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地球のはじまり、46億年前

 バージニア・リー・バートン『せいめいのれきし 改訂版』(岩波書店 2015年)によると、今より6600万年の昔、地球に小天体がぶつかった。小さいとはいえ直径は10kmを超えていた。メキシコの地上部に激突。土煙が地球を覆って太陽を隠し、気温がさがり、動植物の世界に大変動が起きた。恐竜は絶滅した。と、されていたが、近年の研究では一部が生き残りやがて鳥類になったという。
 うんと遡り ── 上p12 ※地球のはじまり
//46億年の昔、わたしたちの地球は、まっかにもえた火の球でした//

//ホームズとほかの人たちはさらに精密な測定を進め、46億年というひとつの年代に到達した。現在では、この地球の年齢が、一般的に信頼できるものとされている。//
ミヒャエル・ベントン『生命の歴史』(評論社 1990年)p9
※ホームズ……イギリスの地質学者

『自然の探究 中学理科3』教育出版 p115
//地球は約46億年前に誕生し、海はおそくとも40億年前に誕生し、最初の生命は約40億年前に海底の熱水が噴出しているところで誕生したと考えられています。現在のところ、最初の生命は単細胞生物であり、地球上の全ての生物の共通の共通の祖先であるといわれています。//
※最下段◎Aにつづく

いのちのはじまり、38億年前

 中村桂子は『いのちのひろがり』(福音館書店 2015年)で、いのちの初めを素敵に綴る。//あなたのはじまりは受精卵。それはお母さんの卵(らん)とお父さんの精子がいっしょになって生まれた、世界でたった一個の細胞です。// p6
 中村は、父母の人類史を遡り、ヒトのその前をひもとく。そして、植物からバクテリアへとたどりつき、//38億年前も前の大昔に生まれた一個の細胞です。// p9 と結ぶ。

 地球が誕生して46億年。巨大隕石の衝突で恐竜などが絶滅したのが6600万年前。上段バー右端◆印。ヒト誕生を紫色で示す。中段バーで、6600万年のうち1万年を表現することができない。三角形の頂点に相当し、それを100倍に広げて底辺とした。下段バーの右端黄色★印は人生100年を表す。

最初の哺乳類

ミヒャエル・ベントン『生命の歴史』
p54
//哺乳類は三畳紀に発生したが、恐竜時代はずっと小型動物として目立たないできた。白亜紀末に恐竜類が絶滅した後、初期の哺乳類が急激に発展できる条件が生まれた。//
三畳紀……2億4500万年~2億800万年前
白亜紀……1億4400万年~6500万年前
6500万年 / 6600万年前……地球に小天体がぶつかった(上述)

養老孟司『唯脳論』文庫 p194
//哺乳類はもともと薄暮に住んだ動物であって、それは昼間を恐竜に占拠されていたからである。//

爬虫類ではなく、両生類から哺乳類は現れた

およそ1万年前、わたしたち現代のヒトが現れた

現代の人類:ホモ・サピエンス ※♥
+ 最初のホモ・サピエンス(ネアンデルタール人の呼称) 25万年前
+ 初期の人類(真人類:ホモ・ハビリスほか)約200万年前
+ アウストラロピテクス類 300万年~100万年前
+ 直立歩行の能力 約400万年前
+ チンパンジーと人間との共通の祖先から分かれる 600万年前

『自然の探究 中学理科3』教育出版 p115
//人類が出現するのは新第三紀(2300~260万年前)で、約700万年前であるといわれています。続く第四紀(260万年前~現在)は人類の時代とよばれています。//

われわれは「動物」である デズモンド・モリス

※♥
//現代のホモ・サピエンスは、最初の、主としてアフリカでだが、ネアンデルタール人と同時代を生きていた。その後、ヨーロッパやアジアにひろがり、少しずつ、ネアンデルタール人と入れかわった。ホモ・サピエンスは、よりよい道具をつくり、すぐれた彫刻や絵画の証拠を残している。人類は3万3000年前までにはオーストラリアに入り、3万5000年前から1万1000年前の間に北アメリカへ住みついていた。
 約1万1000年前に氷河時代が終わると、まもなく、一部の人類は狩猟生活から農耕生活へ変わっていった。農夫たちは家屋や村落をつくり、部落間で物々交換が行われ、言語が発達した。文明がおこったのである。//
ミヒャエル・ベントン『生命の歴史』(評論社 1990年)p83

