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 もう20年も前に書いた文章ですが、今読み直してみると、手前味噌ながら伝えようとしていたことは古くなっていないことに気づかされます。古くなってしまった内容については、加筆すればよいと思いました。「2000年問題=Y2K」辺りは恥ずかしい思いを感じたりしますが、通過点の記録になります。

2019.2.7構成

  • 原文は縦書き。
  • 横書きにするために、漢数字を一部 算用数字に書き直すなど、修正しています。

連載期間:1999年1月15日号~2000年4月21日号

  • 本探し 2000年4月21日号(この号にて連載最終)
    人は何を期待して本を読むか
  • 整理 2000年3月24日号
    本の整理は「絶望的」なのか はたまたいくらでも捨てられるか
  • お茶 2000年2月18日号
    日常生活に欠かせぬ「お茶」の秘密 「栄光の商品」は世界史も動かした
  • 睡眠 2000年1月28日号
    睡眠の役割は脳を休め、育てること 眠れぬ夜、眠りの常識を考えてみる
  • たばこ 1999年12月24日号
    十代がたばこ会社のターゲットだった たばこの「事実」や「現実」を直視
  • 2000年 1999年11月19日号
    「Y2K」の警鐘はオカルトに非ず 公的機関の「情報公開」不備にも論及
  • パソコン 1999年10月29日号
    電子メールは思いのほか簡単 インターネット接続はもっと簡単
  • 1999年10月1日号
    生きとし生けるものたちの 物語が濃密に詰まった海辺 海は壮大なドラマの場
  • 医学 1999年8月20・27日合併号
    健康や病気に関する情報は百家争鳴
  • 1999年7月16日号
    いまの地図には 信号もコンビニもある 迷って困った揚げ句に地図を開いてもダメ
  • 季節 1999年6月18日号
    「雨水利用」「雨暦」・・・ 雨のことなら何でもわかる
  • 辞書 1999年5月21日号
    項目数対決…小さな辞書の組み合わせ
  • Q&A 1999年4月23日号(自然観察の本)
  • Q&A 1999年3月12日号(国語辞典の使い方)
  • Q&A 1999年2月12日号(子どもに贈る本)
  • Q&A 1999年1月15日号(ゴーギャンのノアノア)

2000年4月21日号

本探し 人は何を期待して本を読むか

 立体絵本の作り方の本があるかどうか、探してほしいのですが……。日本の、あるいは近畿の桜の名樹を紹介した本はありませんか。毎日、ヒントブックスにはこんな相談が寄せられる。

 自身で本を探す方法は? 書店の棚をくまなく探し、見つからなければ他の書店へ。休みには図書館へ。そんな人が大多数だろう。書店や図書館に恵まれない人たちはどうすればいいのだろう。本を必要とする目的を伝え、自身が必要とする本や資料の入手について相談する方法がないものか?

 少ししか買わないけれど馴染みの本屋があればいいと思う。そんな期待に応えてヒントブックス(無店舗・会員制・電話078-922-1188)は1984年に創業、今年で17年目になる。

 無店舗だから在庫なし。必要な本はすべて取り寄せ。品切れにさえなっていなければ過去の良書・適書も守備範囲。こんな機能の無店舗書店と”普通の書店”と図書館を使いこなせば、本探しは快適になると思うのだが……。インターネット書店は便利だが”無人クン”が大半。ヒントブックスは”無店舗”ながら”有人クン”でもある。

 ヒントブックスはベストセラーと無縁だ。注文はそのつど取り寄せだから待たせてしまう。それでも、新聞やテレビで話題になったり広告がうたれると、注文が入る。出版社に発注するもののなかなか入らない。「まだですか?」と注文主から督促される。大きな書店にはうずたかく積まれていて悔しい思いだ。その書店の平台には、ベストセラーものがあるわあるわ。本を探す生業が悠長に思え、話題になっている本を読んでみたくなる。つまり衝動買い。本に誘惑された気分。マインドコントロールされたのだろうか?

 新刊コーナーにあった『教祖逮捕 「カルト」は人を救うか』(米本和広著、宝島社・1500円)を手にして開いてみると、目次に「作られた言説 マインドコントロール論」とある。「マインドコントロール」は万能的に使われやすく陳腐化しやすいので心理学用語としては不適切という主張だ。早速「カルト」で本探し。『カルトか宗教か』(竹下節子著、文春新書・660円)では「最初は誘惑されるが、結局は自分の意思でカルトを選択するのだ。カルトが人を無理やり回心させるわけでない」とあった。

 カルトと本探し、一見関係ないようだが、人は本に何を期待して読んでいるのだろうか?

