二択と三択と、三番目の選択肢

 どっち?──と、幼児にたずねる。石ころをてのひらに置き、サッと手で包んで隠す。すると、こんどは子どもが真似して実演。右手を差し出して「入っているか? 入ってないか?」と言えば、次には「入ってないか? 入っているか?」。答えは、前者が入っていて、後者は入っていない。食べもので「○○が好きか? 嫌いか?」と尋ねてくる場合も「○○が嫌いか? 好きか?」と尋ねてくることもある。答えは〈先〉にある。が、問いかけに真剣に対応して、〈先〉を返せば「正解!」とほめてくれる。〈後〉を返せばうれしそうに「はずれ!」と返される。およそ4歳は二択だ。
 ところが5歳になると「○○が嫌いか? 好きか?」を言わなくなるし、石ころを上手に隠せるようになる。騙している表情も巧みになる。

 孫に、遊びに行こう!と声かけして、すぐさまついてくるのは3歳。5歳は、すでに遊んでいることが終わってから、と言う。3歳は、行く・行かないの二択だが、5歳は三択になる。
 食卓で好きなものがあると、すぐ食べない。5歳になると、欲しいものをいつまでも目で追っている。これも、二択でなく〈あとで〉の選択肢が加わった〈三択〉だ。確かめたわけでないが、おそらく小学2年生までは同じ思考だろう。

 3年生以上になると〈あとで〉が複雑になる。〈なんでもいい/わからん/どっちでもいい〉に置き換わる。この状況は〈単純な三択〉でなく、三番目の選択肢が二択または三択になっている。
 4歳までは、わかりやすい。〈単純な三択〉も、わかりやすい。しかし、三番目の選択肢があいまいになると、あいまいの連鎖となる。心当たりのあるおとなは多いのではないか。アスリートやプロスポーツマンも三番目の選択肢はあるだろうが、そこに迷いがあると抜け出せなくなる。〈同調圧力〉が働く機構だろう。

 では、どうすればよいか。おとなになるということは、三番目の選択肢をもつことだろう。別な言い方をすれば〈つまずき〉を超える鍛錬が必要ということだ。〈単純な三択〉を獲得した幼児や小学低学年のあいだに、三番目の選択肢を立てる体験が繰り返し必要と言えないだろうか。

2021.4.15記す