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子育ての公理

1. 生命の維持
新生児および乳幼児が、生命を維持するには「食べる(授乳)・寝る・体温を保つ」の3つをすべて必要とする。

2. 保護の必要
新生児および乳幼児は、保護される環境を必要とする。その「保護」とは、前項の「生命の維持」に加え、静穏な環境の確保、排泄介助、事故防止、誘拐からの保護をいう。

3. 順序どおりに発育する
新生児および乳幼児の、発育は一定の順序どおりに進む。

※ 3項目セットで1つの公理とする。

 地球上、ヒトであれば、文明・貧富を超えて、あるいは過去、ヒトの歴史においても、子育てに必要なことでは、共通するものがあるのではないか。
 子育ては産み育てる側で使用する概念だが、生まれた子ども自身に視点を移せば、彼らにとって、少なくとも新生児の為すことは、ヒトであれば同じと考えてよいのではないか。

なぜ、「公理」というなじみにくい用語をつかうのか?

 出産は、本来、母子にとって危険な行為である。そして、幸いにも子どもが誕生し、育てる決意をすれば、次は「子育て」が待っている。
 「子育て」は、むずかしいものであろうか。そうではないだろう。
 多産多死という人類の軌跡に学ぶことはあるが、子どもが死ななくなって、少産少死になってしまうと、子育ての何が大事なのか、そういう原理がわからなくなってしまった。原理を確認しないままに子育てを進めようとするから、望むように進まないとき、子育てをむずかしいと思ってしまうのではないだろうか。
 考える起点を確認するため「公理」を立ててみた。

次に、「子育ての公理」に隣接することを2つ考えた。
生得的なこと遊びの必要

 本田和子『子ども100年のエポック』(2000年、フレーベル館)に多くを学んだ。感謝をもって本書をお勧めする。

「公理」とは?

 公理は主に数学で論理を証明するために使われる。証明するために必要な公理だが、前提とするその公理は「正しい」ものと仮定される。
 たとえば、細長い板を平らな面に固定するとき、釘を1本打てば、その釘を中心に板は回転する。釘をあと1本打つと、板切れは固定される。これは、2つの点を結べば、直線がひけるという公理の応用になる。

養老孟司『唯脳論』ちくま学芸文庫 p112
//どんなことを論じるにせよ、ものごとには前提というものがある。どこかから始めるしかない。幾何学だって、公理から始まる。//
//そんなことはわかり切ったことで、だから公理だと言う。//
p117
//「公理」、すなわち議論の余地なしに受け入れられる叙述を置かなければならない。//


(参考)
(1) 褐色脂肪細胞組織 BAT
(2) “どうぶつ”として生まれた & いのちのはじまり


仁志田博司『新生児学入門 第3版』p137

//奇行で有名な中世ドイツのフリードリッヒ大王は、子供がどのようにして言葉を覚えるかを知るため、乳児の捨て子を集め、全員に暖かい部屋、暖かい衣服、暖かい食事を与えるが、1つのグループの児には言葉をかけず(ということは、物のように扱う)、もう一方のグループの児には、言葉をかける(ということは、母親のようにやさしく接する)ように養育し、それらの2つのグループを何年間か観察した。当然のことながら、前者のグループの子供たちは言葉を全く話さなかったが、なんとそれだけではなく、全員数年以内に死亡したのである。このことは、小さな子供にとってやさしさは、暖かい衣服や食べ物以上に生きるために必要であることを示している。//

※「子育ての公理」を否定しているようでもあるので、記憶に留めておきたいと思った。
 母親のようにやさしく接することなく言葉かけをしなかったグループは数年後に全員が死亡したという。なんということだ!
 間主観性は、暖かい衣服や食べ物に等しく、幼い子どもには必須ということだろう。実際問題、フリードリッヒ大王は倫理違反であり虐待に相当する。「公理」に追加する必要はないだろう。「間主観性」の意味を問うエピソードである。

2023.4.15Rewrite
2016.5.15記す

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