2000年3月24日号

整理  本の整理は「絶望的」なのか はたまたいくらでも捨てられるか

 本や書類を抜き出して使ったあとは元の位置に戻さず、同じ棚の左端にしまう。本や書類は少しずつ右に寄せられ、右端にある本や書類は長い間使われていないことになる。よく使うものはいつも左端にある(人によっては左右反対になることもあるだろう)。個人の本や書類はこの整理法が便利で、30年近い前から私は実践していた。「超整理法」の主唱者・野口悠紀雄さんによると、私は「隠れ超整理派」になるそうだ。

 野口さんの『「超」整理法』(中公新書・699円)は、情報管理の「科学の確立を目指している」ということだが、私の場合は超整理法の禁じ手「分類」も多用していたので、整理「法」に非ず「術」ということになるらしい。

 ところで、超整理法では「情報」を規格サイズ「角2」の封筒に入れて整理するのだが、封筒に入らない「本」はどのようにして整理されるのだろうか。封筒に入れられてしまうこともあるが、本書を読み進むうちに「このようなわけで、本と写真の整理は、ほぼ絶望的である」のくだりに出会ってしまった。なぜなら、本は「捨てられない」からとある。

 『「超」整理法3』(中公新書・660円)は丸々一冊、「情報を捨てる」ための特集だ。捨てられない原因を分析し、捨てる「法」を説く。「術」で通してきた私だが、「法」の一説「保存ごみ」の命名は当世風で妙に納得がいった。しかし、ここでも「本は捨てられない」とある。「センチメンタル・バリア」が邪魔するとある。野口さんは命名名人だ。

 ところが、のっけから「雑誌は破りながら読む」の見出しで始まる本がある。『新・本とつきあう法』(中公新書・660円)、津野海太郎さんの本だ。「破るにもそれなりの順序がある」とあり、広告のページや「読んでもよく理解できないにちがいない」ページが破られる。

 本も破られてしまう。雑誌の場合、破ったページは捨てられてしまうが、本の場合は、もとの本に戻されるそうな。だから、水ぶくれみたいになってしまう。やはりここでも捨てられないのかと思うと、違った。

 20代の終わり頃、津野さんは4000冊の蔵書のうち数十冊を残して古本屋に売り払った。「本をためることへの執着心がしだいに薄れ」、たまれば売り払う。「自分の部屋は本の収蔵庫ではなく通過地点」と思い「いつまでもとっておく本はむしろ例外なのだ」。私も、本をいくらでも捨てる。

2000年2月18日号

お茶  日常生活に欠かせぬ「お茶」の秘密 「栄光の商品」は世界史も動かした

 「あなた、お茶になさいます?」「お茶」は「お風呂」とも「お食事」とも言い換え可能だが、この不景気では御方様もさぞ不機嫌。「お茶」ぐらい自分でいれられるようにしていないと、この先、寝たきりになるや、尻をひねられるかも。煎茶・番茶・ほうじ茶の区別が分からないって? 『日本茶・紅茶・中国茶 おいしいお茶のカタログ』(南廣子監修・新星出版社・1500円)は、オールカラーでお茶の知識がぎっしり。お茶の歴史に始まって、いれ方・買い方、お茶請けまで解説されている。これで”お茶入門”はOKだ!

 次に、お茶のプロたちの弁を聞いてみよう。『世界のお茶、ふだんのお茶』(ティータイム・ブックス編集部編、晶文社・1900円)では、紅茶・ハーブティー・中国茶・韓国茶、そして日本茶のエキスパートがお茶の楽しみを語っている。東京・吉祥寺の紅茶専門店「ティークリッパー」を営む佐藤忠臣さんが専門店の秘技を伝授。ハーブティーを飲むということは、「草花を通して太陽のエネルギーをからだのなかに取り込む」ことだそうな。ドイツ人薬剤師のこのアドバイスを、ドイツ在住の森恵さんが伝えている、というふうに。

 ところで、イギリス人がお茶に初めて出会ったのは17世紀末。そのお茶とは紅茶ではなく緑茶だった。緑茶はやがて紅茶に取って代わられるが、緑茶であっても、イギリス人は砂糖とミルクを入れて飲んだという。『茶の世界史』(角山栄著、中公新書・700円)によると、「茶にミルクを入れて飲む方法は、すでに蒙古あたりではふつうの飲み方」だったが、「茶に砂糖を入れる飲み方は、イギリス独特の飲み方」であった。そういえば、かき氷に宇治金時のミルクかけって、あるよね。日本人もこんな甘いの、食べるんだ。でも、お茶にはどうも……。

 紅茶の消費増大とともに砂糖の消費も同じく急激な増加を示す。イギリス人は奴隷貿易によって砂糖を得た。「その栄光の商品は虐げられた奴隷の血と涙が結晶したものであったことは忘れられるべきではない」と迫られては、スティックの中身、さてどうしたものか?

