||||| 技術的特異点の論点1: R.K.『ポスト・ヒューマン誕生』|||

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レイ・カーツワイル Ray Kurzweil『ポスト・ヒューマン誕生』
:コンピュータが人類の知性を超えるとき
The Singularity is near : When Humans Transcend Biology 2005
+ 訳:井上健(監訳):小野木明恵、野中香方子、福田実
+ NHK出版 2007年 + 読書メモ

p4
//五歳のとき、発明家になると心に決めた。//
※本書の書き出しは、このフレーズから始まる。よほどに自信があるのだろう。だが、「5歳」の記憶というものは怪しい。自身が覚えていて想起したのか、誰かが覚えていて伝え聞き、自信の記憶との見極めがつかなくなったのか、いずれにしても、信ずるに根拠が乏しい。まあ、(幼い頃から発明家になりたかった)と、受け取ってちょうどいいだろう。
p4
//八歳になるころには、もう少し現実的な発明をするようになっていた。〔月に行く宇宙船作りの失敗を受けてのこと〕//
p5
//八歳のころ、トム・スイフト・ジュニアのシリーズ本を発見した。//
※この頃なら、トピック的な記憶はあるかもしれない。自己顕示欲の強い人(この本を著しているおとなとして)だなあと思う。

p16
//宇宙のブラックホールが、事象の地平線(ブラックホールにおいて、それ以上内側に入ると光すらも脱出できなくなるとされる境界)に近づくにつれ、物質やエネルギーのパターンを劇的に変化させるのと同じように、われわれの目の前に迫りくる特異点は、人間の生活のあらゆる習慣や側面をがらりと変化させてしまうのである。性についても、精神についても。
 特異点とはなにか。テクノロジーが急速に変化し、それにより甚大な影響がもたらされ、人間の生活が後戻りできないほどに変容してしまうような、来るべき未来のことだ。//

p18
//AIを快く思わない人々は、そうした領域は、いつまでたってもコンピュータの能力が人間の能力を上回ることのない、人間に生まれながらにして備わった最後の砦なのだ、と主張するだろう。
 だが本書では、これから数十年のうちに、情報テクノロジーが、人間の知識や技量を全て包含し、ついには、人間の脳に備わった、パターン認識力や、感情や道徳に関わる知能すらも取り込むようになると論じていくことになるだろう。//
※「知能」の語義について。新明解国語辞典第三版では、//(正しくは、「智能」)頭の働き。知恵の程度。// 三省堂国語辞典第八版では、//(頭/知恵)の はたらき。精神の能力。知力。
※疑問……感情や道徳は「知能」であろうか。「知能」の再定義が必要ではないか。IQで表現される指数に、感情やとりわけ道徳が含まれるとは考えにくい。

p19
//人間の知能は、ときには高い創造力や表現力を発揮できることもあるが、その思考するところのほとんどは、たんなる模倣にすぎなかったり、たいして重要でなかったり、制約があったりする。//
※「ほとんど」以降は「たんなる」「たいして」かもしれない。しかしながら、量的表記「ほとんど」は果たしてそうだろうか。算術計算で推し量れるものだろうか。

p21
//指数関数的な動きは1000年前にも存在していたが、まだまだ初期の段階だったので、成長が平坦で遅く、なんの動きも認められないように思われた。その結果、未来もたいして変わらないという予測は当たった。今の時代なら、テクノロジーが進歩を続け、社会もそれに影響を受ける、というような未来を予測する。ところが、未来は、たいていの人が思い描くより、はるかに驚くべきものになるだろう。変化の率そのものも加速度的に大きくなっているという事実がもつ意味を、きちんと考慮に入れている人がほとんどいないからだ。//
※著者は、そのごく少数の派に所属しているということだろう。世界は、ごく少数派に握られているということか。

