||||| 新渡戸稲造『武士道』第14章:婦人の教育および地位 |||

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婦人の教育および地位

封建制下の女性

 第14章「婦人の教育および地位」。武士道の書にこの章があることに驚きというか、新渡戸という人物に興味がわく。──女性の心の直感的な働きは男性の「算数的な悟性」の理解を超ゆる──の女性観から始まる。

 ──娘としては父のために、妻としては夫のために、母としては子のために、女子は己れを犠牲にした。かくして幼少の時から彼女は自己否定を教えられた。彼女の一生は独立の生涯ではなく、従属的奉仕の生涯であった。男子の助者(たすけ)として、彼女の存在が役立てば夫と共に舞台の上に立ち、もし夫の働きの邪魔になれば彼女は幕の後に退く。一人の青年が一人の乙女を恋い、乙女も同じ熱愛をもって彼の愛に報いたが、青年が彼女に心惹かれて義務を忘るるを見て、乙女は自己の魅力を失わしむるため己が美貌に傷つけたるごとき事の起りしも稀でない。──

 ──武士道は元来男性のために設けられた教えであるから、その婦人について貴びし徳もおのずから特に女性的なるものから遠くあった。──
 男は、〈義〉に始まり〈勇〉に続く徳に励み、これを内助の功で支えることで女の徳となった。男は主君に仕え、女は男に仕えることが封建社会の掟となる。これは、男の徳を規定しているのであって、女の定めではない。

 ──すなわち婦人が最も少なく自由を享有(きょうゆう)したのは武士の間においてであった。奇態なことに社会階級が下になるほど夫婦の地位は平等であった。──

 新渡戸は、この時代においては、けっこうフェミニストである。──アメリカの独立宣言において、すべての人は平等に創造せられ〈略〉法の前には万人平等である〈を、承知しているとした上で〉社会的政治的単位としては高くはなかったけれども、妻および母としては最も高き尊敬と最も深き愛情とを受けた。──

2019.11.18記す

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