||||| 下向き目線のとき、幼児は思考する。|||

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 おとなは考えるとき腕組みしたりする。そして、空を仰いだり、目線をやや上向きにする。目線の高い方向に関心の対象が多い幼児も目線を上向きする。しかし、夢中になって遊んでいるとき、あごや目線をあげたりしない。腕組みもほとんどしない。下向き目線のとき、幼児は考えている。

(1)土を集める幼児

 1月28日(2015年)の寒い朝、気温は氷点下3度。石巻、ひろぶちの子どもたちは元気だ。ダウンジャケット、手袋、あったかブーツを身につけ園庭で遊ぶ。東から昇った朝日が子どもや遊具を照らし明るい影をつくっていた。写真にとらえた時刻は8時56分。子どもはどんなに寒くても遊ぶのだ。

 手にするのはプラスチック製スコップ。園庭の土を集めようと、身をかがめ、スコップに入ってくる土の勢いを手に感じていた。手前に小さな土の山が見える。集めた土をスコップから払い落としながら、「工事中だよね」と、”ともに働く同僚”に声をかけていた。

「こうじちゅうだよね」

 土を集める仕事だから姿勢は自然と低くなる。子どもの目線はどこに向かっているのだろう。スコップの先か、それとも、もっと向こう、行く方向の先だろうか。かきこまれる土の勢いを楽しんでいるのだろうか。
 おとなたちの目に映る光景は(無邪気に土をあつめて遊んでいる)ふうにしか見えない。子どもは真剣だ。「工事中だよね」と同意を求めた男の子には、目標というものがあるのかもしれない。そんなまなざしを感じた。

 おとなの場合。
 立ったまま対面すると「まあ座れよ!」と声かけする。叱られたらうなだれる。うなだれなかったら、もっと叱られる、かもしれない……。頭を下げて考えているフリもする。むずかしい問題を解くときは頭に手をやる。宙を見上げる。いろいろなフリをするものだ。
 子どもの場合。
 砂場で遊んでいるとき、目的の定まった子どもは、たいていはしゃがんでいる(砂場が地面に近いからではない)。鬼ごっこで、逃げているあいだは”作戦”を考えにくいけれど、隠れて姿勢を低くし丸くなっているときに、次の策を考える。

 そうなんだ。丸くなっているとき、姿勢が低いとき、そのかたちのときは子どもが考えているときなんだ。目線も下向きだ。エネルギーをただ発散させているだけではない。幼児という4歳5歳の子どもは、〈おとなと同じだけの〉考える時間を消費している。

(2)掃除ロボットを追う乳児

 (1)は4歳5歳の事例だが、このページの事例は0歳10か月なので「4,5歳の思考」とは異なると思うが、参考までに。

 子安増生『心の理論』(岩波書店 2000年 p32)によると、バロン=コーエンら著『マインドブラインドネス』(1995年)で「心を読むシステム」を4つの機構とし、その一つを「意図検出器(動く物に感ずる心)」としている。動画は、これに対応すると思われる。

2021.1.21記す

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