p33
//今のところ、光速が、情報伝達の限界を定める要因とされている。この制限を回避することは、確かにあまり現実的ではないが、なんらかの方法で乗り越えることができるかもしれないと思わせる手がかりはある〔注釈をつけている〕。もしもわずかでも光速の限界から逃れることができれば、ついには、超光速の能力を駆使できるようになるだろう。われわれの文明が、宇宙のすみずみにまで創造性と知能を浸透させることが、早くできるか、それともゆっくりとしかできないかは、光速の制限がどれだけゆるぎないものかどうかにかかっている。とにかく、宇宙の「もの言わぬ」物質とメカニズムは、このうえなくすばらしい知能体へと変容し、情報パターンの進化におけるエポック6を構成する。
 これが、特異点と宇宙が、最終的に迎える運命なのだ。//
※宇宙のすみずみ……膨張し続けている宇宙観がある。この場合の「すみずみ」とは何か。
※最終的に迎える……特異点を論ずるために設けた「最終」であろう。指数関数的に進むとされる「それ」に「最終」はあるのだろうか。

p46
//わたしも個人的には、事象の地平線の向こう側を見ることは、不可能ではないにせよ、難しいことだと考えている。//
※科学的にものごとを考えるということは、「不可能ではないにせよ」を枕詞にすることは正統ではあるだろう。わたしの知識はかじった程度、シロートそのものだが、事象の地平線の向こう側を見ることについては「不可能」と仮定して、科学とつきあいたい。このことを否定しないで特異点を論じようとしていることに、特異点の存在や特異点到来の近未来を否定しないが、その科学的思想につきあいきれないものがある。

p71
//宇宙の誕生から生命体の進化が最初の一歩をふみだす(原始細胞、DNA)までに何十億年とかかったが、その後の進歩は加速化されている。カンブリア紀の大爆発の時代には、主要なパラダイム・シフトは、ほんの数千万年ごとに起こっている。時が下がり、数百万年の間に原人、旧人などヒト科の進化が進み、ほんの数十万年を経てホモ・サピエンスが出現した。テクノロジーを創造する種が出現すると、指数関数的なペースが急速に高まり、DNAがタンパク質の合成を指示するという形での進歩では追いつかなくなり、進化の主役は、人間が作りだしたテクノロジーに交代した。だからといって生物の(遺伝的な)進化が続いていないわけではないが、秩序を向上させる(あるいはコンピューティングの有効性と効率性)という点で、進化を先導する立場にもはやない。//

p85
//人間の脳は、非常に効率の悪い、電気化学的なデジタル制御のアナログコンピューティング処理を用いている。脳の計算の大半は、ニューロン間結合(シナプス結合)によって行われ、毎秒約200回の計算速度しかない(ひとつの結合ごとに)。これは、現在の電子回路の速度より100万倍以上も遅い。しかし、人間の脳は、三次元の超並列組織を構成していることから、驚異的な力をもっている。三次元回路を人工的に構成するためのさまざまなテクノロジーはすでに準備段階に入っている。//

p98
//知識が経済を支配するまでには今後数十年はかかるだろうが、実際にそうなったときには、ものごとが根底から変化するだろう。//

p138
//人間のニューロンにある複雑さのほとんどは、情報処理ではなく、生命維持機能を支えるために使われている。究極的には、われわれの精神的なプロセスを、より適切なコンピューティング回路基板に移植することが可能になるだろう。そうなれば、われわれの精神は、こんな小さなところに収まっている必要はなくなる。//
p139
//コンピューティングの最終的な限界について考えることは、実際には、われわれの文明はどういう運命をたどるのか、と問うているのと同じことなのだ。//

p143
//コンピューティングの観点から、しかも電磁的相互作用だけを考えれば、1キログラムの岩の内部では、1ビットあたり毎秒1015以上の状態の変化が起きていて、事実上、毎秒1042回(100万×1兆×1兆×1兆)の計算をしていることになる。それでいて、岩はなんらエネルギーの入力を必要とせず、感知されるほどの熱も発生していない。
 もちろん、原子レベルのこうした活動にもかかわらず、岩は、おそらくはペーパーウェートや飾りにされることの他には、役に立つ仕事はなにもしていない。そのわけは、岩の中の原子の構造が、大部分は実質的にランダムであるからだ。その反対に、もしも、素粒子をより意図的に構成させたなら、熱を出さず、エネルギー消費がゼロで、1000×1兆×1兆(1027)ビットのメモリをもち、毎秒1042回の演算を行うコンピュータになるだろう。//

