- 米本和広『カルトの子』
- 文藝春秋 2000年 ISBN978-4-16-356370-1
洋一はあっけらかんとオウム時代のことを話すが、洋二は一切口にしない。─73頁
「空想の世界に入るんですよ。絵本、たとえば白雪姫の世界に入り込んで、自分で遊ぶんですよ。そうすると、伝道訪問のために歩いていることを忘れ、けっこう楽しむことができました」─100頁
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三千子は相手の男の子を呼びつけ、二人を前に顔を真っ赤にして包丁を突きつけ、交際をやめるように迫った。だが、桃子は付き合いをやめなかった。生まれて初めて自分の意志を貫こうとしたのである─179頁
大人は自分らだけ幸せに余生をエンジョイしている。私たちは大人に振り回されて人生台無しにしている犠牲者。もう一回やりなおしたい。やりたいことできない。大人の理想の 子ども像 押しつけられていい迷惑。生きることに楽しみがない。─299頁
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この本は、カルトとは何かを問う本では、ない。カルトに入った親にまきこまれた子どもたち(二世)を追ったルポルタージュである。カルトの子どもを扱ったルポは皆無で、文献すら極めて少ない。カルトの子は誰からも救われることなく、好奇の目にさらされている。
親に捨てられたも同然の洋二の心が開かれるまでには、まだしばらくの年月が必要だ。エホバの子連れ伝道で、連れられている子どもが白雪姫を演じるのは、虐待を受けて解離状態にあるという。
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三千子が包丁を突きつけたのは、文鮮明(統一教会)がマッチングする前に娘が男性と付き合うことを許していなかったから。ヤマギシの子どもたちは、どのように大人に振り回され、人生を台無しにされたのだろうか。
ヤマギシが学校法人の認可申請を出したことによって、1998年11月、三重県が「ヤマギシ学園」の子どもたちにアンケートを実施した。その記述式部分の公表はされなかったが、著者は資料を入手し、子どもたちの肉声をこの本に掲載している。
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(エホバの)説明によれば、現在世界234カ国・地域に591万人の信者を数え、日本の信者数は22万人──(90頁)、キリスト系教団としては実質、プロテスタントに次ぐ勢いのようだ。
もっともっと多くの人たちに知らされるべきものが、知らされていない。著者によると、オームの子どもたちは百人程度保護されたにもかかわらず、その保護に始まる事例について研究がまとめられなかっただけでなく、その記録の保存すらあいまいになっているらしい。が、著者はその資料の一部の入手にも成功している。
一人でも多くの読者をこの本は待っている。
2001.1.11記す