リチャード・ドーキンス『神のいない世界の歩き方』 読書メモ

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リチャード・ドーキンス『神のいない世界の歩き方』
+ 副題:「科学的思考」入門
+ OUTGROWING GOD
+ A Beginner’s Guide
+ 大田直子/訳
+ 早川文庫 2022年

p26
//私はたまたまキリスト教徒として育てられた。キリスト教徒の学校に通い、13歳のときに英国国教会で堅信礼〔教会の正会員となる儀式〕を受けた。そして15歳のころ、ようやくキリスト教信仰を捨てた。その理由のひとつはこうだ。〔略〕//

p27
//私がむかつくことのひとつは、小さい子どもに親の宗教のレッテルを貼る習慣だ。//

p90
//ユダヤ人の神話では、アダムは「土のちり」からつくられた。神は「命の息をその鼻に吹きいれられた。そこで人は生きた者となった」。神は園芸家よろしく、挿し木のようにあばら骨の一本からエバをつくった。ちなみに、この神話がもとで、男性は肋骨が一本足りないと真面目に考えている人がどれだけたくさんいるか、仰天ものだ!//

p96
//聖書にはもうひとつ重要な主張がある。「グッドブック」と呼ばれているのだ。つまり、道徳的知の書、私たちが良い生活を送るのを助ける書だという。アメリカではとくに、聖書がなければ善良な人間になれないとまで考える人が大勢いる。//

p115
//パウロをはじめとする初期のキリスト教徒は、しゃべるヘビが最初の女性エバをそそのかし、そのエバに誘惑されて最初の男性アダムが犯した罪を、人間はみな受け継いでいると信じていた。//……//人々はほんとうに話すヘビを信じていたのか? じつは、信じていたのかもしれないと私は思う。なぜなら、とくにアメリカでは、気味が悪いほど大勢の人がいまだに信じているから。//

p159
//イエスは悪人というより無知であって、やり方があまり利口でないように思えるケースもある。//

p183 ※第6章の終わり、そして第1部の終わり
//あなたは第1章で挙げたたくさんの神々も、私が触れなかったさらにたくさんの神々も、ほとんど信じていないのではないだろうか。第2章と3章を読んで、聖書やコーランのような聖典は、どんな神であれ信じるべきもっともな理由を示していないと納得しただろう。第4章、5章、6章を読んで、私たちが善良であるために宗教が必要だという考えと決別したのではないだろうか。しかしそれでもあなたは、なんらかの大いなる力、世界と宇宙をつくった、そして──おそらく何よりも──私たちを含めた生きものをつくった、なんらかの創造的知性を信じることにこだわるかもしれない。私も15歳ごろまで、そのような信念に固執していた。なぜなら、生きているものの美しさと複雑さに深く感動していたからだ。とくに、生きているものはまるで「設計(デザイン)された」にちがいないように見えることに、感銘を受けていた。私がようやくすべての神々を見限ったのは、進化について学び、なぜ生きものがデザインされたように見えるか、その真の説明を知ったときだ。その説明──チャールズ・ダーウィンの説明──自体が、説明対象である生きものと同じくらい美しい。//

p191
//網膜上の像は上下逆さまだ。なぜそれが問題ではないのか、わかる? 世界は上下逆さに見えないのだろう?//

p196
//このような大きな問題を解決できるくらい重大な理論は、自然淘汰による進化だけである。//

p219
//それこそが、チャールズ・ダーウィンが自然淘汰と呼んだものだ(彼は「突然変異」という言葉は使わなかったが)。//

p241
//結晶について話し始めたとき、私は「パレードの兵士」と「腕を組む」というたとえを使った。ここで少しちがう比喩が必要になる。ジグソーパズルだ。大きくなっていく結晶は、未完成のジグソーパズルと考えることができる。ジグソーと同じように、へりにピースがくっつけられるので、中央から外へと広がっていく。ただし、テーブルの上でやる普通の平らなものとちがって、三次元のジグソーパズルだ。//
p243
//酵素の働き方の少なくとも概要はわかった。ここでジグソーパズルの考えの出番だ。細胞内でブンブン動き回っている何百という分子を、ジグソーパズルのピースと考えよう。//

p249
//その答えは遺伝分子、つまりDNAである。この答えの重要性はいくら強調してもかまわない。//
p251
//したがって結局のところ、私たち一人ひとりがどうやって一個の細胞から赤ん坊へと発達し、いまの私たちへと成長したかを決めたのは、DNAなのである。//

p254
//ホールデン教授はすばらしい返答をした。「それでも、あなたご自身がそれをやったのです。しかもたった9ヵ月で」
 女性はこう切り返すこともできた。「あら、でも成長中の胎児としての9ヵ月は、両親のくれたDNAが指揮を執っていました。私がゼロから始める必要はなかったのです」。もちろん、そのとおりだ。そして彼女の両親はその両親からDNAをもらい、その両親はそのまた両親からもらい、という具合に何世代もさかのぼる。数十億年にわたる進化の途中で何が起こっていたかというと、赤ん坊のつくり方についてのDNAの指示が、少しずつ組み上げられていたのだ。それを組み上げていた──磨きをかけ、改良していた──のは自然淘汰である。うまく赤ん坊をつくった遺伝子は伝えられたが、うまくできなかった遺伝子は消えた。そしてどういう赤ん坊がつくられるかは、少しずつゆっくり、何百万世代をかけて変わっていった。//