p151
//ここまでくると、確かに抜本的な変化が起きる。こうした理由から、特異点──人間の能力が根底から覆り変容するとき──は、2045年に到来するとわたしは考えている。//

p151 ※直上を受けて……
//非生物的な知能が2040年代半ばには明らかに優勢を占めるにしても、われわれの文明は、人間の文明であり続けるだろう。生物を超越はするが、人間性を捨て去るわけではない。この論点については、第七章でふたたび取り上げる。//

p202
//「たとえば、10歳の子どもが、ある情報を保存するのに1000個のニューロン間結合を使っているとします。その子が80歳になったとき、いかなる変化が起きていても、結合の4分の1はまだ存在しています。こういうわけで、子どものころの体験をずっと覚えていられるのです」。//

p205 脳の可塑性
//1965年の名高い研究で、D・H・ヒューベルとT・N・ヴィーゼルが、脳卒中などにより神経系が損傷を負った後に、脳の広範囲にわたって再組織化が起こることがある、と発表した。//

p228
//神経の階層の最上位にあるがため、脳の中でもっとも理解されていないのが大脳皮質だ。//

p234
//紡錘細胞は新生児には存在せず、4か月目ぐらいになってようやく出現し始め、1歳から3歳までの間に著しく増える。子どもが道徳的な問題を考えたり、愛情などの高いレベルの感情を察知したりする能力は、これと同じ時期に発達するものだ。//

p239
//脳の働く仕組みを詳細に理解できるまでには1世紀かそこいらはかかる、と主張する同業者にはたびたび出くわす。科学にまつわる多くの長期予測と同じく、こうした意見も、将来を線形的な展望で見たものであり、進歩はもともと加速度的なものであることと、基盤にあるテクノロジーが指数関数的に成長していることを見落としている。さらに、このような過度に保守的な考え方の背景には、現時点でどれほど広範なことが達成されているのかが、過小評価されているという事情がある。この分野の専門家ですらそうなのだ。//

p243
//人間の身体バージョン2.0//

p256
//わたし自身の話が教訓になるだろう。20年以上も前に、わたしはⅡ型糖尿病と診断されたが、従来の治療では悪化する一方だったので、発明家としての観点からこの健康を脅かす難問に取り組んだ。専門文献を読み漁り、独自のプログラムを開発し、ついに糖尿病の治療に成功したのだ。1993年に、この経験をもとにして健康に関する本(〔書名を略〕)を書いた。今もその症状や合併症はまったく出ていない。//
p257
//わたしはみずからの生化学的組成を果敢に再プログラムしてきたのだ。毎日サプリメントを250粒摂取し、毎週6回、静脈内投与(基本的には栄養補給剤を直接血流に注入し、胃腸管を迂回させる)を受けている。その結果、体内の代謝反応はそうしなかった場合とは格段に違ってきた。また、エンジニア的見地から、血液や身体から採取したサンプル(毛髪や唾液など)を使って、数々の栄養素(ビタミン、ミネラル、脂肪)、ホルモン、代謝の副産物の数値を計っている。総じて、それらの値はこうあってほしいと思う範囲に収まっているが、プログラム内容はグロスマン〔p255 //長寿研究の最先端にいる医学博士、テリー・グロスマン//〕との共同研究に基づいてつねに微調整している。このプログラムは極端に思われるかもしれないが、実際は控えめで、──それに(現時点でわたしの知る範囲では)最善のものである。安全性と効果を調べるために、グロスマンとともに数百もの治療法を徹底研究した。効果が実証されてないものや、リスクが高そうなアイデア(たとえばヒト成長ホルモンなど)には手を出していない。
 わたしとグロスマンは、悪化する疾病を治したり克服したりする過程を一種の戦争と見なしている。//