 インド茶誕生以前、イギリスは中国から紅茶を輸入していた。その引き換えに売り渡したのがアヘン。中国政府がその取り締まりを強化したことからアヘン戦争が勃発。奴隷貿易はやがて原綿をイギリスに供給。イギリス綿製品はインド綿業を滅ぼした。お茶は、世界の歴史を動かした。

2000年1月28日号

睡眠  睡眠の役割は脳を休め、育てること 眠れぬ夜、眠りの常識を考えてみる

 休日の朝は温かい寝床にいつまでも入っていたいと思う。そして、目覚まし時計をオフにして寝不足解消を試みる。ラッキーなことにそれは可能らしい。睡眠研究で知られる井上昌次郎さんは、『子どもの睡眠 早寝早起きホントに必要?』(草土文化・1400円)で、「ホメオスタシス性」という睡眠調節が働き、不足した睡眠の量に合わせて「深い眠り」が現れるというのだ。

 子どもの昼寝で悩む親、昼下がり職場の居眠りで困っている人も、この本を開いてみるといい。子どもの(特に脳の)成長には眠りが欠かせないし、昼に眠くなるのは生体の自然なリズムだと知るだろう。睡眠は、見た目には横たえた人間の寝相を思い浮かべるが、それは睡眠現象の一つにすぎず、睡眠本来の役割は脳を休め、脳を育てることにある。「子どもの睡眠」を知ることは、睡眠の本質を理解するのに役立ちそうだ。

 脳波の発見は1929年。そして53年、レム睡眠が発見されて睡眠研究は急速に進んだ。それでも、研究分野としては若く未解明も多く、諸説もまた多い。『睡眠の正常と異常』(大熊輝雄ほか編、日本評論社・1200円)はそうした睡眠研究の最前線をコンパクトに伝えている。やや専門的・初学者向きだが、睡眠障害に悩む人や確かな理解を求めたい人には参考になるだろう。

 眠らなくてよければもっと仕事ができるのに……。カナダの心理学者スタンレー・コレン著『睡眠不足は危険がいっぱい』(文藝春秋・1942円)は、そうした期待を裏切るだけでなく、「九時間から十時間というのが、睡眠には適当な時間」と結論づけている。朝6時に起きようと思えば夜9時に寝ても睡眠時間はやっと9時間だ。「こんなの、できないよ」と思う。したがって、先進国では成人のほとんどは寝不足ということになる。寝不足は、脳の生理を乱し判断を誤らせ、人命を危機にさらす。

 睡眠のしくみから解きほぐし、育児で疲れた両親が眠れるようにアドバイスまで用意されている。エピソードが豊富で読みやすく、これ一冊で睡眠のすべてが”わかる”。ナポレオンがほんとうに4時間しか眠らなかったのかも”わかる”。

 ところで、睡眠には男女差や年齢差があり、住環境や交代勤務など働く条件の違いからも「眠り方」は人さまざま。眠っている間に嫌なことを忘れさせ、考えを整理し、アイデアをもたらしてくれるかもしれない。脳科学はそこまで究めている。

1999年12月24日号

たばこ 十代がたばこ会社のターゲットだった たばこの「事実」や「現実」を直視

 寒くなると部屋を閉め切ることが多くなる。そこで気になるのが隣の煙。「ねえ、たばこ、ここで吸わないで」とは、なかなか言いにくい。

 さて、たばこの害は「気になる」程度だろうか? 『吸う人と吸わない人の「たばこ病」』(実践社・1000円)で医師の加濃正人さんは、「一本でも吸いすぎ」と指摘している。漫談家のコロムビア・ライトさんは一日120本吸うほどのヘビースモーカーだったが、喉頭がんで声帯を失った。声帯がないということは、「しゃべれない。においがわからない。口笛が吹けない、うがいができない、つばが吐けない、歌も歌えない」と本書で語る。だが、ライトさんは努力して食道発声をマスター。「禁煙すれば喉頭ガンになりません!」と、禁煙キャンペーンを続けている。

 たばこの害を一目瞭然に見るには『たばこは全身病』(少年写真新聞社・2000円)がいい。カラー写真で、真っ黒になった肺、がんに侵された臓器をずばり見せつけられる。これが「たばこの事実」だ、と。

 ニューヨーク・タイムズの記者フィリップ・J・ヒルツは、たばこ業界の極秘文書を内部告発者から入手した。同記者による『タバコ・ウォーズ』(早川書房・2800円)で、アメリカのたばこ会社による戦略は白日の下にさらされた。本書のハイライトは、十代の少年少女をいかにして次世代の喫煙者に育てるかのくだりである。周到な調査、巧妙な勧誘がなされる。吸い始めた銘柄を忠実に吸い続け、「糊のようにくっついてくる」十代の喫煙者こそがたばこ会社のターゲットだった。

 アメリカのたばこ会社はたばこの害を認めざるを得なくなり、形勢は、がぜん不利になった。昨年11月、たばこ会社四社が、46の州政府に総額2060億ドル(約24兆円=当時)を支払う和解が成立した。

 わが日本でも動きは急だ。昨年5月、東京地裁に初の「たばこ病損害賠償請求」が提訴された。弁護団長・伊佐山芳郎さんは『現代たばこ戦争』(岩波新書・660円)で、WHO(世界保健機関)の取り組みや世界の潮流を伝えている。たばこの宣伝に協力する日本の俳優たちへ、著者は渾身の力で呼びかける。「喫煙の害が、将来子どもたちの健康や生命にかかわることを考えるとき、その責任は重大なはずだ」と。

