||||| きんぴ 金肥 |||

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 無着成恭/編『山びこ学校』(岩波文庫)をパラパラとめくっていたら「金肥」(p302)が目に入った。1970年代、但馬の山村で村人と話しをしていたら「きんぴ」と言うので、「それっ、なに?」とわたしは訊いた。

 話しを訊かせてもらっているその場所も十分に山奥だったが、その村を貫く街道奥、バスの終点からさらに奥、もう久しく行っていないので距離感が失せてしまったが、おそらく歩いて1時間くらいの道のりはあるだろうところに「アッサ」という集落があった。漢字で「熱田」をあてる。アッサの人はオオタニ(大谷)まで「きんぴ」を2俵買い、背負い、これを一日2往復したという。この労働を毎日続けるという。

 「きんぴ」さえなかったら、そんなことをしなくてよいのに……と同情していた。「キンピって、なに?」とわたしは訊いた。お金を出して買う肥料、化学肥料のこと。20代前半にこの昔話(さほどの昔ではない)と苦労を訊かされたことは忘れられない。

2023.8.9記す

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