p272
//いずれ、それも近いうちに、必ずクローン人間は誕生する。注目度の高さから、不老不死へのかすかな期待まで、挑戦を促す動機はいくらでもある。高等動物で可能な方法なら、人間でもうまくいく公算はきわめて高い。その技術が確実に安全となれば、倫理上の障害など、あったとしても簡単に崩せるだろう。//

p320
//ナノ医療が介入すると、最終的にはあらゆる生物学的老化を継続的に止めるだけでなく、現在の生物学的年齢から本人が希望する年齢へと若返れるようになる。つまり暦上の年齢と生物学的な健康状態とのつながりが永遠に断ちきられるのだ。このような介入は、あと数十年もたてばあたりまえになるだろう。毎年、健康診断と体内洗浄を受け、必要に応じておおがかりな修復を行えば、そのつど、生物学的な年齢を自分が選んだ生理学的な年齢に近づけることができる。結局は思いがけない理由で死んでしまうかもしれないが、少なくとも今の10倍は長生きできるようになるだろう。 ──ロバート・A・フレイタス・ジュニア//
p321
//ロバート・A・フレイタス・ジュニア──ナノテクノロジー理論のパイオニアで、ナノ医療(人間の生命システムを分子レベルで操作する)を提唱する第一人者であり、『ナノ医療(Nanomedicine)』というタイトルの著作も出している──は、人間の血液細胞の代わりとして、はるかに効率的に機能するロボット細胞を設計した。仮に赤血球全てをフレイタスのレスピロサイト(人工赤血球)と交換したとすると、オリンピックの短距離走並みの速さで15分間、息継ぎなしで走り続けられるようになるだろう。//
p418
//歴史上、人間が寿命という限界を超えて生き続ける唯一の手だては、その価値観や信仰や知識を将来の世代に伝えることだった。今、われわれは存在の基盤となるパターンのストックが保存できるようになるという意味で、パラダイム・シフトを迎えつつある。人間の平均寿命は着実に伸びており、やがてその伸長はさらに加速するだろう。現在、生命と病の根底にある情報プロセスのリバースエンジニアリングが始まったところだ。ロバート・フレイタスは、老化や病気のうち、医学的に予防可能な症状の50パーセントを実際に予防すれば、平均寿命は150年を超えるだろうと予測する。さらに、そういった問題の90パーセントを予防すれば、平均寿命は500年を超える。99パーセントならば、1000年以上生きることになるだろう。バイオテクノロジーとナノテクノロジーの革命が完全に現実のものになれば、実質的にはあらゆる医学的原因による死をなくすことができると予想される。非生物的存在になっていくにつれて、われわれは「自分をバックアップする」(知識、技能、性格の基本をなす重要なパターンを貯蔵しておく)方法を手に入れ、たいていの死因は取り除けるようになるだろう。//

