||||| 技術的特異点の論点2: 宇宙の「すみずみ」|||

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 わたしたちが見上げる空はどこまで広がっているのだろうか。夜は星空になる。銀河は宇宙の存在を示している。ハップル宇宙望遠鏡は地球の周回軌道にのって観測データーを地上に送っている。宇宙の起源はビッグバンという”だれでも”知っているできごとで知られるまでになっている。とはいえ、それは言葉の驚異だけでその実際がよく知られているということではない。
 地球は46億年前に誕生したとされているが、それを遡り137億年前にビッグバンが生じたという。「なにもない」状態で、1兆度の1兆倍の1億倍の猛烈な温度という計算になっている。10を12個かけると1兆になる。10を8個かけると1億になる。つまり、12+12+8=32個をかけた温度。ヒトのからだも鉄も、あらゆる物質は、それを形作っている原子さらにもっとそれらの元になっている素粒子にもどってしまう温度だ。
 かくして悠久のときを経て、宇宙は膨張し続けている、今も。光の速さを超えることはできないものの、その速さをたとえに使うほどのスピードだ。宇宙のひろがりはこの程度の理解で十分だろう。
 ところが、「宇宙」の存在については、さまざまな議論がある。ビッグバンも議論のひとつであって、宇宙のはじまりは別の説もある。宇宙はひとつに限らず、複数説もある。とはいえ、そういう説明を読んでも、理解のしようがない。

 さて、宇宙の「すみずみ」について考えてみよう。
 レイ・カーツワイル『ポスト・ヒューマン誕生』NHK出版 2007年
p33
//もしもわずかでも光速の限界から逃れることができれば、ついには、超光速の能力を駆使できるようになるだろう。われわれの文明が、宇宙のすみずみにまで創造性と知能を浸透させることが、早くできるか、それともゆっくりしかできないかは、光速の制限がどれだけゆるぎないものかどうかにかかっている。//
※SFと受け取る向きもあろう。しかし、著者は”本気”で論を組み立てている。つまり、光速は突破できると……。
p45
//この最大の限界に至るまで、文明の知能は、宇宙のすみずみまで広がり、その能力を拡大し続ける。//
 この引用にある「宇宙」について、この空間的ひろがりに言及するものはない。したがって、「すみずみ」をその表記どおりに受け取るしかなく、「囲まれた区域の端から端まで」と国語的に解釈するしかない。しかるに、この本は一般向けに書かれてはいるが「科学書」である。科学革命が起こらんとしている未来予測を説得的に解き明かそうとしている。その威力は「宇宙のすみずみにまで広がる」というモノサシを提示している。これが大風呂敷でないとしたら、読者の共通理解をどのように求めているのだろうか。読者に本書の信頼を本気で得ようとしているのだろうか。
 ただし正確には、本書末尾の注釈で、宇宙各論の詳細を語っている。この注釈に沿えば、「すみずみ」はまさに最大の領域をさしているといえる。

2024.12.7記す

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