||||| 野外活動で危険を回避するには |||

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要点

  1. 「不快」と「危険」の区別をする。
  2. 事故は複数の原因があわさって起きる。
  3. 「こわい」を強要しない。励ますことがケガにつながる。
  4. 行動中の体力回復は早くみえても、翌朝に熱を出しやすい。
  5. 熟知した上で、危険を恐れず。

「不快」と「危険」の区別をする。

「子どものときは平気だったけれど、今は無理!」という大人は少なくない。たとえば、カエル、ミミズ等々。女性、男性を問わない。多くの子どもは水遊びや泥遊びは好きだが、しかし、濡れることをいやがったり、土が少し手についただけで払おうとする子どももいる。部屋に1ぴきのハエがいてうるさく感じたり、蚊に刺されてかゆい思いをする。これらは「不快」なことであって「危険」ではない。

 咲き誇ったレンゲ畑は美しい。レンゲ畑は、もとは田んぼだから湿気てることが多く、乾いていても長くすわっているとお尻あたりが湿ったり冷たくなる。新聞紙やダンボール、レジャーシートなどを敷くことで快適になる。気にならない人は、もちろん何も敷かなくてよい。

 ところで、レンゲ畑には、ミツバチもたくさんやって来ている。注意深く観察すると、すわっている身のまわりにミツバチがたくさんいることに気づくでしょう。「れんげはちみつ」は高級品だ。気づいてからコワガルか、危険ではないと知ってそのままにしておくか──。

事故は複数の原因があわさって起きる。

 事故を起こさないように、と誰もが気をつかう。それでも事故は起きる。右側に注意すれば、左側の監視がおろそかになる。前に注意を払えば、後ろがおろそかになる。注意力はいつも同じように働かない。野外で活動していると、軽微なケガはどうしても起きる。そう、大きな事故を起こさないようにすればよいわけだ。

 事故の原因は、事故が発生してからそのあとでわかる。軽いケガでよかったと気を抜かず、軽いうちに、事例ごとになぜ発生したのか、どの注意が足りなかったのか、その検証が将来の大きな事故を防ぐことになる。
 ケガや事故は、注意していても必ず起きる。事故は、複数の原因があわさって起きるからだ。軽いケガをたくさん経験して大きな事故を防ごう。

  • 夢中になって遊んでいる子には、もっと遊ばせたいという気持ちが保育者にわく。子どもに体力のあるあいだは、つまずいてこけても手でからだを支えることができる。しかし、午後から、特に夕方にかけて疲れてくる。疲れてくると顔面や頭部を打撲するなどして大きなケガに結びつく。したがって、「遊びをやめる」タイミングを経験で覚えることが大切だ。「もう少し遊びたい」と望んでも、潔く切り上げ、気分を転換させよう。

「こわい」を強要しない。励ますことがケガにつながる。

「おばけ屋敷」のようなゲームも含めて、幼児には、こわい体験をさせる意味がない。楽しいはずの自然体験も、たった一度の「こわい」体験で、もう近づこうとしなくなる。

  • 子どもはコワイと感じると、からだをまるめたり、頭や顔を守る。しかし、無理にやらせたり、過度な目標を意識させると、自分でからだを守れない。したがって、「励まして」やらせることは必ずしも適切でない。ケガを誘うだけでなく、ほめてもらうことが目的で行動するようになる。ほめてもらおうと「頭を使う」ようになると、からだを固くさせてしまい、からだのバランスをくずしやすくなる。頭を使ってしまい、まるくなったり、頭や顔を守ることが遅れる。
  • 指導者は、こういう誤りをよくする。たとえば、10人の子どもがいて、9人の子どもが目標にたどりついたとする。残ったあとひとりを、みんなで励まそうと子どもに呼びかけ、落ちこぼれない配慮をしようとする。仮にこれが成功したとしても、見られることやほめられることを助長し自尊心を傷つけることになりかねない。

行動中の体力回復は早くみえても、翌朝に熱を出しやすい。

 日射しの強い夏、遊んでも道を歩いても、汗をかきながらも、意欲的な子どもは驚くほど疲れを見せないことがある。木陰で小休止をとっても、子どもの回復は早い。そのため、調子にのって過剰に行動させると、翌日、熱を出すことがある。子どものペースだけで判断してはいけない。