p353 //軍事・諜報//
//アメリカ軍はAIシステムの熱心な利用者だ。パターン認識ソフトウェアは巡航ミサイルなどの自律型兵器を誘導し、何千マイルも先にある建物はもちろんのこと、特定の窓を狙うことも可能にしている。ミサイルが飛行する土地のくわしい情報は前もってプログラムされているが、気候や地表の変化などさまざまな要因についてリアルタイムで画像を認識し、柔軟に対応しなければならない。
 陸軍が開発した自己組織型通信網(「メッシュ・ネットワーク」と呼ばれる)の原型は、小隊が新しい場所に配置されたときに、その無数の通信用ノードを自動的に構成できるようになっている。
 ベイジアン・ネットと遺伝的アルゴリズムを統合したエキスパート・システムは、戦場の時々刻々の変化に応じて膨大な量の食糧、物資、武器の供給網を調整する複雑なシステムを最適化するために利用されている。
 AIは、原子爆弾や核ミサイルなど武器の性能をシミュレートするためによく使われる。
 2001年9月11日の同時多発テロに先だって、国家安全保障局(NSA)のエシュロン・システムはテロリストによる攻撃を察知していたらしい。AIが支えるそのシステムは、同局が広く監視する通信を分析している。残念ながら、その警告を人間の責任者らは見過ごし、手遅れとなった。
 2002年のアフガニスタンにおける軍事行動では、無人ロボット戦闘機、プレデターが武器を搭載して活躍した。空軍のプレデターは、長い間、開発が進められていたが、最終段階で陸軍が供給したミサイルを即興的に装備したことが大きな成功につながった。2003年に始まったイラクとの戦争では、武器を装備したプレデター(CIAが操作した)と、他の無人飛行機(UAV)が膨大な数の戦車とミサイル基地を破壊した。
 全ての軍事部門はロボットを利用している。陸軍は、洞穴(アフガニスタン)や建物内の捜索に活用している。海軍は小型ロボット船を使って空母を守っている。次章で述べるように、兵士を戦場から遠ざける傾向が急速に広がっている。//

p394
//2030年代の初頭、われわれはどうなっているだろう。心臓、肺、赤血球、白血球、血小板、膵臓、甲状腺他全ての内分泌器官、腎臓、膀胱、食道下部、胃、小腸、大腸などはすでに取り除かれている。この時点で残っているのは、骨格、皮膚、生殖器、感覚器官、口と食道上部、そして脳だ。//

p417 表1 平均寿命
//
クロマニョン人の時代 18年
古代エジプト 25年
1400年 ヨーロッパ 30年
1800年 ヨーロッパおよびアメリカ合衆国 37年
1900年 アメリカ合衆国 48年
2002年 アメリカ合衆国 78年
//
※江戸末期から明治初年 1800年に相当ということだろう。

p430
//陸軍科学顧問団(ASAG)は科学調査の優先事項に関して合衆国陸軍に助言する団体だが、わたしはその5人のメンバーのひとりだ。ASAGのブリーフィング、審議、勧告は機密事項であるが、陸軍と合衆国軍全体が推進するテクノロジーの全体的な方向性についてなら、お話しできるだろう。//

p436
//2030年代末期と2040年代までに、われわれの体がバージョン3.0の人体となり、非生物的知能が優勢になるにつれ、サイバー戦争の問題が舞台中央へ躍り出るだろう。あらゆることが情報化されると、自分自身の情報をコントロールし、かつ敵の情報伝達、命令、制御を妨げる能力が、軍事的成功を決める主要因となるのだ。//
※敵側も同じ論理だろう。

p437
//今日の世界における教育の大半は、富裕な地域でさえ、14世紀ヨーロッパの修道院学校によって確立された型からさして変化していない。学校はあいかわらず極度に一点集中した制度で、建物や教師という不足がちな資源のうえに成り立っている。教育の質もその地域の財政状況によって差が大きく(財産税で公教育の費用をまかなうアメリカの伝統は明らかにこのような不平等を助長している)、持つ者と持たざる者の格差へとつながっている。
 他のあらゆる制度と同様に、やがては教育システムも分散化へと向かい、誰もが最高級の知識や教育にたやすくアクセスできるようになるだろう。現在はこの変容の初期段階にあるが、すでにネット上の膨大な知識や便利な検索エンジン、質の高い無料のウェブ講座、ますます効果的になっているコンピュータを使った教育などの到来によって、あまり費用をかけずに幅広い教育を受けられるようになった。//