 空気を生む植物、植物を食糧とする草食動物、草食動物を食べる肉食動物など、地上や海では壮大なドラマが演じられ、DNAの更新が限りなく繰り返された。
 二足歩行し火をつかうヒト(ホモ・サピエンス)が現れた。ゴリラ、チンパンジー、ボノボはヒトに近い〔♠〕とされる。いきもののそれぞれに近縁種があり、種は異なっても連続し関係し合っている。いきものが織りなす生態を記録した映像ドキュメントは、その不思議を絶妙なしくみで、わたしたちを魅了させる。
 わたしたち人間が想像できる時間の長さとはどれくらいだろうか。ヒトの歴史を遡ってもせいぜい1万年だ。

♠ ヒトに近い……DNAを比較すると、ゴリラ・チンパンジー・ボノボと、人間とでは98%以上同じ。科学そして事実に基づいたフィクション『ボノボとともに 密林の闇をこえて』(エリット・シュレーファー作、福音館書店、2016年)を優れた読み物としてお勧めします。

福岡伸一『動的平衡』p221
//ヒトの起源については、これまでさまざまな説があった。そして、現在もさまざまな説がある。これはどんな特徴をもってヒトと定義するかにもよるので、きわめて大きな幅があるし、どれが間違いで、どれが正しいと判定することはできない。//

ジュリアン・ジェインズ『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』紀伊國屋書店 2005年
p160
//言語は人間なるものの本質的な部分なので、その由来は人類の歴史をさかのぼり、まさにヒト属の起源、つまり約200万年前までたどれるに違いないと一般には考えられている。知人の言語学者はみな、これが真実だと私を説得したがる。しかし、この見解には断固として反対したい。人類の祖先がこの200万年を通して、原始的とはいえ話し言葉を持っていたとしたら、素朴な文化や技術さえ存在した証拠がほとんど見つからないのはなぜだろうか。紀元前4万年までは、きわめて粗末な石器以外、考古学的遺跡はほとんど何もないのだ。//

ホモ・サピエンスとネアンデルタール人との差異について

養老孟司『唯脳論』ちくま学芸文庫 p146
//ホモ・サピエンスは、さまざまなシンボル脳力を用いる点で、それ以前のヒト属、たとえばネアンデルタール人とは、いささか異なるように思える。//……//このところ数万年、ヒトはさして変っていない。それがホモ・サピエンスという種名が成立する理由である。//

「かわいい」と思わせる能力

 いのちの連鎖、紆余曲折いろいろあって、地球上どこでもヒトが子孫をのこす行為は同じだ。結果、生まれ出たあかちゃんは「おぎゃー」(日本人の表現)と、うぶごえを発する。母の胎内から、光と空気に満ちた世界へ移動した。霊長類ヒト科に属する動物の誕生だ。おめでとう。
 人間のあかちゃんはすぐに歩けないけれど、それにはわけがある。1年後に歩けることから、「1年早くうまれた早産」(アドルフ・ポルトマン〔♣〕)ともいわれるが、だからといって何もできないのではない。

 あかちゃんはかわいい。「かわいい」と思うのは、あかちゃんを見守る周囲の目だ。つまり、自らを「かわいい」と思わせて保護を受ける能力をあかちゃんはもっている。動物行動学者コンラート=ローレンツはこれを〈ベビーシュマ〉と名づけた。
 オキシトシンというホルモンが、母の体内に増えるという。育児に熱心な男にもオキシトシンが増えるらしい。オキシトシンを「幸せホルモン」とあだ名する学者もいる。このオキシトシンも「かわいい」という心情の原因になるらしい。

