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S・ワインバーグ『宇宙創成はじめの3分間』ちくま学芸文庫
+ 訳:小尾信彌
+ 文庫版 2008年(単行本 1995年 ダイヤモンド社)
+ 読書メモ
p189
//〔……〕これらのタイプだけであるならば、私たちは宇宙の膨張を時間の逆向きに外挿して、無限に大きい温度と密度をもった状態であるような本当の始まりが、第1フレームの0.0108秒以前にあったに違いないと推察することがたぶんできる。//
p189
//〔……〕そのような混合物の性質をある程度確信をもって計算できるほどの、素粒子の物理学についての知識を私たちはまだもちあわせていないのである。こうして、ミクロな物理学に関する私たちの無知のベールのために、宇宙のごく最初はなおはっきりと眺めることができない。
もちろん、このベールの向こうをのぞき見ようとは試みられている。//
p195
//エネルギー密度が無限大になった場合の温度の値としての極大温度がありうる。絶対零度が温度の下限であるように、これは克服できない上限であろう。ハドロン〔強粒子〕物理学における極大温度の考えは、もともとジュネーブにあるCERN(欧州原子核研究センター)のR.ヘイジドーンによるもので、その後マサチューセッツ工科大学のK.ファンや私をはじめとする理論家たちによって発展された。極大温度がどのくらいであるかについての、かなり精密な推定さえされている──絶対温度で約2兆度(2×1012K)〔K=ケルビン〕とそれは驚くほど低い。私たちが宇宙の最初により近づくほど、温度はこの極大にいくらでも近づいてゆき、そこに見られるハドロンの種類はどんどん増えてゆく。しかし、このように見なれない条件のもとでもなお、エネルギー密度が無限大の時刻つまり宇宙の開闢は、第Ⅴ章の第1フレームの約1/100秒以前にあったであろう。//
p200
//素粒子の近代的理論から導かれる本当に魅惑的なことのひとつは、273K(=0℃)以下に温度が下がると水が凍るように、宇宙が相転移を受けたかもしれないということである。この相転移は強い相互作用とかかわっているのではなく、素粒子物理学におけるもう1つの短い距離の相互作用である弱い相互作用とかかわっている。//
p204
//こんな情況に達するのは、1兆度の1兆倍の1億倍(1032K)程度の温度になったときであると推定できる。
この温度では、あらゆる種類の奇妙なことが起こっているだろう。重力場が強くて重力場によって多量に粒子が生成されるばかりでなく、”粒子”という考えそのものがもはやなんの意味ももっていなかっただろう。//
p205
//1032Kという温度に達したのは、開闢しておよそ10-43秒たった後であると大ざっぱに推測できるが、この推測が意味のあるものか否かも本当のところ明確ではない。こうして、他のどんなベールが取りはらわれても、1032Kの温度のところに、より初期の展望をなおさまたげているひとつのベールがある。//

p208
//本当であるかどうか私たちにはわからないが、しかし始まりがあったということ、その瞬間以前には時間自身が意味なかったということは、少なくとも論理的にはありうることである。//
P208
//私たちは温度の絶対零度という考えには慣れている。どんなものでも -273.15℃ 以下に冷やすことはできない。それは、難しすぎるとか、充分に巧妙な冷蔵庫を誰も考えた人がいないからというのではなくて、絶対ゼロよりも低い温度はただ意味がないからである──まったく熱がないというより少量の熱をもつことなどできないのである。//
p208
//同じように、私たちは時間の絶対ゼロ──それ以前では原因と結果のいかなる結びつきをたどることも原理的に不可能であるような過去における瞬間──という考えに慣れなくてはいけないのかもしれない。この問題は残されており、いつまでも残されたままかもしれない。//
P209
//──物理現象は自然の本質的な単純さを直接示している。しかし、そのときそれを見た人は誰もいない。//
2024.11.11記す