p446
//戦争が発明の父なら、遊びは発明の母だ。/

p474
//これこそ科学者が探し求めてきた神が実在する証拠だと主張している。//

p490
//特異点論者〔シンギュラリタリアン〕であることで、わたしはたびたび疎外感や孤独を味わってきた。出会う人のほとんどが、わたしの見方を受け入れてくれないからだ。「大物思想家」のほとんどは、この重要な考えにまったく気づいていない。数限りない声明や論評の中で、人々が繰り返すのは「人生は短く、人間の体力や知力には限界があり、一生の間に根本的なことは何も変わらないだろう」といったありきたりの分別だ。変化が加速することの意味が明らかになるにつれて、こうした偏狭な見方も変わっていくと思うが、本書を著した主な理由は、より多くの人々と自分の見解を分かち合いたいと思ったからだ。//

p500
//そして第三の、もっとも説得力のあるシナリオは、人間そのものが徐々に、しかし確実に、生体から非生物的な存在へと変わっていくというものだ。障害や病気を改善するための神経移植のような、比較的簡単なデバイスの導入はすでに始まっている。こうした人体の改造は、血流にナノボットを入れるようになれば、いっそう進歩するだろう。ナノボットはまず医療と老化防止を目的として開発が進められる。そしていずれは、より洗練されたナノボットが人間の神経細胞と接続され、われわれの感覚を増強する。そうなると、神経系統からヴァーチャル・リアリティや拡張現実(オーグメンテイド・リアリティ)がもたらされ、記憶力は増強され、日常的な認識作業も助けられる。やがて人間はサイボーグとなり、知能における非生物的な部分は、そうした脳内の装置を足がかりとして、機能を指数関数的に拡大させていく。//……//2040年代には非生物的な脳のほうが数十億倍もの能力を発揮するようになる。それでもまだ人間は生物的な脳に意識を結合させているだろうか?
 非生物的な存在が、今日のわれわれのように、自分にも感情と精神があると言い張るようになるのは目に見えている。彼ら──つまりわれわれ──自身もまた人間であり、人間がみずからの特性とする感情的、精神的経験の全てをもちあわせていると主張することだろう。それも根拠のない話ではない。そして彼らは実際にそのような感情と結びついている豊かで複雑な繊細な行動をしてみせるだろう。//

p506
//意識の問題は、客観的測定や分析(つまり科学)によって完全に解決することはできない。だからこそ、哲学の果たす役割が重要となる。//

p507
//人間が嫌だとは言っていません。いろいろな制約や問題、それにバージョン1.0の自分の体を高水準に維持することなんかが厄介だと言ったんです。//

p510
//わたしの身体と脳を構成する特定の粒子の集合は、じつは、ほんの少し前にわたしを構成していた原子や分子とはまったく異なるものなのだ。われわれの細胞のほとんどがものの数週間で入れ替わり、比較的長期間はっきりした細胞として持続するニューロンでさえ、一か月で構成分子が入れ替わってしまう。微小管(ニューロンの形成に関わるタンパク質線維)の半減期はおよそ10分である。樹状突起中のアクチンフィラメントに至っては約40秒で入れ替わる。シナプスを駆使するタンパク質はほぼ一時間で入れ替わり、シナプス中のNMDA受容体は比較的長くとどまるが、それでも五日間で入れ替わる。
 そういうわけで、現在のわたしは一か月前のわたしとはまるで異なる物質の集合体であり、変わらずに持続しているのは、物質を組織するパターンのみだ。パターンもまた変化するが、それはゆっくりとした連続性のある変化だ。「わたし」とはむしろ川の流れが岩の周りを勢いよく流れていくときに生じる模様のようなものなのだ。実際の水の分子は1000分の1秒ごとに変化するものの、流れのパターンは数時間、ときには数年間も持続する。//
※唯物論

p520
//それゆえある意味、特異点は最終的に宇宙を魂で満たす、と言うこともできるのだ。//
p521
//加速しながら進んでいく進化でさえ、無限のレベルに達することはとうていできない。しかし、指数関数的に急激な進歩をとげながら、進化は確実にその方向へ進んでいる。進化は、神の極致に達することはできないとしても、神の概念に向かって厳然と進んでいるのだ。したがって、人間の思考をその生物としての制約から解放することは、本質的にスピリチュアルな事業であるとも言える。//

2025.1.3記す

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