 もう、たばこはやめよう。そう決意したら、『明日からタバコがやめられる』 (法研・1500円)をお薦めしたい。

1999年11月19日号

2000年 「Y2K」の警鐘はオカルトに非ず 公的機関の「情報公開」不備にも論及

 「コンピュータ西暦2000年問題」は、いよいよ来月末に迫ってしまった。この西暦2000年問題は「Y2K」(ワイツーケー)と略されるが、『「Y2K」最新最終事情』(三五館・1400円)は、もたらされるかもしれない最悪のシナリオを克明に描き出し、警鐘を鳴らしている。コンピュータにはさわらず近寄らず、したがってわれ関せずとしている人たちも多いだろうが、日本列島大停電、アラブの石油産出不能といった未曾有の大混乱を予測して否定しきれない恐ろしい問題なのだ。

 その最たる課題は埋め込みチップにある。埋め込みチップとは、言葉通りに機械の中に埋め込まれて外に姿を現さないチップ(=コンピュータ)である。デジタル時計が正確に日付を刻むのは、チップが埋め込まれているからだ。某電力会社では日付を使用した制御をしていないから支障無いと発表しているそうだが、「日付機能をもつチップ」が混入し、その日付機能を使わずに施工されていることも想定され、2000年に入ったとき、その日付機能が異常発生の引き金になる可能性もあると、同書は指摘している。

 石油産出が不能になるシナリオは少々複雑だ。サウジアラビアが建国された1930年代初期、首都リヤドの人口は8千人程度だったが、現在は170万人。これを可能にしたのは、海水淡水化プラントであるが、このプラントにも埋め込みチップが使われているという。万一このプラントが機能停止したならば、人々は脱出するほかない。石油産出プラントでも機能停止は予測される。

 ここにあげた警鐘はオカルトの類に属さない。科学と技術の論理で推測されたものである。埋め込まれたチップは天文学的数値であるから、残された時間とあわせて考えれば完全な検証は不可能とされている。最悪の事態を招かないことをひたすら願いたいが、同書でさらに問題としているのは、公的機関のこうした情報公開の不足と遅延である。

 2000年を待たずとも、山陽新幹線のコンクリート崩壊は長足で伸び続けてきた科学技術への警鐘なのだろう。『コンクリートが危ない』(岩波新書・700円)によれば、「東京オリンピックが開催された1964年頃を境にして、それ以降に建設された橋梁、建築物のいずれも寿命が短くなっている」とあり、建築物には、マンション・学校・ダム・原子力発電所などが含まれ、それらが「ある時期に一斉に壊れだす」と警告している。くわばらくわばら。

1999年10月29日号

パソコン 電子メールは思いのほか簡単 インターネット接続はもっと簡単

 パソコンを買ったまではいいのだが、「さあ、どうしたものやら?」と思案している人は多いようだ。個人の期待をはるかに超えてパソコンは能力を備えているし、ガイドブックの氾濫は拍車をかけている。そこで超初心者向けに、必ず成功する本の選び方と活用方法を紹介しよう。

 パソコンを面白くする秘訣はインターネット接続と電子メールだ。とりわけ電子メールは、思いのほか簡単なのだ。キーボードの配列を覚えていなくても電子メールは書ける。なぜなら、「こんにちは。メールが書けるようになりました」とだけ書いて送信しても、立派な電子メールだからだ。この程度なら、文字を探しながらキーを打てる。面白くなったら、キーボードなんて、そのうち覚えてしまえる。

 まず、電子メールの本から。書店のコンピュータ書売り場やパソコンショップでは、一辺が20センチ程度の正方形に近いガイドブックが目白押しに積まれている。『できる××』(インプレス発行)、『超図解××』(エクスメディア発行) と、派手に装飾されたタイトルが目立つからすぐ見つけられる。あとは「××」の部分に使おうとしている電子メールソフトと同じ名前の本を探せばよいのだ。本を開けば画面そっくりに解説があるので、それに従うことにする。土・日、2日の休日で電子メールの第一便は発信可能になるだろう。

 インターネット接続はもっと簡単だ。電子メールの解説本と同じシリーズに「インターネット」がタイトルにあるものを選んで、解説どおり実行すれば失敗がない。

 ワープロや表計算が出来なくても、電子メールで通信ができるようになれば、それだけでもパソコンの値打ちは十分だと思う。が、面白くなればもっと上手になりたいと思うのは人の常。そこでお勧めしたいのは、月刊誌「ぱそ」(朝日新聞社・定価490円)の購読だ。本誌は「超ビギナーズ版」とうたっているが、入門誌にとどまっていない。バソコン活用に必要で十分な内容を、初心者が陥りやすい視点で編集されている。

