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加古里子『伝承遊び考 2 石けり遊び考』小峰書店 2007年

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//石けりの三要素として図形、イシ、跳躍をあげたが、これらの展開と場となる地面、大地を忘れてはならない。//

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//体育館の板張りの床面や石畳、あるいはアスファルトの路面など、特殊な時には使うかもしれないが、子どもたちの開放された遊びにおいては、第1章で述べたごとく地面をおいてほかに最適なものはない。しかもさして大きい広さを必要としない。//

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//通常5,6人から10人余の集まりで、4×6メートルほどの広さで十分である。要するに20~30平方メートル程度の大地に図形を描き、跳躍する遊びであるから、ひとり当たり3平方メートルの広さがあればよいのである。
 この広さは外遊びの中で、たとえば鬼遊びのひとり当たりの広さに比較すれば、はるかに狭い。石けりは、狭小の広さですむ、こぢんまりとした安上がりの外遊びということができる。
 逆に見るなら、第2章で見てきたごとく、石けりにおいて多くの図形を生み出してきたのは、狭い場しか与えられなかった日本の子の状況の反映なのかもしれない。
 その狭いいじらしい広さしか要しない石けりが、1970年以後次第に衰微していったのは、その広ささえ子どもの生活空間から失われていったためである。1980~90年の都市における児童公園、遊び場などの合計が600万平方メートルであり、対象の児童数約1000万人で割るならば、0.6平方メートル/人となる。それ以外に小さな遊び場としての空地があったはずなのだが、そうした子どもの生活に近い場所ほど、いちはやく駐車場、マンション、マーケットにかわり、前記の公園などがからくも残ったという訳である。//
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//あまり数字を並べるのを好まないが、この間、全国に1300ヵ所のゴルフ場が作られ、総計150万ヘクタールを占めていた。その時のゴルフ会員は1000万人(なんと前記の児童数と同じ!)ゆえ、それで割るならば150平方メートル/人となる。極限すれば、石けりの場はこうして大人たちのために蚕食された計算となる。
 冗談じゃない、ゴルフをやる者は相応の費用を負担しているのであって、子どもひとり3平方メートルの土地だって、金がかかるのだという経済論者もいることだろう。バブル期とよばれた狂乱土地高騰期の価格30万円/平方メートルを石けりの広さ3平方メートルに充当すれば90万円/人となる。それが確保できればひとりの子が約10年間(5~15歳)石けりを楽しめる。すなわち9万円/人年の出費である。ことのついでに申し添えるなら、前記のゴルフ会費は200万円以上、経費は10~20万円/人年となっている。//
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//何も一部の人のヒンシュクを買うため、いらざる数字を並べたのではない。「最愛のわが子」とか「希望の担い手」と称している子どもに対し、どの程度の金額と場所を与えていたのかを知ってほしいからである。お金と土地は経済の大切な指標であり、経済の動向いかんは、遊びどころか生活をおびやかす貧困に直結しているから、子どもの成長に不可欠な重要事項なのである。狭小な石けりの場所ひとつ不十分なのに、どうして生命や生活の基盤である経済を安定確保できるとうそぶくのであろうか。石けりができる場所、石けり遊びができる生活の有無は、貧困の脅威にさらされるか否かという経済のバロメーターとして、常に注視されなければならないのである。//

2023.8.29記す

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