=普通」と等号で結ばれてつかいたいというのが私の考えです。ですから、以降、「ほんとうの」とある箇所は「普通の」と読み換えて欲しい。この「まえがき」ではありませんが、「ほんとうの」と飾り言葉があるときは、文意(脈絡)を疑ったほうがよい。ほかに言い換えるあるいは説明する言葉が見つからなかったとき、ごまかしで「ほんとうの」とつかわれやすい。安易に結論に結びつけたくなり、脈絡の飛躍しているケースが多い。「真実の底」という表現もどんな底か考えたくなりますね。そんなことを思考しながら、それぞれの詩について、あなたの想いをしっかり込めて読みましょう。
ハガキサイズのA5判。つまり、ポケット版。厚さ1cm少々に 33編の詩。厚手の表紙をまとった堅牢本。「まえがき」で「子どもたち、詩を読みなさい。とびきり上等のいい詩を読みなさい」と、呼びかけている。その言葉に かなった詩集です。
田中和雄(編)1998年発行、続編あり ※以下、収録作品
- 会田綱雄
- 伝説
- 井上ひさし
- なのだソング
- 石垣りん
- 表札
- 茨木のり子
- 聴く力
- 汲む
- 自分の感受性くらい
- 大岡信
- 虫の夢
- 長田弘
- 言葉のダシのとりかた
- 世界は一冊の本
- 金子光晴
- 奴隷根性の唄
- 河井酔茗
- ゆずりは
- 川崎洋
- なぜ
- 岸田衿子
- 南の絵本
- 工藤直子
- あいたくて
- 草野心平
- 秋の夜の会話
- 栗原貞子
- 生ましめんかな
- 阪田寛夫
- 練習問題
- 新川和江
- わたしを束ねないで
- 高橋睦郎
- 鳩
- 高村光太郎
- ぼろぼろな駝鳥
- 谷川俊太郎
- 死んだ男の残したものは
- 辻征夫
- 学校
- 濱口國雄
- 便所掃除
- まど・みちお
- くまさん
- さくらのはなびら
- ぼくが ここに
- 真壁仁
- 峠
- 宮沢賢治
- 雨ニモマケズ
- 三木卓
- 系図
- 山之口獏
- 求婚の広告
- 与謝野晶子
- 君死にたもうことなかれ
- 吉野弘
- 祝婚歌
- I was born
2019.1.23記す