 さて、教えてもらってばかりでは上達は望めない。初心者であっても、事典を一冊用意しておこう。類書が多く選書は難しいのだが、『標準パソコン用語事典 ・2000年版』(秀和システム・1600円)を目安として提案しておこう。コンピュータはまず使ってみること。わからない用語は引いてみよう。霧が晴れる日の訪れはそう遠くないはずだ。

1999年10月1日号

 生きとし生けるものたちの
物語が濃密に詰まった海辺 海は壮大なドラマの場

 暑い夏が過ぎ去り砂浜から人影が消えると、「漂着物」採集の人たちは再び行動を開始する。海岸に流れ着く海藻、貝殻、木切れ、ゴミなどを丹念に探せば、海が運んでくれたドラマを発見するかもしれない。

 『新編 漂着物事典』(海鳥社・3800円)の著者・石井忠さんは北九州の海岸、金印で有名な志賀島から東へ遠賀川河口までの約56キロを歩き続けて30年になる。その集大成がこの事典だ。島崎藤村の詩で有名なココヤシの漂着確認数は700個以上にもなる。主な漂着物を項目に立て事典形式に解説を加えているのだが、無味乾燥でないのだ。ウミガメの上陸に「私はうれしくてしようがなかった」といい、人間の仕業による殺害には怒りを隠さない。

 いわゆる百円ライターは、韓国・台湾・香港からも流れ着くとある。「人形」の項目を開いてみるまでは子どものおもちゃがひらめいていた。それもあったが、祈りのための人形であったり、マネキンであったり、それも首だけとか。生きとし生けるものたちの物語が濃密に詰められていて興味は尽きない。漂着物採集のファンが増えつつあるという。

 「ゾウ」の項目で、「ゾウは泳いで海を渡ることもありうる」とあるのだが、歴史学者の網野善彦さんは『続・日本の歴史をよみなおす』(筑摩書房・1100円)で、「島国日本」を明快に否定している。古代において「海によって周囲から隔てられた島々の中で、自給自足の生活を営む孤立した社会であった」とする「常識的な見方は」「虚像であるといわなくてはなりません」と。

 縄文時代においてさえ交易がありその運搬手段として海や川が利用されていた。その交通路の一つは、北九州の沖合から瀬戸内海、大阪湾、淀川、琵琶湖、短い陸路を経て若狭湾へ。北九州や若狭湾の沖合では勇敢な船が大陸に向けて航海していた。海は、閉ざすものでなく、結ぶ壮大なドラマの場だった。

 寄せては返す渚に運ばれて、豊かなプランクトンは浜の生き物たちの食糧になった。灼熱の太陽に育まれて、生き物のあるグループは陸にあがり、別のグループは大洋へ向かった。『海・呼吸・古代形象』(うぶすな書院・2428円)の著者・三木成夫さんは、人間の胎児は胎内での32日目から1週間の間に劇的な変化を遂げる、その時に悪阻(つわり)が始まり、流産も起こしやすくなると説く。まさに陸にあがらんとす。静けさを取り戻した海辺に行ってみたい衝動にかられる。

1999年8月20・27日合併号

医学 健康や病気に関する情報は百家争鳴

 近頃の病名は「それって、聞いたことないなあ」なんて、よくある。そんなとき、家庭医学書を引いてみると、「おーい、この本、古くて載ってないぞー」。これって、病名わからない不安症候群、失礼!

 『家庭医学館』(小学館・6000円)は今年3月発行で最も新しく、病名は約2000収録されていて類書中最多。こうした家庭医学書を手元に一冊常備しておくと、健康に関する情報や病気の知識を簡単ながらも知ることができて好都合だろう。

 しかし、健康や病気に関する情報は百家争鳴。拠り所を探しあぐねることもしばしば。そんなとき「いのちジャーナル」を読んでみてはどうだろうか。同誌は大阪市郊外に編集事務局をおく「さいろ社」(電話★変更されている。脚註あり)が発行する月刊誌。

 その最新、8月号(A4判・88頁・700円)では、内科医の浜六郎が「コレステロールを下げると早死にする」と警告している。コレステロールが高いほど死亡の危険が大きいのは心筋梗塞だけ。その心筋梗塞を死因とする割合が、欧米では全死因の45%であるのに対して日本人では6~8%に過ぎないと、違いなどをあげる一方で、コレステロールの値が高いほど死亡の危険度が少なくなると疫学調査のデータで説明している。ただし、ここではコレステロール低下剤について検討を加えているのであって、コレステロールの多い食事をいくら摂ってもよいというのではあるまい。食事にバランスは必要だろう。

 同誌では医療情報の公開に熱心な近藤誠が連載し、5月号では日本初の脳死移植についても特集を組んでいる。医療や福祉を受ける市民の立場に立った示唆に富むジャーナリズム誌である。