p255
//DNAは体の「青写真」だと聞いたことがあるかもしれないが、それは大きなまちがいだ。家や車には青写真がある。赤ん坊にはない。そのちがいは、車や家は設計(デザイン)されるが赤ん坊はされないこととは、まったく別である。もっと根本的なちがいがある。//
p257
//DNAが赤ん坊の青写真ではないなら、何なのか? それは赤ん坊のつくり方を示す一連の指示であり、それはまったく別の話だ。//

p268
//結晶は──黄鉄鉱もダイヤモンドも雪の結晶も──その美しい形を、ボトムアップのローカルルールによって成長させる。この場合、そのルールは化学結合のルールだ。私たちはそうしたルールによって組織化される分子を、パレードする兵士になぞらえた。重要な点は、結晶の形をデザインした人は誰もいないことだ。ローカルルールにしたがうことで、その形が現れた。
 次に私たちは、化学結合の法則が──ジグソーのピースが互いにはまり合うのに似たプロセスによって──ふつうの結晶よりも込み入ったもの、つまりタンバク質分子をつくる経緯を見た。さらに、同じようなジグソーのはまり合いで、タンパク質の鎖がとぐろを巻いて「結び目」をつくる。そしてその「結び目」にある「割れ目」のおかげで、タンパク質は酵素、つまり細胞内のごく特定的な化学反応の触媒として、機能することができる。//
p269
//前にも炒ったうに、「割れ目」はかなり単純化しすぎだ。そうした結び目をつくった分子のなかには、小さなマシンやミニチュアの「ポンプ」もある。またはごく小さな「歩行者」もあって、それは文字どおり細胞内を二本の脚で大股で歩きまわり、せわしなく化学的な用事をしている! ユーチューブで「Your body’s molecular machines(人体の分子マシン)」を検索してみてほしい。びっくり仰天するだろう。//

p271
//そして何十億年もたつと、細菌のように見える祖先があなたや私のように見える子孫を生み出すくらい、多くの進化が起こる。
 生きものに関するすべてが今あるとおりなのは、その祖先が何世代ものあいだにそのように進化したからだ。それは人間も含まれるし、人間の脳も含まれる。信心深くなる傾向は、音楽やセックスを好む傾向と同じように、人間の脳の特性である。//

p273
//ごく最近まで、ほとんど誰もが何らかの神を信じていた。信心深い人が少数派になっている西ヨーロッパは別にして、アメリカを含めて世界中のほとんどの人が、いまだに神を信じている。科学の教育を十分に受けていない人はなおさらだ。//

p275
//存在しないものを信じることがあなたの命を救う可能性がある。//

p276
//私たちの祖先の宗教は精霊信仰(アニミズム)だった。つまり、目を向ける場所すべてにエージェントが見えて、それを神と呼んだのである。//

p278
//人間の脳はパターンを探す。自然淘汰は私たちの脳に、何のあとに何が起こるという並び順のような、パターンに気づく傾向を組み込んだ。//
p278
//人がパターンを見分けようとするときの二通りのまちがえ方を区別する。呼び方は偽陽性と偽陰性。偽陽性は、パターンがないときにパターンが見えると思うこと。迷信は典型的な偽陽性のまちがいだ。偽陰性は、現実にパターンがあるときにそれに気づかないこと。//
p280
//実験的なアプローチは命にかかわるおそれがある。私たちの祖先が迷信に頼ったのも不思議はない。//

p283
//迷信深い人々は、いずれにしても雨が降るかどうかを確認するのに、雨の神にいけにえを差し出さないという実験を試さなかった。//

p285
//自然淘汰は、「親が言うことは何でも信じろ」というルールを子どもの脳に組み込むだけだ。//
p286
//一部の賢い子どもは大人になって証拠を目にし、前の世代から伝えられたまちがったアドバイスや無駄なアドバイスと決別する──そういうアドバイスを卒業するのだ。//
p286
//年長者が子どもに教えることの多くは合理的なので、自然淘汰はそういう脳の形成に味方する。//

p325
//1000億の銀河からなる膨張する宇宙でさえ、唯一の宇宙でない可能性がある。//
多宇宙
p326
//現代の物理学者は、私たちの宇宙の歴史のごく初期に何が起きたかについて、かなりよくわかっている。「ごく初期」とは、宇宙の誕生後、最初のほんの一瞬のことである。しかも宇宙の誕生後だけではない。時間そのものの誕生後でもある。「時間の誕生」とは、いったいどういう意味なのか?//
p326
//私たちの宇宙がほんとうに多宇宙にある何十億の宇宙のひとつだったら、質問は許されるのかもしれない。//
人間原理

p333
//あらゆる恒星には「ゴルディロックスゾーン」(暑すぎず寒すぎず、子グマのおかゆのように「ちょうどいい」)がある。地球は太陽のゴルディロックスゾーンにある。//……//人間原理によれば、地球がゴルディロックスゾーンにあるのは私たちが存在しているからだ。私たちの惑星がゴルディロックスゾーンになかったら、私たちは存在できないだろう。//

p346 //解説 世界の見方// 佐倉統
//この本でドーキンスは何度か、科学は正しい知識を提供してくれるがそれを知ることが人間の幸せにつながるとは限らないと警告している。だから今でも多くの人たちが、「不都合な真実」の進化論を受け入れることに抵抗し、なんとなく心地よい神の存在にいつまでもしがみついているのだ、と。
 科学の成果が必ずしも人に心地よくないというのは、本当にそのとおりだ。太字で強調しておきたい。氾濫する反科学や疑似科学やトンデモ科学の原因のひとつは、ここにある。//


(参考)宗教と科学の関係:少年クリストフ・コッホの場合

2025.11.3記す

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