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デズモンド・モリス『裸のサル』
+ 動物学的人間像
+ THE NAKED APE by Desmind Morris 1967
++ 訳:日高敏隆
+ 角川文庫1979年

付録p10 角川文庫への収録にあたって 日高敏隆による
//山藤章二氏による、まさに人の意表をついた装幀には、訳者のぼくもあっと驚いた。//

p296 訳者あとがき 日高敏隆による
//なお、〔略〕を伊藤嘉昭、〔略〕を日高敏隆、〔略〕を今泉吉晴が訳した。したがって本書はこれら3名の共訳によるものであるが、最後に日高が全面的に手を加えた。その責任上、訳者は日高一人ということにしてあるが、この訳書の実現は、これら3名の協同の努力によるものである。//

p3
//この本は一般の人々むきに書かれたものである。だから、原論文の著書を本文中にいちいち引用することはやめた。それをすると文の流れが切れてしまうだろうし、またそれはもっと専門的な著作でやるべきことである。けれどこの本を仕上げるにあたっては、たくさんのすばらしく独創的な論文や著書を引用した。それらの貴重な助力に感謝のことばも述べないでおくのは誤りであろう。//
※ユニークな「謝辞」で本書は始められる。この書き出し以下に次の氏名の記載が含まれていた。コンラート・ローレンツ教授、マルコム・ライアル=ワトスン博士。
p4
//ここに名前をあげた方々は、必ずしもこの本で私の述べた見解に同意されているわけではないことをつけくわえておく。//

p23
//道具の使用から道具の製作までが次のステップであった。そしてこの発展と併行して、狩猟方法の改善が、武器の面だけについてでなく、社会的協力の面でもおこった。この狩猟性のヒトニザルは集団的狩猟者であった。そして狩りのテクニックが改良されるとともに、社会の組織化のやりかたも進歩した。群れをなすオオカミはえものを中心にして散開する。しかしこの狩猟性ヒトニザルは、すでにオオカミよりずっとよい脳をもっていて、この問題をグルーブのコミュニケーションと協力の問題へ変えてしまった。ますます複雑な策略が用いられるようになり、脳はどんどん発達した。//
※社会的協力……「つながる」ということだろう

p24
//本質的には、それはオスの狩猟集団であった。メスは子どもの世話に忙しすぎて、獲物を追い立てたり捕えたりする主役とはなりえなかった。//
p24
//狩猟性ヒトニザルは祖先たちのあてどもない流浪のやりかたを変えねばならなくなった。基地としての家が必要であった。そこは獲物をもって帰る場所であり、メスと子どもが分け前を待つ場所であった。//

ヒトニザル

p24
//だが、ここでわれわれはちょっと立ち止まらねばならない。生物学の領域からはずれて文化の領域にふみこもうとしているからだ。これらいくつかの進歩のステップが可能となった生物学的な基礎は、この狩猟性のヒトニザルの脳がそれにみあうだけ大きく複雑に発達したことにある。しかしそのステップの具体的なふみかたは、もう特異的な遺伝的支配の問題ではない。森林性〔※〕のサルは地上性のサルとなり、それが狩猟性のサルとなって、さらになわばりをもつサルとなり、そしてついに文化をもったサルとなった。//
※森林性のサル……チンパンジー、ゴリラ、テナガザル、オランウータン。ヒトニザル1つだけが地上におりた。(p20)
p20
//ヒトニザル──裸のサル──の祖先は、森林をとびだし、すでに十分に適応した地上生活者たちとの競争に身を投げだしたのである。それは危険な取引だった。しかし進化の成功という点では、利益をもたらした。//
p33
//大型のヒトニザル(ゴリラ、チンパンジー、およびオランウータン)//

p26
//一度峠をこすと、この動物は大きな進化のエネルギーをもってその新しい役へ一気に突入してゆくが、そのとき、それがもっていた古い形質の多くももちこまれてしまう。そして古い特徴を捨ててしまうには時間が足りず、一方新しい特徴は急速に身についてゆくのである。古代の魚がはじめて陸を征服したとき、新しい陸上生活の諸形質は急速に展開したけれども、かれらは水中での古い形質もひきずっていた。劇的に新しい動物のモデルが完成するまでに約百万年が必要であり、その先駆になる動物は普通、きわめて奇妙な混合なのだ。裸のサルもこのような混合物なのである。//
※約百万年回……100万年÷30年/世代>3万世代

p37 ここからしばしば「ネオテニー」にふれる

p46~ 「裸のサル」起源、多くの諸説が語られる

p57
//いまやここにおいて、直立し、狩りをし、武器をにない、なわばりをもち、ネオテニー的で、脳の発達した、そして霊長類の家系に生まれた食肉類の養子となったわが裸のサルが、世界を征服する準備はできた。//

p59~119 「第二章 セックス」
交尾(セックス)が極めて詳述される。動物的にはもちろん、今日的人間としての文化的・社会的にも。

p125
//乳房のデザインの機能は、母親としてのものであるよりも、まず第一に性的なものである。//

p133 チンパンジーの場合
//根気強い訓練はその後もつづけられたが、6歳(われわれの種ではかるく2000語をこえる頃)となっても、語彙は全部で7語をこえなかった。

p142
//前者の母親は、赤んぼうをあつかうときおどおどしていて神経質であり、不安気である。後者は慎重で落ち着いており、平静である。大切なのは、赤んぼうがこの感じやすい段階で、すでに触覚的な”安心”および”安全”と触覚的な”不安”および”危険”とのちがいをするどく認識していることである。//
p148
//母親の気分に関して赤んぼうをごまかすことはほとんど不可能である。ごく幼い人間は、母親の動揺や落ち着きという微妙な信号に対して、するどく反応するもののようである。//

2023.6.17記す

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