 さて、暑いさなか、親も子も夏バテして疲労がたまりやすい頃だ。子どもは昼間元気でも深夜に突然高熱を出し親を慌てさせる。そんなときのためにも備えておきたい育児書を紹介しておこう。松田道雄の『定本 育児の百科』(岩波書店・3800円)、毛利子来の『ひとりひとりのお産と育児の本』(平凡社・3107円)、山田真の『はじめてであう小児科の本』(福音館書店・正編2600円・続編2300円)。これらはいずれも著者一人で書き下ろしたもの。患者の心を巧みにつかみ、語りかけるようでおごりがない。風邪、熱、下痢などを引いてみよう。そこには処方にとどまらず、子育てのヒントが隠されている。

★さいろ社は1999年11月1日より神戸市に移転しました。

1999年7月16日号

道 いまの地図には信号もコンビニもある 迷って困った揚げ句に地図を開いてもダメ

 どうも方角がわからない、道に迷いやすい。この苦手意識を取り除く処方箋がある。それは、地図を持って、あなたが先頭を歩くことだ。連れていってもらうばかりでは、いつまでたっても方向感覚は育たない。リーダーになって先頭を切る、あるいは一人旅でもすれば、道を覚えられるだけでなく、多くの発見をして実りは何倍にもなるだろう。

 さて、ここでいう地図とは、散策・旅行・ドライブなどが用途。地図の製作手法において近年めざましい進歩をとげている分野でもある。あなたの使っている地図が10年以上も前のものだったら、今すぐにでも本屋に足を運ぶことをお勧めしたい。地図を開いてみると、そこには信号機があり、コンビニがある。

 アルプス社(本社・名古屋市)が1984年に刊行した道路地図帳『アトラスRD東海』(1999年版・A4判・3000円)では信号機マークが、同種の地図としては初めて採用された。コンビニや給油サービスステーションも登場した。それまでの地図は、名所旧跡や有名な建築物の表示を頼りにルートを探していた。つまり、ドライブや町を歩くときの目印を飛躍的に増やしたことが画期的だったのだ。90年、『アトラスRD近畿』(1999年版・A4判・2900円)が出てまもなく、昭文社の『スーパーマップル関西』(1999年版・3714円)にも信号機マークが採用された。地図業界大手の昭文社がこれに追随したことで、信号機は地図に必須のマークになった。

 今では、道路地図はもとより市街地図でも信号機の表示は当たり前のようになっているが、その嚆矢はアルプス社の技術陣が考案したことによる。『アトラスRD』シリーズの地図を細かに見ていくと、無名商店の店名を発見することがある。それは、地図利用者の利便性を最優先にした結果であって、そうした目印の移動・改廃についての情報提供に専用フリーダイヤルを設置し、巻末で読者に協力を求めている点もユニークだ。

 ところで、地図は迷う前に、現在地を確かめるようにして使うのがコツ。これから先の通過予定ルートで覚えやすい目印を二つほど、事前にチェックして記憶する。その記憶地点に到達したら、新たな目印を記憶する。これを繰り返せばいい。迷ったかな? と思えば、引き返そう。至極当たり前のことなのだが、迷いやすい人は、迷って困ったあげくに地図を開くのだ。

1999年6月18日号

季節 「雨水利用」「雨暦」・・・ 雨のことなら何でもわかる

 阪神・淡路大震災で焼失した長屋の地主さんは、住宅再建にあたって「雨水を溜めてはどうか」と提案した。そして震災から2年足らず、いち早く完成した地上9階建てマンションの屋上には太陽電池が、地下には23トンの雨水貯留槽が備えられた。その詳細は拙著(共著)で恐縮だが『自立建築のあるまちづくり』(北斗出版・1800円)に詳しい。

 災害時だけでなく、ふだんの生活に雨水を利用する試みも広がりつつある。この復興住宅のトイレ洗浄水も雨水である。5年前に出版されたグループ・レインドロップス編著『やってみよう雨水利用』(北斗出版・1942円)は、個人でも 実践できる工夫を豊富な図版とともに紹介したわかりやすい好著である。

 「雨暦」はユニークだ。発行は「雨水利用を進める全国市民の会」。雨水を利用する目的でデザインされ、雨の降りやすい日には傘マークがついている。ちなみに、6月は3、18、20日と、27日から29日の連続3日間が傘マークだ。雨にまつわる美しい風景写真や一口知識、それに川柳も。大賞作品「雨ふった! 相々傘で仲なおり!」に対して、高校生が作った川柳「アライグマ雨で体をアライグマ」はダジャレ風。1999年版は1000円。問い合わせは電話03-3611-0573、同事務局まで。同会では来年発行の予定で『雨水事典』を編集中。水の循環から八代亜紀「雨の慕情」まで、親しみやすくそして雨のことなら何でもわかる事典をめざすという。

 ところで、季節は、春夏秋冬の四季で表されることが一般的だが、関西ではこれに早春と梅雨を加えて、六季のほうが実感に合う。早春は2月20日ごろから3月末までの約6週間、寒さがやわらぎ地温が高まりフグリの花が咲き始めるころ。梅雨は6月10日ごろから7月半ばまでの約5週間。国立天文台編『理科年表平成11年』(丸善・1100円)や『季節の事典』(東京堂出版・品切れ)を参考にし、私の自然観察記録を根拠にまとめた。あえて六季に分けると、梅雨は5週間の「雨季」であると認識できる。

