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医学系教科書で〈新生児学〉を学ぶ

- 『新生児学入門』第3版
- 仁志田博司/著
- 医学書院 2004年 第3版
- 初版 1988年

分娩室における母子関係の確立
p131
※赤字は引用者による
できるだけ自然な、人間らしい母児関係を確立させようとする試みが分娩室にも取り入れられつつある。出生後できるだけすみやかに児を母親に見せたり、児の状態が許せば暖かいタオルでくるんで母親に抱かせたりすることなどである。
やさしさの育児
p137
人はどのようにしてやさしさを学んでいくのであろうか。女性は子供を産んだからといって、その本能が賦活化して母親になるのではなく、子供を抱き、乳房を吸わせ、育児をするというプロセス(mothering process)の中で、母性が育まれてくる。児にとっても大切なのは、母性にめざめた母親が自分を抱きしめ、愛情を与えてくれるという体験が、人を愛するという心を育む。
まず児は、自分の心を読み取って、それに対応してくれる人がいることを感じることにより、自分の行動が相手に影響を与えていることを知る。それによって自分以外の人との間に同調性(エントレインメント)とよばれる共通のリズムが醸し出され、相互信頼関係が作り上げられる。さらに児は、母親から絶対的な愛(アガペとよばれる無償の愛)を与えられていることを感じ、この世の中でたとえ1人であろうとも自分を受け入れ、信頼し、愛してくれる人がいることを心のひだに刻み込む。そして自分以外の人に思いを馳せるやさしさを学ぶのである。
第6章 母子相互作用
p125-138
新生児医療関係者でない一般人にも、子育てを考える上で示唆に富む。以下、本章の見出しを列挙する。
- 母子相互作用の科学的背景
- なぜ新生児期が母子関係確立に重要か
- 母子分離──未熟児医療からの教訓
- 母子早期接触の重要性
- 母子相互作用
- 母子関係用語の解説
- 愛着(アタッチメント)
- 刷り込み現象(インプリンティング)
- 感受期
- 同調性(エントレインメント)
- 単向性
- なぜ新生児期が母子関係確立に重要か
- 母子関係確立のステップ
- 出生前
- 出生時
- 出生直後
- 児の反応
- 母親の反応
- 新生児期
- 母子間の同調性(エントレインメント)
- 母子接触
- 母子関係確立のための臨床
- 分娩室における母子関係の確立
- 新生児室における母子関係の確立
- 母児同室
- 母乳栄養の影響
- NICUにおける母子関係の確立
- 異常児に対する母親の反応
- 驚き・ショックの段階
- 否定の段階
- 悲しみと怒りの段階
- あきらめの段階
- 受け入れの段階
- 平静の段階
- 父親と母親の児への愛着の違い
- 男女の本質的な違い
- 西洋と東洋の違い
- 父親と母親の悲しみの反応の差
- 母子関係の破綻に基づく臨床的問題
- 被虐待児症候群
- 愛情遮断症候群
- Perfect baby syndrome
- 母と子の絆と子育て
- 子育ての意味
- 母性とは
- 育児環境の変化
- やさしさの心を育む医療
- 心とは
- 心を育むとは
- やさしさの育児

2017.8.27記す