♣ アドルフ・ポルトマン(1897-1982)……スイスの動物学者。『人間はどこまで動物か』岩波新書1961年。

ヒトだけが発する「うぶごえ」

 うぶごえを発するメカニズムは次のとおりだ。胎内では、肺は羊水で満たされている。産道をとおるとき、肺が圧迫され羊水が排出される。代わりに空気が入る。これによって、うぶごえが出る。では、人間と同じ哺乳動物の、犬や猫ではどうか。牛の牧場主にたずねると、産まれ出てくるとき口から大量の羊水は出てくるが、うぶごえを聞いたことがないと話す。では、人間の場合、なぜ、うぶごえを出すのだろう。
 うぶごえを聞いたおとなは、あかちゃんが「ないた」と表現する。しかし、新生児の「なき(泣き)」には涙が伴っていない。大粒の涙を流すのはもう少しあとのことだ。あかちゃんが「ないたら」、おなかがすいたのか、おむつをかえてほしいのか、だっこしてほしいのか、おとなは想像するほかない。呼気とともに鳴動しているにすぎない音がやがて言葉を発することになる。

新生児は映像ライブラリーの仲間入り

 うまれたばかりのあかちゃんは光を感じることがやっとで、視力といえるほどのものはない。乳腺フェロモンを嗅覚としてかぎわけ、おっぱいにたどりつくらしい。あかちゃんは自らの五感をフル動員して生きる。
 あかちゃんは何もできないのではなく、周囲の関心を自分に寄せる優れた能力をもっている。地球上のいきものが映像ドキュメントでみせるように、人間の新生児も映像ライブラリーの仲間に入れられるべき進化を遂げているのだ。
 かくして人間は”どうぶつ”として生まれた。その”どうぶつ”が二足で立ち「考える」ときが1年後にやってくる。”どうぶつ”から”にんげん”に変身し、才気をさらにみがく。

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玉川百科こども博物誌 監修/小原芳明 全12巻の一冊

『地球と生命のれきし』ISBN 978-4-472-05978-0
編:大島光春・山下浩之 絵:いたやさとし 玉川大学出版部 2019年

p52
//生命ってなんだろう//
※「生きもの」と「生命(せいめい)」を区別した上で──
p52
//生きものとはなにか、なら答えがある。//
1)外の世界と区別ができる体がある。
2)外から栄養をとりいれてエネルギーをつくる。
3)こどもをのこす。
4)進化する。

「生命」×「生きもの」──ちがう らしい?!

p52
//でも、生命となるとむずかしい。//
p52
//NASA(アメリカ航空宇宙局)では、つぎのふたつが生命の条件だと考えられているようだ。//
1)進化する。
2)エネルギーをつかって自分をたもつことができる。

p53
//生命の材料はいん石にふくまれていたとか、深海の熱水がふきだすところで発生したとかいわれるが、まだわかっていない。//
p54
//地球がうまれたとき、地表の空気の99パーセントは二酸化炭素だった。二酸化炭素は水にとけやすいので、地球にできたばかりの海のなかにもたくさんふくまれていたはずだ。//
//シアノバクテリアは日の光をあびると、海のなかの二酸化炭素をすって酸素をだすという「光合成」をした。そうして、海からはどんどん二酸化炭素がへり、外の空気のなかにも酸素がふえていった。//
p55
//シアノバクテリアは、いまも海の底で成長をつづけている。//
//ストロマトライトは、27億~20億年まえの地層でよく見られるので、この時代にとくに酸素がつくられていたことがわかる。//
ストロマトライトは成長の過程でバウムクーヘンのような層をつくり岩石になっていて、その痕跡をオーストラリアの海で確かめることができる。
……など、簡単には かたづかない。

『自然の探究 中学理科3』教育出版 p115
◎A(上段を受けてつづく)
//この単細胞生物が進化し、27億年前までには光合成を行う単細胞生物(シアノバクテリア)が、15億年前までには多細胞生物が出現していたと推定されています。//

