|||||『ばばばあちゃんのやきいもたいかい』でおや?|||

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 焼きいもをテーマにした子どもの本をさがしていると、ばばばあちゃんのこの絵本に出会いました。たき火だけで2場面を使い導入としているのは期待どおり。ところが、たき火に入れるさつまいもの準備で、おやっ? いくらぬれた新聞紙でも、その方法だと簡単に燃えてしまうよ!

 さとうわきこの人気シリーズ「ばばばあちゃん」の一作『ばばばあちゃんの やきいも たいかい』は福音館書店から月刊絵本「かがくのとも」(1998年)として刊行され、のち2000年に「かがくのとも傑作集」に収められました。その傑作集の6ページが次の場面です。

赤と黄の線は筆者がつけました。

  1. アルミホイルで くるんでから、
  2. ぬれた しんぶんしに つつんで、
  3. たきびの なかに いれるんだよ。

と、あります。絵をみても、そのようです。

 赤々燃えるたき火に「3」のように投入すると、ぬれた新聞紙の水分はほどなく蒸発し、新聞紙は燃えてしまいます。火の状態にもよりますが、おいしい焼きいもが出来上がるという前提に立てば、新聞紙は数分で燃え尽きてしまうでしょう。

 この本の書評や感想をインターネットで読むと、実際にやってみて上手くいったというのもありました。アルミホイルだけでも、おいしく出来上がります。だから、上手くいったわけでしょう。

 これは明らかに順序が間違いで、新聞紙に包み、その上からアルミホイルでさらに包むのです。こうすることで、さつまいもの焦げを防ぐ、さらに、新聞紙に含ませた水分がおいしさに効果がある、ということのようです。

 ぬれた新聞紙がおいしさの秘訣かどうか、実際にこれを試すのは困難でしょう。おまじないのようなもので、ぬらした新聞紙で包むという工程を増やすことで、「焼きいもの時間」を楽しむという効果はあるかなと思います。焦げは、アルミホイルだけよりも防げるかも?ですが、可燃性の新聞紙にどこまでそれを期待して良いか?疑問が残ります。

 実際、焼きいもをたき火から取り出してみると、新聞紙が焼けていないことは多くあります。その一方、焦がしてしまったさつまいもは言うまでもなく新聞紙の姿はあっても焼けています(アルミホイルがしっかりまけていなかったり、隙間や穴があると、そこから焼けてしまいます)。つまり、新聞紙に含ませた水分の働きは、より美味しくなるかもしれない期待と、焦がしてしまう時間をほんの少しだけ遅らせてくれる、ということでしょうか。

 ところで、この絵本は、「焼きいも」だけでなく、たき火に入れて作るものとして、じゃがいも、さといも、みかん、かき、りんご、バナナ、パン、カステラ、おもち、アメ、チーズ、どらやき、まんじゅう、お菓子、マシュマロ、……などを焼いてみようと提案しています。このことが、「かがくのとも」=科学絵本の必要条件なのかもしれません。

 確かに色々と試すことは楽しくて発見があるでしょう。だけど、果たして、思いつくままに焼いてみる、食べてみることが「かがく」でしょうか? 試す前に、どうなるかという予測を立てたり、焼き方を途中で修正や工夫をしたり、食べてみた結果と当初の予測(期待)と比べてどうだったか ── こういうプロセス(科学)を学ぶには、材料提案のしかたが少々荒っぽいと感じます。

 この絵本には、たき火に始まって、それを利用し、視点を広げていく良さはあると思います。ですから、絵本にあることを一度に実現させようとせず、さつまいもと同時に何かを焼くとしても1つか2つに選択して行うほうが、考える子どもを育てることになると思います。

2019.5.31記す

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