村井米子さんは女性アルピニストの嚆矢で、著名な田部井淳子さんを育てた方です。尾瀬沼でご一緒しました。そんなに名高い方とは知らず、「疲れたときはこれがおいしいのよ。私はいつも山行きのときは持っているの」と差し出してくださったのが、〈レモンのはちみつ漬け〉でした。もちろんおいしかった! のちに自分でも再三つくっていますが、このときが一番おいしかった。
「昔は、ここまで浸かりながら歩いたのよ」と胸の前で手を水平にした。「今は木道(もくどう)が出来て、誰でも歩けるようになったね」
村山米子さんは、村山弦斎さんの娘さん(「食育」の嚆矢者)ということを後年に知り、これにもびっくり。レモンのはちみつ漬けがおいしかったわけだ。※「はちみつレモン」ではない。
一期一会。こうしたことが若かった私に刺激を与えてくださったことは間違いなく、私たちが野外活動を幼い子らに実践するときも、繰り返し行うことはもちろん大切だが、一期一会でも可能だということを知る。このことを肝に銘じたい。
2020.3.20記す