||||| 焼きいもとタヌキとアルコール |||

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 山陽電鉄東須磨駅から歩いて20分、市街地を抜けると六甲山系の須磨アルプスを源流として小さな川が流れている。その水は、いつの頃になるのだろう天皇が利用していたという。トンネルが建造されていて路面の中央を水が流れている。これは「水道」らしい。トンネルの西側には透明度の高い池があり名称を「天皇池」という。真偽を確かめていないが、史跡として立て札もある。下流部は須磨離宮公園である。公園指定の場所ではないが、「離宮」の里ということだろう。

 六甲山の水はプランドにもなっているほど、うまい水だ。六甲山系は、5年生のT君が関心をもっている岩石の花崗岩から成り立ち、花崗岩が砕けてできた砂質層から染み出てきている。先頃、砂防堰堤を越えたところ、清水の端(はた)でたき火をし、焼きいもをして楽しんだ。
 焼きいもをするにはオーブンに見立てて”予熱した場所”を作る。2,30分かけてたき火をしたあと、いよいよサツマイモを投入する。焼き上がるには最低でも30分かかる。熾火(おきび)になった上にイモを並べる。あるいは重ねても大丈夫。そして、イモの”上”で再びたき火をする。後半のたき火の燃え方が悪かった。結果、30分程度でよいのに1時間ほどかかった。
 おとなは焼きいもに、正確には「たき火に」夢中だったが、長靴をはいた幼児らはサカナとりに夢中。寒さに耐えて浅瀬でひっそりしていたところを、かわいい手がおそっていた。少年組は風化して砂質化した崖を登り、景色を楽しんでいた。火を囲み、あたりは野外探検の場所と化していた。

ここではなく明石川の堤防で、同じく死んでいたタヌキ 2022.10.4

「タヌキが死んでいる」と少年組から報せが入った。「シッポは? 縞模様?」「ちがう」と言う。縞模様ならアライグマだが、(だったら、タヌキか!)
 たくさんあった焼きいもをいただき、場所を離れようと行動を始めた。「そこっ!」と示されたところに”タヌキ”がいた。白くて鋭い歯をむいている。手が上に突き出ていたので、つかんで持ち上げた。小さいが、タヌキだった。なぜ死んだのだろうと二度三度手を持ちながら観察していたら、後方から濡れティッシュが渡された。
 腹のあたりが少々乱れていたので子どもには見せられないなあと思ったときに、ティッシュ。野外で動物の死骸に出会ったときは、しっかり観察するということが染みついていて私には自然な行いのつもりだったが、(きれいにしなさい)と言葉が飛んできた。今のご時世だから、アルコールだったかもしれない。冷たかった。と同時に、清浄感があった。絶妙なタイミングで心まで拭いた気分になった。
 幼児の年長さんだろう。誰かさんから、「なんで死んでたん?」と声をかけられた。「わからん」と応えるしかなかった。
 そういえば、つかまえられたサカナも横になっていた(ことを思い出した) ピクッと動いていたようでもあるので、死なずにすんだかな。
 時間を遡る。
 登山口、小さな川の砂州ではクレソンやセリが繁茂していて水面を隠していた。そこへ3歳の○○ちゃんが足を踏み入れた。ジャブンと片足をつけてしまったことは言うまでもない。瞬間、もう片方の足で態勢を立て直した。泣きっ面になってしまったが、これが離宮探検のスタートだった。
 期待しても、願っても、タヌキに出会うことはない。熱い焼きいもを手にし、崖を登り、タヌキに対面した。私は、冷たいテッシュで心洗われた。

2022.12.28記す

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