午睡(ひるね)する園・しない園

 2015年頃のある日、兵庫県の淡路島で目撃したこと。午後2時頃、保育園で子どもがにぎやかに遊んでいた。(おやっ? 午睡の時間帯のはずだが……)園長らしき人に、たずねた。
 ──午睡の時間ではないのですか? 午睡をやめてから年数を経ているらしい。「寝たい子だけで、3歳以上は午睡しません」と当然のような表情でもって話された。東京でも大阪でも、午睡をやめた園が続出しているらしいことは伝わってきていた。かつては当たり前だった午睡は、もはや”当たり前”でなくなっている。淡路島のその園では、保護者の希望で午睡が廃止になったと説明された。
 園では午睡するが、家では寝ないということは普通に聞かれる。園と家庭では事情が違うだろうが、集団保育で、夕方、事故が増えないのだろうか? 保護者がお迎えに来るような時間帯、子どものご機嫌が不安定になっていないのだろうか? 気になる出来事だ。 

人工構造物は安全か? 池のふちは危険か?

 こわいことは、しない・させない。危険なことは避ける。そんなあたりまえのことを守ることで、大きな事故は防げる。コンクリートで固められた人工護岸は足を踏み外した瞬間、そこは地獄だ。子どもは、落ちることを予知できないので、放置するとコワサ半分、歩きたい子が登場するものだ。だから、絶対に近寄らせない。その一方、草むらもある土手や池のふちは用事深く歩く。危険はどこにも潜んでいるから、安全の確認を怠ってはならないが、安全がほどこしてありそうな、つまり、安心感をもたせてしまう人工構造物は危険と認識しておく必要がある。

熟知した上で、危険を恐れず。

 指導者は、苦心して設定した環境や指導方法を、「もっと遊びたい!」などと子どもが評価したとき、子どもの要求を聞き入れてしまいやすい。子どもの発達や体力を理解せずして指導することで、それが事故を招く。あぶない・あぶない。安全を確保するには、日頃から、子どもに対する観察力が安全を担保することになる。子どもの行動様式を観察して身につけることだ。そうした配慮があって、子どもは自然のなかで、たくましく育つ。

〈安全〉をテーマにすると、なぜ〈保険〉の話になるのか?

 「保険、かけてるの?」という声をかけられた経験のある人は多いだろう。子どもを引率している場合や指導責任の立場にあるとき、万一に備えて、傷害保険や賠償責任保険への加入は必要だろう。賠償金額は個人の負担能力を超える。保護者の安心を担保することにもなるだろう。そうした財政的補償によって、子どもをケガしないように保護するということではない──このことを、確認しておこう。

救急講習を受けておこう

 日本赤十字社や消防署が実施している〈救急法〉や〈幼児安全法〉などの救急講習を受けておこう。過去に受講したことがある場合は、受講から5年を経過していたら再度の受講も検討しよう。安全の確保は、常に備えておく構えが大切だ。
 自治会や職場で行われている出張講習は緊張感に欠ける傾向にある。救急の実習と心得を、必要な時間数をかけて体得しよう。

日本赤十字社 救急法|講習の種類

交通安全は、誰から、いつ学ぶ?

 3歳の子どもは、連続してどれほどの距離を歩くだろうか? 整備された山道を2km以上歩いた子どもがいる一方、舗装道路500mを歩き通せない子どもも多くいる。目的とする方向がない。信号が青に変わり、前方に進んだかと思いきや、関心が後方にあれば、まっすぐに歩かない。それが3歳だ。
 それでも、信号の色が変わることには関心を示す。赤になったからクルマが止まる、と知るのは、4歳または5歳になったからになる。わからないから、理解できないから教えない──というのではなく、学習は3歳からスタートさせてよい。以上のことから、信号がある・なしではなく、道路をわたるとき、交叉する道路をわたるとき、まずは立ち止まり、クルマがやってこないことから始めよう。


[ 考えてみよう ]

以下5項目のうち、正しくないものが1つある。どれか?

  • 事故のない安全な野外活動とするために──
    1. 子どもとともに遊び、子どもをよく観察する。
    2. 信号のある・なしにかかわらず、交差道路では必ず立ち止まる。
    3. 「こわい」と尻込みするときは、無理して行動を促さない。
    4. 傷害保険や賠償責任保険に加入しておく。
    5. 救命講習、救急法、幼児安全法などの講習を受講しておく。

バツは「4」

2020.5.5記す

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