子ども(主に小学生)を対象とする野外活動イベントで「竹トンボ」がよく登場する。わたしも若いとき(1970年代)は、よくやった。そして、多くを学んだ。学んだこと……。
その1
竹は繊維に沿って扱えば、割りやすい。整形しやすい。しかし、敢えて言えば、それだけ。繊維に逆らって刃を立てることは難しい。刃は、こぼれやすい。
中田幸平『野の玩具』岩波新書 1974年
p44
//いま手作りといえば竹トンボと代表されるくらいであるが、発生は享保時代といわれ、一説には平賀源内が発明したものというが、はっきりしない。明治に入ってプロペラだけ飛ぶものが現れ、縁日などで売られた。現在ではプラスチックの竹トンボである。昔なつかしい竹製のものは、民芸店で売るようになった。手作りでは、プロペラの削り方の角度と串の長さの調節がむずかしく、子ども心に苦心した思いがある。//
その2
難しい細工を根気よくやりとげるには、まずは、よく飛ぶ竹トンボで十分に遊んだ体験を体得しておくことだ。「やりたい」「自分で作れる/作ってみたい」動機をどうつくるかという課題である。そのためには、リーダー役を引き受けるおとなは、面倒をみる子どもの数ぶん、事前に竹トンボを自作し、その苦労とコツを会得しておくことが肝要になる。
その3
さて、じつは、飛ばすのがむずかしい。手のひらで串をはさみ、両方の手のうち、どちらを前に押し出して飛ばすか? ふつうは、右手を差し出したときに飛ぶよう、羽(プロペラ)は削られている。この場合に、左手を差し出したら、どうなるか? 下に落ちるのだが、落ちる直前に、立てている親指に羽が当たることが多い。その親指は、いくらか”寝かせている”ことが必要なのだ。理由は、羽が当たらないというのではなく、串を手のひらで押し回すコツだから。竹トンボ遊びは、飛ばせてこそ楽しい。飛ばせないときは、指にあたって痛かったり、さほど楽しいものでない。子どもは、「こんなん、いらん」と言ったりもする。
その3の2
飛ばす場所も問題である。よく飛ぶ竹トンボは、わずか1回の試験飛行で、屋根など高いところに上がったまま落ちてこなかったり、遠く野原を越え回収できなかったりして、「あ~あ」とため息をつくことになる。草むらに落ち、探索に一苦労することもある。竹トンボで遊ぶということは、体験してこそ「わかる」遊びである。
その4
手作りするとき、竹を何で削るか? かつては、肥後守(ひごのかみ)ナイフをつかった。切り出しナイフでもよい。羽様に細工するには、竹にカーブをつくることになる。それは竹の繊維に逆らって削ることになる。繊維方向には力は必要ないが、カーブをつくるには力もいるしコツもいる。小学低学年には無理だ。能力を超える。このことを知らないで、低学年にやらせたところ、指を切る者が続出した。申し訳ない。すまないことをしたものだ。
切り出しナイフではなく、肥後守で事故は頻出した。刃で切るが背では切れない。背を竹にあて、刃を指にあて、そして、押す。アッという間に指を切ることになる。こうして記述していても手が痛くなる錯覚におそわれる。肥後守をもたせて鉛筆削りを行ったときも、この間違いを確認した。目安でしかないが、10人に1人は逆さにナイフを使う。目で見ただけでは(切る/切れない)を判断できないのだ。
(参考)〓肥後守(ひごのかみ)について
2023.10.19記す