 さて、降り続く雨の中、生きものたちはどうしているのだろう。絵本『あめがふるときちょうちょはどこへ』(金の星社・1000円)は、忘れていた思いをよみがえらせる。「ことりは、つばさのしたに、あたまをいれるんですって。でも、あめがふるとき、ちょうちょは、どこへいくのかしら」

 ゲアリックの詩的な文体と、ワイスガードの描く透明な雨が、心に降りそそぐ。

1999年5月21日号

辞書 項目数対決…小さな辞書の組み合わせ

 「わたし、骨を折ったものだから腰に人工骨が入ってるの。それでね、重たい辞書は落としてしまうのよ。わたしのような者のために、2分冊にしてくれたらいいのに」と、大阪市郊外に住む和恵さんは電話で訴えてきた。『広辞苑・第5版』(岩波書店・6800円)では重すぎるので、小さな辞書を組み合わせることで「広辞苑」の代わりにならないかというのである。

 じつはかつて私も、重くて大きい辞書の扱いが面倒になり、『新明解国語辞典』 (三省堂・2800円)と『新明解百科語辞典』(三省堂)の2冊で間に合わせていた。しかし、「百科語」の方は残念ながら品切になり重版予定もないそうだ。とても重宝していたので、できればもう一度復活させて欲しいと思う。

 さて、項目数6万から8万程度の小型国語辞典では引き当てられず、それで 「広辞苑」23万項目なら載っているのでは、と期待。つまり項目数対決なのだ。『新潮国語辞典・第2版』(新潮社・4854円)は項目数14万余とやや肥満。現代語に加えて古語も収録し、項目が和語のときはその読みをひらがなで、漢語ならばカタカナで表すなど、日本語を愛する人には涙あり。重さで「広辞苑」の半分よりも軽く、判型もよりコンパクトである。

 人名の「聖徳太子」、都市名の「神戸」を引いてみれば、「広辞苑」にはどちらも項目にあったが、「新潮版」にはどちらもなかった。百科語項目を「新潮版」は採用していない。こうした百科語の項目数を勘定に入れないで「新潮版」には14万余の項目があるのだから、国語辞典としては「広辞苑」に十分対決できるとしておこう。

 対決陣営としては、『コンサイスカタカナ語辞典』(三省堂・2800円)を仲間に加えたい。新語・流行語の採用は国語辞典の苦手とするところ。カタカナ語43000、略語7000を収録。これでパソコンもグルメもこわくない。

 あとは、百科語を何で補強するかだが、三省堂のコンサイス・シリーズにある人名や地名の事典は、コンパクトさとその充実ぶりで有力候補。

 ところで、辞書を引いてみたものの載っていなくてガックリ、説明が今一つでウーン、あきらめるしかないのだろうか? 大丈夫! 近くの公共図書館で司書に相談すればいいのだ。出かけられないときは、電話で尋ねてもいい。満足な回答が得られるかどうかは、その尋ね方次第かもしれない。

1999年4月23日号

Q&A 自然観察の本

 のどかな春の日射しのもと、レンゲ畑で弁当を食ぺ、寝そぺってみた。ヒバリのさえずりが天を昇っていく。ミツパチが湧いてきたかのように、そこらあたりいっぱい飛んでいるのに気づく。一ぴきのミツバチがレンゲの花の一つにその頭をもぐり込ませた。より深くもぐったそのとき、赤紫色の花から黄色い雄しぺがちょこんとその姿を見せた。雄しぺはミツバチに挨拶したかのようだが、すでにミツバチは黄色い花粉にまみれていた。

 「植物の図鑑でわかりやすいものはありませんか?」の相談も陽春とともにやってくる。植物の図鑑は、樹木と草花に分かれている。小学館の自然観察シリーズ『野の植物』(1440円)や保育社のカラー自然ガイド『人里の植物』『野山の木』(いずれもⅠ・Ⅱとあり、各700円)がハンディサイズで便利だ。小型の本だが、解説も充実していてちょっと物知りにもなれる。

 ゆっくり図鑑で調べることのできる植物に対して、野鳥たちはそうはいかない。ヒバリは空高く点になっていて声だけが響き聞こえてくる。その野鳥の見分け方を的確に示しているのが、日本野鳥の会発行『新・野山の鳥』 『新・水辺の鳥』(各524円)。2冊合わせても普通の新書本1冊分の大きさと厚さ。これで日本国内で見られるほぼ全種を掲載している。図鑑必携で、各地で催される探鳥会に参加するのが早道だろう。

 変わったところでは、オオカミやクマの写真集が欲しいという相談があった。目的をたずねると、動物たちの鋭い視線に学びたいということだった。
うーん、そんな本探しもあるのか……。

