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養老孟司『子どもが心配』PHP新書 2022年 p107~160
+ 第3章 子どもの脳についてわかったこと
+〔対談〕小泉秀明×養老孟司

p111
小泉//「人間には右脳人間と左脳人間がいる」とか「脳の基本的な能力は三歳までに決まってしまう」「私たちの脳は10%くらいしか使われていない」など、いずれも科学的根拠がまったくない、あるいは大きく誇張された「神経神話」です。//

p111 「私たちの脳は10%くらいしか使われていない」について
小泉//アインシュタインが、当時まだ進んでいなかった脳科学の実験結果を知って、そのように言ったことが世界中に広く伝わって生まれた言説です。今では、脳のほとんどの部分が、何らかの働きをしていることがわかっています。//

p135
小泉//寝ているときですら学んでいます。そのような睡眠学習の効果がきちんと証明されているのは、いまのところ新生児の段階だけ。うつらうつらとレム睡眠に近い状態のときも、どんどん学習していることがわかっています。//
※「新生児は生後4週間まで」ということを了解しておいた上で、寝かしつける環境はどうなのだろうか? 空調のよく効いた室内か、それとも、外気のあたる縁側(日陰)なのか、気になる。

p136
養老//保育園や幼稚園もきちんと筋の通った理論をもとに、しっかり考えないといけませんね。//

p143
小泉//仮想空間で過ごす時間が、現実空間よりも長くなってくると、仮想空間が、その人にとっては現実になってしまう可能性があって、「倫理」すら反転する可能性がないとは言えません。
 人間の脳は5億年、6億年、……もしかしたらもっと前から、「快」か「不快」かを一つのパラメーターにして、生存の方向を決めていたのではないかと考えています。その「快」のところに、これまで生物が生きてきた自然の環境にはない、人工的な快を加える、そこに本質があると思います。
 覚醒剤の場合も、ふつうは血液脳関門もそんな人工的な物質を通さないのに、なぜかスルリと通り抜けて、人工的に「快」をつくってしまう。しかも「快」は、本来食欲や性欲がもたらすそれのように、人間が生存するうえで繰り返し得られたほうが有利なものについて発生するものなので、習慣性が形成されてしまう。この問題は真剣に取り組まないと、大変な状況になっていく危険があると思いますね。//

p149
小泉//進化において最後に発達してきた前頭葉は働かず、もっと深いところにある原始的なところが働くとは、無念無想に近い状態ですね。//
養老//脳の場合は、「働く」ことだけが機能だと思いがちですが、「働かない」というのも機能である、ということですね。//
「なにもしない」授業と関係があるか?

p157
小泉//やはり教育の最終目標は子どもたちの幸せにあると確信を深めています。
 ただ「幸せ」という言葉自体の定義が、なかなか難しいですね。//

2022.11.5記す

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