歩道を歩かないで段差のある溝との境、隣地の壁面を子どもは歩きたがる。「そんなとこ歩かないで…… あぶないから」とママは思う。段差の高さが増してきたところから飛び降りる。野外、山野でもそうだ。高い所から飛び降りようとする。子どもは好んで飛び降りる。子どもは飛び降りるものだと思っているおとなは多いと思う。「飛んでみろ!」と挑発するおとなもいるぐらいだ。
”子どもは──”とは言え、何歳から小学校の何年生ぐらいまで、こんなことをするのだろうか(”おとな”は、しないからだ)
どうやら、目の高さ?
飛び降りたいけれど、飛べるかどうか? 飛べそうな方向を真剣に目線で追っている。つぶさに観察していると、〈目線の高さ〉ではないかと気づいた。少しずつ傾斜がある段差では、高いほうへ歩を進めるうちに、(これ以上は無理)と見切りをつけた場所から飛び降りる。高いところで〈目線の高さ〉に近く、身長ほどではない。
それで実験を試みた

5歳児の目線の高さは概ね100cmだ(身長は約110cm)
「巧技台」(こうぎだい)は多くの幼児施設に備えられていて、10cmごとに積み上げられる。これを使用して、5歳児クラスの子どもに飛び降りてもらった。
70センチであれば、全員(18人)らくらく飛び降りられる。膝を折り曲げる屈伸運動をしないで、ほぼ立位のままで飛び越えられる。しかし、90センチの高さに上げるとそうはいかない。「こわい」とつぶやく子どもが出てくる。膝を折り、着地に備えるようになる。それでも、巧技台を通過するスピードは速く、誰もが飛び越えていく。
100cmに上げた。「こわい」の声は、ほぼ全員から聞こえる。1段10cmあげるだけで一変する。そして、子どもは、なんとか飛ぶ。
さらに1段上げて、110cmに上げると、「こわい」の声に体の堅さが伴ってくる。つまり、限界を超えている。
この実験・検査は、運動能力を測るとか、鍛えることにない。普段の生活で、あるいは野外活動で、どうして高いところに登りそして飛び降りたくなるのか、その”生活”のひみつをさぐることにある。
1mの高さがこわくて、この高さに及ばない5歳児もいた。がんばってみようとやや無理した子どももいたかもしれない。
結果を得て……
80cmの高さを用意してもよいだろう。80、90、100cmの3つの高さを用意し、飛びたいあるいは挑戦したい高さを「繰り返し」飛び降りることで、体幹を鍛えるという考え方もできるかもしれない。
4歳児以下では
3歳でも、4歳でも、70cmは飛べるようだ。5歳児の上記実験でも、70cmを繰り返し飛んでいる子もいた。
- この検証で考えたこと
- 5歳児に限れば、”生活”の体幹としては、飛び降りられる高さに臨界値が存在する
- 5歳(児)未満での臨界値は不明
- 「着地部分の検証」という課題がある
- 飛び降りようとしているときの「こわい」という表現
- 恐怖に感じ、飛び降りたくない、あるいは、飛び降りられない
- 「こわい」と言葉を発するものの、同時に、どうすれば飛び降りられるか思考が働く
- 上記(2)は、4歳では生じず、5歳になって生ずるという仮説を立ててみたい
なぜ、「目線の高さ」になるのだろう?
子どもは測ってから飛び降りる動作をするのでなく、〈勘〉で飛んでいる。なんども飛ぶうちに身につけた体幹だろうが、その結果が〈目の高さ〉になっているように思える。偶然なのか、何か意味があるのか、わからない。
指導で気をつけたいこと
この実験・検査は、運動能力を高めるために行うのではない。その目的では、幼児体育に詳しい知見を参考にして欲しい。110cmが飛べると、120cmに挑戦したくなる(子どもが? 保育者が? の、見極めもむずかしい)。大半の幼児が飛べる高さを限界としよう。なぜなら、飛んで遊ぶことが楽しいから──。
2020.12.15記す