1999年3月12日号

Q&A 国語辞典の使い方

 入学・進級の季節が近づくと、辞書の相談が増えてくる。そして準備はするのだが、開かれることの少ないのが辞書の運命ではなかろうか。

 50音順あるいはABC順に見出しが並べられている辞書なら、20秒もあれば目的の項目にたどりつける。ぜひ試していただきたい。その20秒をわずらわしいと感じなくなったとき、辞書は手放せないものになるだろう。

 よく使うはずの辞書がガラス戸付き書棚に納まっていたり、ケースで覆われていたりすると、先の20秒以上のわずらわしさを感じる。国語辞典や英和辞典など、頻繁に使う辞書の置き方には工夫がいる。たとえば、料理の本などは台所に置いてあって、汁や粉がかかることを気にするよりも便利さが優先されるように。

 私はそうした使い方のほうが大切だと考えてアドバイスしている。

 では、辞書を銘柄別にどう選ぶかとなると、じつは難しい。充実してかつ楽しい工夫を凝らした辞書も多い。にもかかわらず、書店の辞典売り場で何をどう選んだらいいのか迷い、立ちつくしている人たちを見かける。漢字学習には熱心でも、辞書の選び方・使い方の学習をおざなりにしてきたからだろう。「調ぺることの大切さ」の旗は振られるが、旗に集まる人たちは少数に過ぎない。

 私がすすめる二点の辞書をあげよう。『朝日新聞の漢字用語辞典』(朝日新聞社・1100円)と『例解新国語辞典』(三省堂・2300円)。前者はとにかく便利。文字が大きいだけでなく、鮮明で読み取りやすい。後者は、日本語を愛したくなる好著である。

1999年2月12日号

Q&A 子どもに贈る本

 「姪の12歳の誕生日に本を贈りたい。2000円の予算で適当に選んでくれたらいい」と言って、大阪の敬三氏は電話を切った。グッド・タイミング! 表紙の隅に「12歳になったら読む本」と書かれた『女の子のこころとからだ』(成美堂出版)に関心を寄せていたときだったからだ。1000円ちょうど。

 広告評論家の天野祐吉が福音館から出版した『嘘ばっかし』は実在しない商品のコマーシャル集。たとえぱ「空気のかんづめ」等々。若い子たちのユーモアを磨くには打ってつけで、1000円。これで予算は満たされた。この2冊をギフト便にして依頼先に届けたところ、「たいへん喜んでくれたので、もう一人の姪にも送ってください」と、後日うれしい追加注文をもらった。

 同じときにカナダ在住のハルミさんからも、「母である私としては娘に説明をする時期が来たようですが、うまく説明ができません」と電子メールが届いた。「からだの成長の変化やしくみが詳しく載っている小学生向けの本がありますか?」ということである。

 いわゆる性教育の本は、20年ほど前に出版活動を始めたが、そうした先輩たちの努力の積み重ねで、近年は子どもたちに直接語りかけるいい本がたくさん出回っている。先にあげた『女の子の…』は「からだ全般」というところだが、偕成社の『セイリの味方スーパームーン』は生理なんでもハンドブックに特化させている。つまり、超実用書なのだ! この本も1000円。

 本を贈るとき、名作文学ばかりでなく、楽しく役立つ実用的な本や遊び心も、選ぶヒントになるだろう。

1999年1月15日号

Q&A ゴーギャンのノアノア

 静岡県裾野市の比奈子さんは一編の詩を友人から受け取った。仕事で落ち込んでいた彼女を励まそうとしたその紙片の片隅には、「ゴーギャンのノアノアより」と書き添えられていた。この詩が載っている本を探してほしいというファクスがヒントブックスに届いた。「ゴーギャン」とは画家の? 著者を「ゴーギャン」として検索すると、CD-ROMは5件のデータを表示したが、そこに「ノアノア」はなかった。書名に「ノアノア」と入れなおすと、1件だけデータが得られた。著者表示は「ポール・ゴーガン」。

 正式書名は『ノア・ノア』。ゴーギ ャンのタヒチ印象記で、岩波文庫で1932年初版。最新の発行は88年。文庫だからまだ在庫があるかもしれない。いや、売れていなければもう品切れかな?

 比奈子さんに、データだけファクスを送ったところ、「早速の情報、感激です。注文お願いします」と返事が来た。後日、その文庫本は確保できた。問い合わせから本の発送まで10日。以後、比奈子さんは引き続きヒントブックスを利用している。

 書名も著者も出版社もわからないとき、本が見つかる可能性はほとんどない。このケースでは、「ゴーギャンのノアノアより」のメモ書きに著者も書名も含まれていたのが幸運だった。

 電子メディアで本を検索するとき、キーワードの使い方次第で、結果はまったく違ってくる。常用しているCD-ROMの場合、「ノアノア」だと1件だが、「ノア」だけだと100件以上もヒットする。「ノア・ノア」と中黒を挿入すると検索に失敗する。

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