民間医療を考える

  • 『文化現象としての癒し 民間医療の現在』
    • 佐藤純一(さとうじゅんいち編)
    • 佐藤順一+村岡潔+野村一夫+黒田浩一郎+池田光穂(著)
    • メディカ出版 2000年 ISBN 4-89573-144-8

 民間医療とは何か? 本書では次のように定義される。──社会的にある程度の数の人びとによって支持され実行されている治療法・健康維持増進法のなかで、「近代医学の標準的理論に従って、制度的医療(近代医学の医師による医療)枠内で行われている正統的治療」以外のものを民間医療とする。──(12頁)
 医者にかからないすべての治療法とでも言えばいいでしょうか。健康食品を食べたり、××健康法と名のつくものはもとより、手かざしや気功法など、あなたが思いつきそうなありとあらゆる”健康法”が、ここでいうところの民間医療である。

 しかし話はそう簡単でない。民間医療をもっとも実践し、民間医療に信用を与えているのが、医者自身だから。まず、漢方・鍼灸がそうだ。日本では明治期、西洋医学を国の制度的医療とする前は、漢方が主だった。下野した東洋医学者は民間医療を支える一つの核になった。
 健康法をアピールする『××が治った!』というような本のカバーには有名無名の医者が顔写真つきで載っていることが多い。推薦者であったり自著であったり。だから、”正規”の病院内で”正規”の医者が行う治療であっても、それが”近代医学”の枠外であれば、これも民間医療である。このような見地に立てば、本書は民間医療を通して、近代医療を見直す視点をあわせもつ。

 本書は民間医療の批判書ではあるが必ずしも非難する立場をとるものではない。意外にもこれまでその専門家たちの間でも「民間医療」について真剣に語られることが大変少なかった。定義すらあいまいだった。そうした環境ゆえに民間医療は自由に振る舞い、医者は荷担できた。多少学術的だが、さして難解でもないので、民間医療に関心があったり疑問をいだく人たちは、本書を読まれることを薦めたい。
 ただ、本書タイトルの一部にもなっている「癒し」という言葉については、例外的に排除的な批判論が展開されている。「癒しという言葉が恥じらいもなく近代医療者においても使われるようになったのは九〇年代、それも後半であると言える」(205頁)のように。

 医師が言うところの、「治療が終わった」は「病気が治った」を必ずしも意味しない。一方、民間医療の宣伝文句はそのほとんどが「これで完全に治る」式である。「治る」とは「効く」とは、どういうことか? 治療に対する考え方の違いも興味ある指摘である。××健康法を試したり、関連書を開くとき、本書もあわせて読まれることをお薦めしたい。

2001.3.27記す

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