自閉症スペクトラム障碍の子ども ── 擬育50

 ウタ・フリス(2003年)『新版 自閉症の謎を解き明かす』を読んだ。自閉症に関心があって読んだわけでなく〈心とは何か〉を考えているうちにこの本に辿りついた。自閉症の症状は様々なタイプがあって、知的な遅れが著しい重度から映画「レインマン」で主演ダスティン・ホフマンが演じた高機能障碍に至るまでその幅は広く、同じ障碍とは思えない。しかし、共通するのはコミュニケーションの障碍。〈心の共感〉が成立しない。自閉症は今日では「自閉症スペクトラム」と名称が変更されている。
 「生まれたときは普通だったのに……」と回顧する親は多いらしい。1歳前後になって少しおかしいかなと思っても個性と思い、2~3歳になって定型発達する子どもらとの違いを強く意識するようになるという。
 自閉症の原因はいまだにわかっていない。しかし、研究者のほとんどはなんらかの脳機能障碍をもって生まれたとしている。うぶごえをあげて生まれ、母を認め、周囲に関心があるかのようなまなざしを向ける。定型発達児は生後2、3年の間に言葉を飛躍的に覚え、行動範囲を広げてゆく。自閉症スペクトラムの子どもは、必要最小限の言葉に留まり、日常の変化についてゆけず、関心を示す態度は「こだわり」に見えてくる。
 自閉症スペクトラム障碍の子どもは、ほんとうに〈コミュニケーション〉がむずかしいのだろうか。〈心とは何か〉〈コミュニケーション〉とは何かに舞い戻る。
 自閉症とされる東田直樹さんを舞台(宝塚市のホール)で拝見したことがある。司会者と東田さんはコントのようなコミュニケーションを交わし、場内を沸かせた。笑い、驚き、感心・関心がうずまいた。場内からの質問を受けた。そのひとつ。「一番落ち着くところはどこですか?」「(自分の)部屋」。これは立派なコミュニケーションだ。
 2~3歳の判定を待たず、あるいは、そのような判定があったとしても、乳幼児期の発達に必要なことは、障碍があってもなくても、定型発達児と同じではないかと思う。そう思いたい自分がいるだけかもしれないが、野外活動の実践をともに体験して、それなりの発達を感じられるようになった子どもと出会ってきたことだけは確かだ。

2021.1.1記す