「豊かさ」を問う 連続思考:目次

(18)右脳マインドと「豊かさ」

 //「あなたは、正しくありたいですか、それとも、幸せになりたいですか?」//と問うてくるのは、ジル・ボルト・テイラー『奇跡の脳』新潮文庫 2012年 p282。

 //右脳はとにかく、現在の瞬間の豊かさしか気にしません。それは人生と、自分にかかわるすべての人たち、そしてあらゆることへの感謝の気持ちでいっぱい。右脳は満ち足りて情け深く、慈(いつく)しみ深く上、いつまでも楽天的。右脳の人格にとっては、良い・悪い・正しい・間違いといった判断はありません。
 これを右脳マインドと呼ぶことにしましょう。ですから右脳マインドでは、あらゆることが相対的なつながりの中にあるのです。ありのままに物事を受け取り、今そこにあるものを事実として認めます。//p226

 脳科学者ジル・ボルト・テイラーは37歳のある日、脳卒中に襲われ左脳に損傷を受ける。患者本人でしかわかり得ないのが脳疾患であり、主訴を要領良く伝えられない。医師など医療従事者や介護者は観察者の立場を謙虚に受け止められるかどうかが肝要となる。左脳優位の科学者であった彼女は希有の両者を演じ、自著で右脳の働きに目覚めたことを記している。

 //「頭の中でほんの一歩踏み出せば、そこには心の平和がある。そこに近づくためには、いつも人を支配している左脳の声を黙らせるだけでいい」//p176

 脳は右と左で分離しているのでなくその境界部分にも機能があり、さらにはすべての人(人類)に共通でなく差異(例外)もあるらしい。脳は名称を与えられている領域に分かれて「責任領域」とされている部分が損傷を受けると回復は困難になるが、代償が可能とされている領域はリハビリによって回復が期待される。
 あかちゃんはどうやら右脳優位のようだと私は理解している。言語学者のノーム・チョムスキーは──//ドイツの乳児はドイツ語の抑揚で泣く。//──としている(『チョムスキー言語学講義:言語はいかにして進化したか』) 言語中枢は左脳にあるので、あかちゃんの左脳は機能しているといえる。脳は全体で有効に作用していると思う。
 動作や認識のしかたなど右脳優位で乳幼児は発達し、左脳あるいは脳全体で知的な活動を出現させていく。
 小学校に進み、できる/できないの評価が紐付き、右脳優位で成長し続けていたにもかかわらず、就学後、「左脳支配(優位ではなく)」となる。それをジルは「左脳の声を黙らせるだけでいい」と言う。「豊かさ」を脳で論じられるまでになった。

2022.9.16記す

目 次

  1. 3つのキーワード
  2. 「満たされる」という心持ち
  3. 敗戦後の子どもたち『きょうも生きて』
  4. 子どもの姿と公共 ──子ども文庫の歴史に学ぶ
  5. 詩:草野比佐男「村の女は眠れない」を読む
  6. 一本の棒が、子どもを目覚めさせる。
  7. 食と家庭の崩壊
  8. 大切と思われている「体験」について考える
  9. ある画伯の、赤ン坊のときの記憶
  10. 絵本『水たまりの王子さま』
  11. フランクルに学ぶ──危機における「こころ」
  12. イマジネーションが豊かさを支える
  13. バッドシステム
  14. 優先順位
  15. 失敗とつまずき
  16. ボランティア活動のすすめ
  17. ふるさと考
  18. 右脳マインドと「豊かさ」(上記このページ)
  19. 未定……10.1予定
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