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むかしね。
ツバメとスズメは姉と妹だった。
あるとき、村のお祭りだというので、ツバメはお化粧したり、どの着物をきようとか、どの帯をしめようかと大さわぎしていた。
妹のスズメは、まめまめしく家のなかを片づけたり、ごちそうのしたくしていたと。
「ああん、やだやだ、やっぱりあっちの帯がいい。スズメや、もういっぺん、帯をしめ直すから手伝っておくれ」
姉さんのツバメにそういわれると、ハイハイといって、手伝っていた。
そこへ、かあさんが危篤だから、すぐに帰れって、しらせがきて、
「はよ、いかなくては」
スズメは青くなって、ふだんぎのまんまでとるものとりあえず、とんで帰ったと。
ところがツバメは、
「こっちの帯しめてから、口紅もつけてから、すぐいくから」
って、あれもこれもと、すっかりきれいに支度してから、かあさんのところにかけつけた。
けど、かあさんはもう死んでいた。
それでツバメは、今は土だの虫だのばかりついばんでいるのだと。
スズメはかけつけたおかげで、冬、雪降ってさむいときでも、米三粒は落ちているそうな。
ツバメはくやしくて、ほれ、いまもこんなふうに鳴いている。
スズメラエエコトヨ コメクウテ
ツバメラツチクウテ ムシクウテ
クチシブーイ クチシブーイ
早口でいうてごらん。ツバメの鳴き声になるから。
親孝行せにゃいかんよ
- 松谷みよ子『読んであげたいおはなし(上)』
- ちくま文庫 2011年
- p152
2019.6.28記す