||||| OECD/CERI『脳からみた学習』読書メモ |||

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OECD 経済協力開発機構の CERI 教育研究革新センターによるOECD出版物

OECD教育研究革新センター/編著 2007年
脳からみた学習 ──新しい学習科学の誕生
+ 小泉秀明/日本語版監修
+ 小山麻紀,徳永優子 訳 明石書店 2010年

日本語版序文
序文

第1部 学習する脳

序章
第1章 脳についての「ABC」
第2章 生涯を通じて脳はどのように学習するか
第3章 学習する脳への環境の影響
第4章 読み書き能力と脳
第5章 数的能力と脳
第6章「神経神話」の払拭
+「神経神話」:学習ノート
第7章 教育神経科学の倫理と組織
第8章 結びと今後の展望

第2部 共同論文

論文A 幼年期の脳、発達、学習
論文B 青年期の脳と学習
論文C 成人期の脳、認知、学習

日本語版序文

p3~5
//本書『脳からみた学習 ──新しい学習科学の誕生』は、2007年にOECD(経済協力開発機構)のCERI(教育研究革新センター)が刊行した報告書『Understanding the Brain: The Birth of a Learning Science』の全訳です。
 本書はOECDが、6年以上をかけて行った斬新で、かつ挑戦的な研究プロジェクトから生まれたものです。脳科学を学習や教育へと役立てるために「学習科学と脳研究」というOECDのCERIが力を入れてきたイニシアチブ(社会を先導する行動)の成果を取り纏めたものといえます。
 よく知られるOECDのPISA調査(生徒の学習到達度調査)は、世界の国々の15歳児の学力を、横並びで調べるもので、やはりOECDが長年にわたって実施してきたものです。この調査で、世界の教育の現状を把握することができますが、肝心なことは、現状を正確に知ったうえで、何を改善したら世界の教育がより良い方向へと進むかということです。そのためにOECD加盟30か国が賛同して実施したのが、この「学習科学と脳研究」イニシアチブでした。//

//その中の個別プロジェクトから見えてきた「脳科学と教育」の最先端が、本書に集約されており、さらに、「教育」や「保育」、あるいは「育児」にとってヒントとなる新しい知見が随所に輝いています。本書は学習や教育に関わる脳の働きを、平易かつ正確に解説していますので、「教育」や「保育」そして「育児」に携わる人びとが、最先端の脳の研究がどのように進んでいるかを知るためにも役立ちます。
 現在、「脳」という文字が表題に入った本が数多く出版されていますが、なかには、脳の理解の基礎となる神経科学や認知科学の知見がほとんど含まれていなかったり、あるいは脳の正しい理解とはかなり隔たりのある本も散見されます。OECDでこの本が出版されたひとつの理由は、脳科学の正しい知見に基づいた平易な解説書が、「教育」や「保育」そして「育児」に携わる人びとに、今、必要とされていると考えたからです。事実、そのような本は、世界にもまだ、わずかしかありません。//

//本書は、「『神経神話』の払拭」と題して、ひとつの章を設けています。神経神話とは、脳に関係する知識でありながら、そして一見、科学的であるように見えながら、実際には科学的な根拠に基づくことなく、正しくない解釈や誤解が世間に広まってしまったものを指します。//
※事例として、①加齢に伴う神経細胞の数、②三歳児神話をあげた上で……。
神経神話個々の詳細

//「神経神話」にはさまざまなものがあります。なかには、完全に否定はできないけれども、明らかにひとつの事実を拡大解釈したり、誇張したり、あるいは身勝手に解釈されたものもたくさんあります。けれども、「脳から見れば……」という言葉が、脳の専門家以外にはとても魅力的であったり、あるいは、強い説得力を持ってしまうことがあります。そのために、国際機関としてのOECDでは、信頼できる神経科学者や認知科学者を組織し、脳科学の知見に基づいた学習や教育について、できるだけ正しい知識を普及させることに努めてきたのです。//

//本書を出版するにあたっては、OECDの担当の方々が大変な努力をされました。内容が脳科学から見ても、また、教育学からみても、できる限り正しいものであるように務めたのだす。そのために、世界の両分野の専門家をたびたびシンポジウムに招聘して、まず、本書の章立てや細目を決め、そして書かれた内容の確認を繰り返したのです。そして、最後にOECD加盟30か国の承認を得て、まず、英語とフランス語で出版されました。その意味でも、大変に多くの専門研究者の英知が集められています。本書をよく読みこんでみると、ずいぶん深く吟味されていることがおわかりになるかと思います。現時点での確かな脳科学を基盤に、多くの方々が「教育」や「保育」そして「育児」の分野に、脳の知識を役立ててくださることを、心から祈念しています。
 2010年10月 小泉英明//

養老孟司『子どもが心配』PHP新書 2022年
+〔対談〕小泉秀明×養老孟司
p111
小泉//邦訳版を監修したときに、「ニューロミソロジー」という言葉にぶつかったのです。
 どう訳せばいいものか、大変悩みました。「神経神話」とすべきか、「脳神話」とすべきか。結局、みなさんに「神経神話」がわかりやすくて良いと言っていただき、こちらの訳語を当てた、そんな経緯があります。//

2022.12.15記す

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