かんけり遊びには、子どもの知恵が詰まっている

 かんけりは鬼ごっこの一種だが、空き缶を使うことから昔からあった遊びではないだろう。しかし、伝承されてきた遊びのエッセンスがいっぱい詰められていたから、かつては、好んで遊ぶ子らを集めた。アルミ缶は一撃で凹む。パイナップル缶やトマト缶は凹まない。隠れ場所が簡単に見つかる原っぱが減ったり、異年齢の遊び集団になりにくいことで、かんけりは「かつて」の遊びになってしまった。

 鬼役を決めたあと、缶が蹴られてゲームがスタートする。「鬼の陣地」に立てられた缶が遠くまで蹴り出されると隠れる余裕が出来る。鬼は蹴られた缶をつかむと振り返ってはならず、後ろ向きに陣地まで後ずさりする。陣地にもどったらすぐさま隠れている者を探し出す。一人、二人は、すぐに見つかる。遊び集団に幼い子が混じっているからだ。「けんちゃん、デン!」と、けんちゃんに聞こえるだけの声を出して、陣地の缶を鬼が踏む。「みっちゃん、デン」と、缶を踏む。

 鬼に捕まっている子らを助けるには、鬼に見つかっても早くに駆け出して缶を蹴り出せばよい。4年生の太郎はかっこよく飛び出してきて、缶を蹴る。鬼に気づかれなければラクに遠くまで蹴れるが、見つかって走り競争のときは蹴り方失敗で数十センチのときもある。倒された缶を起こす程度なら、せっかく逃げようとしていた子らはすぐに捕まってしまう。「けんちゃん、みっちゃん、たろう、デン!デン!デン!」

 鬼が陣地から離れずにあたりをみまわしていると缶を蹴り出すタイミングがない。すると、捕まっている子らが囃(はや)し立てる。「♪オニ、ジンチ、ハナレ」「♪オニ、ジンチ、ハナレ」と繰り返されることで、鬼はしぶしぶ陣地から離れる。なんと、隠れている子も「♪オニ、ジンチ、ハナレ」と叫ぶ。鬼は声のする方向へ歩み寄る。すると、その様子を見ていた別の子が隙を狙って飛び出した。助け舟を出すために「♪オニ、ジンチ、ハナレ」と言って誘導するのだ。

 果敢にも隠れていそうな場所へ鬼が近づく。すると、囚われの子らは「♪カーメ、クービ、ダスナ!」と、隠れている場所ではない違う方向を向いて叫ぶ。攪乱戦術だ。10人隠れていたが、9人まで捕まり、あと一人というとき、囚われ9人のうち誰かは近づきつつあるその一人の存在に気づく。缶の蹴り出しに成功すれば、クモの子を散らすようにゲームはふりだしにもどる。かんけりという遊びは、往々にしてこうなる。ワンゲームがけっこう長い。どうしても終わらないとき、囚われた子らが鬼にすすめる。「ハラ、切ったらあ?」

 鬼は決断する。「♪オニ、ハラ、キッタ!」 ときには泣きべそをかくこともある鬼。せっかくつかまえたのに、缶を蹴られ、元の木阿弥(もくあみ)になるからだ。泣きたくなる心境のときに、ありったけの声を振り絞り「♪オニ、ハラ、キッタ!」と宣言するのだ。なぜなら、「聞こえなかった!」と言われないように。宣言の声が耳に届いたら、隠れている者は一斉に飛び出し、陣地をめざして缶を踏まねばならない。囚われている子らが10までを唱和してくれる。「イチ、ニー、サン、……」 もどれなかった子らの誰かが鬼になって代わる。誰かが鬼になるよう唱和スピードが急に速くなることもある。かんけりは延々と続けられる。

 隠れる範囲を決めておく必要はない。陣地から離れすぎてはおもしろくない遊びだから。幼い子は年長の子らのかけひきを体験する。日が暮れるまで遊んだ。数を読み上げるときのスピード感に子らのやさしさがある。泣きたい気持ちを切り替えさせる力がある。リーダーが場面ごとに登場する。○○遺産に収めず、復活・再生を願う。

2021.6.171記す

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