子どもの食感 ── 擬育29

 ふきのとうは苦い。どんなふうに料理しても苦い。ふき味噌も苦い。苦みがとれやすい天ぷらにしても苦い。苦みを楽しめないと、ふきのとうは美味しくない。春一番の味で、まだ寒気が残る頃に出てくる。春を待ち焦がれる気持ちが美味しいと思わせるのだろうか。地温は優に10度を超えていて、日照があれば20度を超えているかもしれない。
 ふきのとうはおとなの味だ。遊びで子どもに黙って渋柿を与えると、美味しいという子が現れる。二口、三口と進んでも食べ続ける(噛み続ける)。渋みが口内にまわっているだろうに、我慢しているのだろうか。表情が平気そうなときもある。渋みが張りついてえぐいことをおもしろいと感じ、美味しいと発するのだろうか。どうしようもなく不思議な場面に遭遇したことがある。渋柿の季節は寒くなく暖かい。
 子どもから菓子をもらうことがある。口内に拡がるのは真っ先に香料。次にいろんな味付けの甘み。苦みとは極にある味だ。子どもは慣れっこになっていても、ふきのとうのほうが楽しく味わえる。
 野外で味わえるもので、表情をまじえて「おいしい」と子どもが表現するのは〈水〉だ。夏だけでなく冬でも。「飲めるん?」と驚きの台詞も添える。疑問形の表現だが、自問であり感動の台詞でもある。
 2月23日に放送されたNHKスペシャル《食の起源・第5集「美食」》では、古代、人間が生き延びるため「苦み」を美味しく感じるようになったという。その食感は、信頼関係のある仲間で共有された。今日的には、学校の給食であり、家族の食卓であり、仲間との会食に相当する。
 絵本では、ホットケーキ、たまごやき、など食べることがテーマだ。馬場のぼる『11ぴきのねこ』で釣り上げたサカナをめぐるドラマがおもしろい。3歳児は食べることが最大の関心事だと、私は思っている。「苦み」が食感を高めるのであれば、ふきのとうは無理でも〈おいしい水〉に出会わせたい。

2020.2.28記す