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よく知られる漢字の、もとのかたち。漢字は、何か?

「流」から黄枠を取り出してみる。これを天地逆転すると「」になる。「」の漢字には「」が含まれている、ということだ。

「流」を逆さにすると、「子」は、もとにもどる。

これを「とつ」と読む。「育てる」の「」にも「とつ」がある。
」を逆さにした象形文字だ。
育は、「とつ」+「月」があわさってできている。「月」は部首の名前としては「にくづき(肉)」で「からだ」を表す。

 左は「いく」と読む。「」のもとの字。「」は母親の姿。その母親の後ろに、生まれ落ちる子どもを意味する。「」と「毓」は、子どもが生まれることを表し、どちらも「うむ、そだてる、そだつ」の意味がある。※白川静『常用字解 第二版』より。


 もう一度「」をみてみよう。象形文字の「子」が逆さで描かれていることは、もうわかるだろう。そこで、緑色で表した部分を考えてみる。これは、髪の毛。生まれおちるときも、流されるときも、子どもは逆さに表し、そこに髪の毛があるということだ。それも、「髪の乱れた」様子だ。生まれたときも、川に流されるときも、髪は「乱れている」というその象形になる。

 『常用字解』から「」の説明を以下に引用する。──古代には洪水で水が氾濫するとき、人の死体が流されることが多く、水死体がうつぶせに浮かぶことを(はん/うかぶ)、仰向けに浮かぶことを(はん/うかぶ)といい、水中に没している子を上から救おうとしている形がである。また古代には生まれた子を水に浮かべてみて、養うかどうかを決める習俗もあった。


保育」はどうか?

 素人目には、「」+「」は想像できる。ところが、白川静の説では、「褓」とある。「褓」を「むつき」と読む。生まれてきた子どもに着せる産着(うぶぎ)とある。象形文字「」の直下にある「」に似たかたちが褓を表すという。いくらなんでも「」を「むつき」と判じるのは素人にはわからない。人+子+「ノ:産着」ということだ。金文でみると、それらしい産着が描かれているように思える。『常用字解』の要点は次のとおりだ──祖先の霊をよりつかせる(乗り移らせる)ための衣であり、霊を守る衣でもあった。霊を守る儀礼をといい、「たもつ、霊をまもる、まもる、たすける、やすんずる」などの意味に用いる。
 ところで、抱いているのだろうか、おんぶしているのだろうか。おんぶしているようにみえるが、定かでない。「人」について「おんな」という先入観を排除するにしても、誰に背負われているのだろうか?

次の象形文字は、何に見える?

『常用字解』によると──妊娠して腹の大きな人を横から見た形で「身」となる。「孕」(はらむ)は大きな腹の中に子がいる形。「包」(つつむ)も腹の中に胎児のいる形。


 さて、授かった子どもに名前をつけるため、儀式をとりおこなうことになる。

 上(左)が「名」の象形文字。「夕」+「口」。赤色部分を「サイ」と読む。顔の一部分「くち」ではない。神への祈り文(祝詞/のりと)を入れる器の象形である。──子どもが生まれて一定期間すぎると、祖先を祭る廟(みたまや)に祭肉を供え、祝詞をあげて子どもの成長を告げる名という儀礼を行う。そのとき、名をつけたので、「な、なづける」の意味となる。(『常用字解』)
 「夕」は「祭肉を供え」とあるように、肉を表す。

※《夕方の暗やみで自分の名をなのる》と解説し、「名」のなりたちとする辞書は多いが、これは最早 誤りということになる。

そして、最後に……。

 「害」の旧字は、タテの線がもっと下に突き出て「口」まで達していた。神聖な器に刃先を突き立て、これを害した。は「害」の旧字だ。そして、象形はだ。「害」とは、そんなにも恐ろしい漢字だった。

2019.1.24記す

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