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/こころはどこにある?/ の問いをたどる

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山鳥重『心は何でできているのか』角川書店 2011年

新明解国語辞典第三版をひくと、
+ 反射://意識や意志とは無関係に起こる、生理的な反応。//
+ 本能://動物が、教えられたのではなく、生まれつき持っている性質・能力。//

p168
//反射の特徴は、その発現に際し、誘発する刺激が、身体局所に限定的な変化であること、誘発される運動は部分的なもので、全身のまとまった動きではないこと、それに意識(あるいは意志)が関与しないことです。//
p169
//最近はあまり本能などという言い方はしないようになっていますが、もともと遺伝的に中枢神経系に組み込まれており、新しく学習することなく実現される、からだ全体を巻き込んだ動きです。//

さらに……
p168
//医学で反射と呼ばれている感覚─運動反応には、こころは介在しないようです。感覚入力─運動出力の回路だけで実現できるのが特徴です。// 「○○反射」と命名されている事例(腱反射、膝蓋腱(しつがいけん)反射:叩かれた下肢がピョンと跳ね上がる、筋伸長反射、対光反射、嚥下反射、あくび反射、咳漱(がいそう)反射、排便反射、排尿反射など)を列挙したあと
p168
//ちなみに、ある医学辞書の反射の項目を数えてみようとしたのですが、200くらいでいやになってやめてしまいました。それほど多いのです。//
p169
//本能行動の特徴は、運動がからだの局所に限定したものでなく、多かれ少なかれ、全身を巻き込んだものであることと、その背景にこころの動きが存在することです。//

本能行動の特徴

p170
//どのような行動を起こそうとしているのか、予め(あらかじめ)本人には〔本能行動を〕予測できないことです。動きが自動的に始まり、自動的に程度を強めます。結果的にどのような運動パターンになるのかを予め本人が知っていて、運動が始まるわけではありません。つまり、こころが制御できる運動ではないのです。
 その運動パターンを実現するための運動プログラムは、生まれる前から、もう中枢神経系に作り上げられており、そのプログラムが勝手に動き出すのです。

p170 そして……ここからが興味あり
//こころの動きが先に始まって行動を誘発するのか、〔それとも逆で〕行動が誘発された結果、こころの動きが経験されるようになるのかははっきりしません。これは、心理学で有名な、泣くから悲しいのか、悲しいから泣くのか、という論争ですが、この議論はある意味不毛です。わたしの立場からしますと、感情と行動は同時に生起しているのです。//
p172
//強調したいのは、意志は感情は制御できないが、心像は制御できるという点です。逆にいいますと、こころに運動心像が成立して初めて、運動制御という意志のはたらきが可能になるのだと、わたしは考えています。// p171~172において、あかちゃんのような「泣き」は明らか本能行動だが、おとなになって「泣くまい」とする意志がはたらき、泣くという運動を制御するというくだりがある。

三木成夫『胎児の世界 人類の生命記憶』1983年 中公新書 p4-5

(下部の後尾を受けて→)//いわゆる「記憶の遺伝」です。俗にいう「本能」も、このメカニズムなしにはとうてい考えることはできません。//
//それは、30億年もまえの”原初の生命球”の誕生した太古のむかしから、そのからだのなかに次から次へとり込まれ蓄えながら蜿蜒(えんえん)と受け継がれてきたものであります。現代の生物学はこの問題に肉薄していますが、近づけば近づくほどに遠ざかるという感じもいたします。しかしそれは、まず間違いなく、このからだをつくる一つ一つの細胞のなかに厖大な量が巧みに封じ込められ、代から代へと確実に伝えられているのでしょう。いわゆる「記憶の遺伝」です。//(上部→冒頭に続く)

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//「本能」とは、以上の様な総ての生物が生れ乍らにして持っている「記憶」の性能に由来した、それは生命の根原的な機能を言ったものである// 三木成夫『人間生命の誕生』築地書館 1996年 p201
※この引用に限らず、三木成夫の著書には、三木流の「記憶」が頻繁に登場する。「憶」の語源を根拠にして肉体に刻印されたものが「憶」である、という。語源の典拠は説文解字だが、白川静によって説文解字の信憑性は著しく失われている。このことは棚に上げても、肉体(細胞原形質)に記憶されるという三木成夫説を俄に受け入れるには抵抗がある。

 三木成夫説は《個体発生は系統発生を繰り返す》を想起させるものがあるが、今日では否定されている、ということだ

2022.12.7記す

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