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戸田盛和『エントロピーのめがね』岩波書店 1987年
p128
//地球上の生命がどのように始まったかはよくわかっていない。地球外からやってきたという説もあるが、地球上で生命が発生したとすれば、始めそれは極めて簡単な構造のものであっただろう。一説によれば、原始の地球では太陽熱、紫外線、地熱、空中の放電などによって種々の化学反応が起こり、簡単なアミノ酸などを含む種々の化合物ができ、原始の海はこのため栄養価の高いスープのようになったといわれている。そして化学反応によって自己増殖をする分子ができたのであろう。これは今の生物で遺伝情報を伝える核酸、DNAかRNAに似たものであっただろう。オパーリンがいうように油滴のようなものに包まれて栄養をとり入れたり、いらない物質を排出したりし、保護されていたかも知れない。とにかく原始生物は30億年以上前に存在していたらしい。そのような古い生物の遺した痕跡が見出されるのだそうである。この原始生物は酸素なしに暮す生物(嫌気性生物)であった。その頃、大気中には酸素がなかったばかりでなく、後に酸素から生じ紫外線を遮断してくれるようになったオゾンもなかったので、原始生物は有害な紫外線の到達しない水中で生活し、陸上へ上ることはできなかった。
 そのうちに太陽の光を利用し、水と二酸化炭素から糖をつくる葉緑体をそなえた光合成生物ができ、その代表であるラン藻が栄えて水圏をおおった。その後10億年以上を経て多細胞生物ができ、爆発的に種が多様化するにいたったのである。
 こうして生命発生後に大気中に蓄積された酸素から空中の放電によってオゾンが生じると、これが生物に有害な紫外線を吸収してくれるので、陸上にも生物が上陸し、生物は全地球表面をおおうようになった。そればかりでなく、生物は選択的に元素を取り込むことによって、海中や大気中の元素の分布を変える役目をしたり、長年の間に海底に生物が堆積して大きな鉱脈をつくったりする。地表の草木が地表の様子を長年の間に大きく変えることは容易に想像できることである。//
p130
//目に見えない生物は無数にいる。空中に飛んでいるバクテリア、人間の中に寄生して人間を助けている大腸菌など、あるいはワイン、ビール、ヨーグルト、チーズ、みそ、納豆などの製造に役立っている多種類の酵母菌、あるいは海水の無数の動物性および植物性のプランクトンなども、魚のえさになって、われわれ人間の生活を間接的に支えてくれている。
 こうして地球上には無数の生物がいて、地球の歴史に参画し、地球の自然環境を形成している。この環境は生物の単なる寄せ集めではなく、単一の有機体として生きている地球を形成しているわけである。個々の生物の生命がそれを組織する細胞やその中に寄生する微小生物によって支えられているように地球という一つの生命が大気や海と無数の生物のバランスによって支えられているのである。太陽系の中でこのような惑星は地球以外にはない。//
p133
//生物の進化にしても、強い個体が生き残るというよりも、多くの種類の生物がたがいに影響し合う共存の結果、生物圏がある方向へ動いていくのが進化であるといった方がいいだろう。
 太陽のエネルギーを受けて組織をつくり、エントロピーを宇宙空間へすてて30億年以上ゆっくりと進化をとげてきた生物圏は、人類の出現によってそれまでと全く異なる状態に入った。人類は、森を焼いたり木を切り倒して畠を作ったり牧畜をしたりして、自然を大きく変化させはじめた。人間以外の動物は必要な食物だけをとり、あるいは小さな備蓄をするだけで満足する。猛獣も弱い動物を必要なだけしか殺したりしない。これに対し人間はさしあたって必要な食物ばかりでなく、冬を越し、あるいは何年にもわたって生活を支えるための増産と備蓄をしようと努力する。またそれが確保されなければ隣人のものをとったり、戦いによって強奪しようとする。人間は将来を予想し将来に備える能力において他の動物よりもはるかにすぐれている。これが人類の成功の原因の一つであるが、この能力は同時に貪欲さと猜疑心を大きく発達させてしまった。この傾向は最近急激に強められて、生物圏を破綻へと追いつめる心配が現われてきている。
 この破綻はこれから考察するようにいろいろの方面からくるであろうが、その一つは森林の伐採、海洋の汚染が大規模になってきていることによる植物圏の弱化であろう。現在では毎年、日本の面積の半分ぐらいの森林が伐採され、あるいは焼却されて、地球上から姿を消している。地球の陸地の全面積に比べて日本の面積は約0.3パーセントであるが、その三分の一ぐらいが森林であるというから、今の速さで森林がなくなっていく状況が続くと、約200年もたつと地球の陸地の全部が森林のないまる裸の状態になってしまうことになる。これはおそろしい変貌である。//

参考
1. いのちが生まれた海、潮だまり
2. オキシトシン(幸せホルモン)
3. 三木成夫〈いのち〉の世界

2024.9.17Rewrite
2017.6.4記す

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