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マジックは不思議。タネがあることはわかっていてもフシギ。わたしは、タネを知りたいと思わない。それがわたしのタイプ(わかるわけないから……) マジックはショーを楽しむタイプ。
──//脳科学・心理学・進化学の最新知見で//の帯コピーが気になって、橘玲(たちばな・あきら)『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』を読んだ。読み始めて、すぐ……
p10
//脳は長大な進化の過程で、スピリチュアル(呪術的)なものとして「設計」された。
わたしたちにとっての世界(社会)は、「わたし=自己」を中心として、家族、友人、知人、たんなる知り合い、それ以外の膨大なひとたちへと同心円状に構成されている。他者を中心とした世界を生きているひとはいないし、もしいたとしたら精神疾患と診断されるだろう。//
「そうではないだろう」と、いきなり突っ込みを入れたくなった。ページをパラパラ繰ると脳科学の知見が散見されるので、つきあってしまった。
p57
//「人格(パーソナリティ)」とはあなたの内部にあるのではなく、身近な他者の評価がフィードバックされたものだからだ。//
p59
//パーソナリティもこれと同じで、「わたし」と「社会(共同体)」の相互作用によってつくられていく。//
p367
//このことから、パーソナリティは自分のなかにあるのではなく、他者との関係性によってつくられることがわかる。//
他者との関係性でパーソナリティ(自己)が形成されると言いながら、冒頭で、同心円状に他者がいて円の中心に自己がいるとしているので、整合がとれない。
自己は単数で、他者は複数である。複数他者の一部を信頼し、あるいは、複数他者の一部とつながり、それらを核(複数他者)とした衛星軌道に自己は位置している、とするほうが、長大な進化過程の説明になるのではないかとわたしは思う。
※自己と他者
◇
自身が主張したい根拠(出典)を客注で示している。たくさんの本を読んでいる人だなあと思った。チェックしておきたい、読んでおかなくては、と気づかされた本もあった。そういう意味では便利な本だった。出典を明らかにしているだけに公正な書き方と思わせている。
その一方、いよいよ終盤。自己啓発本に触れる箇所がある。
p406
//行動遺伝学の知見によれば、知能の遺伝率は成長とともに上昇し、思春期を過ぎると70%に達する。パーソナリティの遺伝率は平均して5割だが、残りの半分は非共有環境で、これは友だち関係などの偶然に大きく左右される。そして、子育ての努力はパーソナリティ形成にほとんど影響を与えない。//
この本の論調は「行動遺伝学」の成果物に拠っている。この本はノンフィクションである。難解または多読を必要とする本の内容を整理してくれていて、わかりやすいところはある。「各論」ではなるほどと思わせるところが多々ある。しかし総論は、行動遺伝学を最大の論拠に、タイトル「スピリチュアルズ(=無意識)」の取扱説明書になっている。
マジシャンということだ。なるほどと思わせながら、無意識を味方につけ、マジックショーに仕立てている。書名に表されているテーマは、本一冊で解けるものではないだろう。
アレンジしてみよう。
──パーソナリティ形成に子育ての努力は無視できるものでない。十分に貢献している。思春期を過ぎてからは、非共有環境(信頼できる友達や人生の恩師と出会えるか)で、生得的遺伝を乗り越えられる。──
2024.6.1記す
