||||| 三木成夫『胎児の世界 人類の生命記憶』読書メモ |||

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三木成夫『胎児の世界 人類の生命記憶』
+ 中公新書 1983年

三木成夫(みき・しげお)Wikipedia「三木成夫」
+ 1925年 香川県に生まれる。
+ 1987年8月逝去
+ 解剖学・発生学

p8
//西洋医学にたずさわっている者がこんなオカルトじみたことを真面目にとりあげるなんて、少しおかしいのではないかと思われる方もおられるかもしれません。実証を宗とする今日の世相から申しますと、なるほど、これはお笑い草でありましょう。しかしみなさん、この世界はそんななまやさしいものではけっしてないのです。
 戦後の大脳生理学の// 以下に続く。

p8
//戦後の大脳生理学の研究の一つに、人間では脳の左と右とでは分業が成立していて、左のほうが”論理”をつかさどる「ロゴス脳」であり、右のほうが”勘”をつかさどる「パトス脳」であることを明らかにしたものがあります。//
※「分業が成立」としている。書きかた注意/読みかた注意。

p17
//この「想」の機能は、大脳生理学のことばを借りれば、あくまでも右脳に由来するものでなければならない。//
p17
//この”あるもの”に名称をラベルするのが、まさに左脳の機能ではなかろうか。//
※今日の神経科学に照らせば、このような論旨(決めつけ)は誤りといわねばならない。

p19
//地球上には、アメーバからはじまってヒトまで、まことに多種多様の動物が生息しているが、それらのどのからだにも、〔A〕感覚-運動をつかさどる器官群と、〔B〕栄養-生殖をつかさどる器官群とが識別される。//
※前者〔A〕を//動物器官//。後者〔B〕を//生物器官//(植物にみられ、動物を含む)としている。さらに、A…//からだの壁をつくるので「体壁系」とよばれ、その中枢に”脳”と”神経系”が位する。// とし、 B…//「内臓系」//とよばれるとする。

p24  //里帰りの生理//p25
//南部のサケの鼻は曲がっている。荒巻にされて目をむいたその顔貌はすさまじい。かれらは先祖代々、おそらく数十万代、数百万代にわたって、来る年も来る年も、欠かすことなく故郷の北上川の源流へさかのぼりつづけたのであろう。岩を噛む激流に逆らい、死を賭してその鼻を折り曲げながら、あくまでものぼることをやめない。その”鉄の意志”は、いったいどこから来たのか。鼻曲がりの顔貌は、こうして代を重ねるあいだに、ついに種の形象として固定されてしまうことになったのだ。//
p25
//そのエネルギーは、いったいどこから出てくるのか。さきに”鉄の意志”といったが、もちろん、動物に意志はない。あるのは、いわゆる本能的な衝動だけであろう。では、その衝動の源は何か。現代の生理学では説明できないことがあまりにも多い。ここでは、だから、「生磁気」のようなものにひき寄せられる、というにとどめておこう。//

p36
//この鰓腸(さいちょう)は、図4〔下図〕に示したように、魚の消化管の前端部つまり口から五条の鰓孔までの領域をいい、皮一枚で外界に露出している。わたしたちは、これを「腸管の前端露出部」とよんでいる。いわば腸管の筒が、勢い余って体壁の筒から身を乗り出した部分で、それはからだの前方に生じた一種の”脱肛構造”とも受け取られる。ここは、したがって、皮膚感覚ではなく、それよりもはるかに生命的な内臓感覚で支配された「腸管の触手」となる。// 下に続く*
※鰓(えら)

p36 上より*続く
//こうして見ると、哺乳動物の赤ん坊が母親の乳房から乳を吸っている図は、あたかも腸管の口から皮膚をとおして母親の血液を漉(こ)しとっているところ、ということになろうか。それは、臍の緒の血管が子宮の”血の池”に無数の根を下ろして母胎の血流に結ばれているのと同じだ。母子交流の原点をなす哺乳の世界には、こうした地球誌的な時の流れが秘められているのであろう。わたくしは、この世界が、動物や人間の音声をつくるうえに、かくれた基盤となっていることを思わずにはいられない。
 マ行の音「マ・ミ・ム・メ・モ」は、// ……と、音声について、三木成夫節がこのあとに続く。

三木成夫『人間生命の誕生』築地書館 p204
//人体の構造の原形と言うものは、人間のからだの解剖だけでは所詮これを得る事は出来ないのであるから……。//
※三木は「外なる原形」は //抜き差しならぬ程に体得//p203 されているが、「内なる原形」はメスで解剖することで探求するしかない、としている。しかしながら、それをもってしても、その目的に到達しないとしている。ここにおいて、三木成夫節が表されることになる。

2022.12.4記す

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