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図には「カニッツアの三角形」という名がつけられている。「三角形が見えた」という成功体験に安堵するかもしれない。あかちゃんはもとより、さて、3歳児に三角形は見えるだろうか? 試したことがないので、まわりに3歳児がいたら、試してみてください。というよりも、関心が向くかな?とも思う。
4歳児ではどうだろう? 5歳児なら「さんかく」という言葉が発せられるかもしれない。なぜなら、「さんかく」という言葉を知っているから。こういう議論や説明が成り立つのは、おとなはすでに三角形を経験的に知っているからだ。
三角形に「こたえ」があるのではない。○×に慣れ親しんでいるおとなは、三角形がもし見えなかったとしたら、自分だけが取り残されたように思ってしまう。
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周囲の口が開いたような黒い正体が肝腎なのだ。乳幼児に始まる子どもは、遊んで体験を積む。その体験が黒い正体に通じる。おびただしいほどに体験、つまり、遊んで、さらには「つまずき」、失敗を繰り返すことで、いつか三角形が見えてくるようになる。
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人とすれ違ったとき、(あの人、どこかで見たことある)という気配を感じたり、(あの人、だれかさんとよく似ている)と思ったり……。つまり、黒い正体を、人の面影を、いつしかわたしたちは持っている。人の面影や印象を三角形として捉えているのではなく、黒い正体という成分に分けて習得している。いつも同じ髪型でなく、後ろ姿のときもあるし、声だけのときもある。暗闇やシルエットで浮かぶ像のときもある。三角形を集積しているのではなく、黒い正体で得られる輪郭から、わたしたちはいつしか像を結ぶことができるようになっている。
そのためには、黒い正体で象徴されるような「体験」を数限りなく得ておくことが必要条件なのだ。
「黒い正体」には「パックマン」という呼び名がある。
2025.5.1記す
