||||| 3歳A子の物語 |||

Home > tide pool 潮だまり ||| Back |||||| |||||| Next |||

 3歳の子どもは、どれほどの距離を歩く意思と体力があるのだろう。わたしは500メートルを目安にしている。おそらく多くは、これほどまで歩かない。おとな(親)に連れられて出かけるとき、自身が歩かない(歩けない)のでなく、おとなが気遣って手助けするからだ。実際のところ、どれほどに歩けるものか、試すところまで実行していない。
 あかちゃんが寝返りし、這い這いし、つかまり立つ。こけながらもひとり歩きが始まる。ふらついても、しりもちをつくか、手が出る。生まれて1年余りのこの劇的成長は金メダル級だ。でも、立ち上がってしまうと、日々の忙しさに追われ、気にとめる間がない。3歳にもなるとベビーカーは必要ない。だが、子どもと連れだって用事をするとき、「おとな」にベビーカーは便利だ。500メートルを自分の足で連続して歩き続けられるかどうかは、おうちの事情で違う。そして、当の子ども自身、ベビーカーを頼りにしているかどうかも、おとなの事情が作用して、結果子どもの意思と体力はわからないまま。

 森林植物園の園内を通らないでその東側に400段超えの階段道がある。ドライブウェイから離れて一気に谷底まで下りる。サワガニがいっぱいいるせせらぎを数回じぐざぐに渡り、つぎに、徳川道の名がつけられた起伏の少ない山道を歩き、そして、摩耶山頂をめざす。3歳9か月のA子は、ご両親、1年生の姉、姉の友達5人らと歩いた。去る9月17日のこと。
 身の丈を超える段差や川渡りはパパに抱っこしてもらったが、難所がすぎれば、歩いている。4時間ほどの道のりを、ともに歩きながら、ずいぶん考えさせられた。途中、両手をひろげ、抱っこをせびっているのだろうと思わせるときもあった。身ぶりだけで声はなかった。わたしだったら、あっさり抱いてしまうところ。我慢しているふうでなく、気をとりなおしてか、再び歩いている。リュックを背負っていてママに何が入ってるの?と訊ねると「お弁当だけ」と話していた。

 前年の二歳児クラスでは自己主張をするフツーの子だったらしい。スーパー幼児は、この日だけかもしれない。おそらくそうだろうと思う。体験はそれなりに資源となり、《「やりたい」気持ちを支える意欲》を持ち続けることになるのだろう。過去に2キロを歩いた3歳児に出会ったことがある。〈A子はなぜ歩けたのか?〉 とても不思議で、6日後にこんどは単独で同じコースを歩きながら考えた。抱き上げなかったご両親もすごい。これもナゾ。3歳児は、2キロは確実でそれ以上歩けるだけの意思と体力はある、という事例になった。

2023.10.15記す

© 2024 ||||| YAMADA,Toshiyuki |||, All rights reserved.