三令五申(さんれいごしん)。四字熟語カレンダーで見つけた。大切なことは三回命令し五回繰り返すということで、しつこく言うという意味だ。どういう脈絡を想定しているかで、場面の景色は大きく異なるだろう。少なくともトップダウンに違いない。
明石市の前市長、泉房穂氏は舌禍により退任を余儀なくされた。新市長・丸谷聡子氏はボトムアップを公約にあげた。トップダウンは必ずしも「一人」を意味しないが、ワンマンの誹(そし)り免れない。ボトムアップは多数の意思を想起させる。コミュニケーションにおけるパワーバランスを象徴させる言葉だ。
元滋賀県知事、現参議院議員の嘉田由紀子氏は丸谷氏に対し、「トップダウンとボトムアップの、両方が美味しい、「サンドイッチ型市政」を!!」とメッセージを送っている。民意を背景にしたトップダウンは必ずしも排除するものではないという意味だろう。
「説得」と「納得」の使われ方はどうだろう。
【説得】//自分の意志や主張を十分に・話し(伝え)て相手に納得させること。//
【納得】//他人の言行をよく理解し、もっともだと認めること。得心。//
(新明解国語辞典第三版より)
三令五申は説得に近い。同等かもしれない。
八ツ塚実さんには「納得は、相手の立場になり、どのようにすれば相手にわかってもらえるか工夫しようとしている」と対面で教えられた。辞典の意味に相当する。
さて、トップダウンに類する事象は珍しくないし、”上目線”は発信者の評価を下げていることが一般的といってよいだろう。対し「ボトムアップ」は聞こえがよい。そこで、ボトムアップの実践や実際について、考えてみたい。
乳幼児保育の現場では、人権という狭い意味ではなく、いのちや発達保障の観点から「主体性」を尊重した保育実践になっている。言語の発信者としても受信者としても、乳幼児は発達途上にあり十分でない。主体性を成立させるためにボトムアップが実際だ。虐待事例はトップダウン現象と言えるかもしれない。並ばせたり、待たせたり、ときには我慢させたりもトップダウンにならざるを得ないだろう。トップダウンが必ずしもよくないということではない。「非認知能力」の育ちにどう取り組むかという課題でもある。
乳幼児から離れて、小学生の低学年、高学年ではどうだろうか。中高生ではどうだろうか。子ども同士で相談しその合意や収まり方に添うことはボトムアップの範疇に入るだろう。18歳以上の学生や社会人ではどうなのか。障碍者などからだにハンディがある人たちの場合はどうなのか。性(LGBTQ+を含む)、職域、都市や農村など居住の地域や形態、高齢者、長期入院している患者、等々。それぞれのステージでボトムアップの方法や配慮は異なるだろう。アップダウンはベクトル幅は狭いが、ボトムアップのベクトル幅はきわめて広い。言うは易く行うは難し。アップダウンは権力者が自身のアタマで考え実行することでよいのだろうが、ボトムアップでは、民意の叡智をどのように表現させ集約するかという真価が問われる。
202.5.3記す