||||| オキシトシン(幸せホルモン)|||

Home > 砂をすくうように > 「脳」を学ぶ(脳楽部)

//寺田清美委員(東京成徳短期大学教授)は、「オキシトシン(幸せホルモン)の量とその受容体の量は1歳のころに決まる。この時期を丁寧に保育することが大事」として乳児保育の重要性を指摘した。//「遊育」2016年第2号(1月25日号)p6

//オキシトシンは、脳の視床下部という場所で作られ、母乳を出やすくしたり分娩時に陣痛を促進したりするホルモンとして働きます。//開一夫『赤ちゃんの不思議』岩波新書 2011年 p162

//オキシトシンは女性に特有の物質という訳ではありません。男性にもしっかり存在しており、「共感」や「信頼」との関連性を示唆するデータもあります。//同p162

(参考)“どうぶつ”として生まれた & いのちのはじまり

マシュー・リーバーマン『21世紀の脳科学』p95
//相手が赤の他人で、自分には何の物資的見返りもないとわかっていても、他者を助けたくなるのはなぜだろう? 純粋に利他的な感情をどう説明すればいいのだろうか? その答えは、オキシトシンの働きと関係がある。//

p95
//哺乳類の母親は、子を産むとすぐに子育てモードに切り替わる。ラットは子が生まれてほんの数日で、ヒツジはたった2時間で子との関係を深める。人間は我が子が生まれる何ヵ月も前からきずなを結びはじめる。この時、重要な役割を果たすのが、オキシトシンと呼ばれる神経ペプチド(脳の神経末端から分泌されるアミノ酸結合体)だ。オキシトシンは子宮を収縮させて出産を促し、母乳の分泌を促す働きがある。また脳の報酬系でも働いて、「我が子のそばにいて世話をし、幸せにしてやりたい」という気持ちを促す。しかも本来なら、苦しんでいる相手に近づく際に私たちが感じる戸惑いや不快感も軽減してくれるのだ。//

p96
//2種類の社会的報酬──「人から好意を持たれる時」と「相手の世話をする時」──には、それぞれ脳の違うプロセスが関係しているのだ。人から好意を持たれる時には、オピオイドによって”快”の情動が生まれる。一方、相手の世話をする時には、快感物質であるドーパミンの放出に伴ってオキシトシンが分泌される。私たちがチョコバーに手を伸ばすのは、それを食べればおいしいと感じるシグナルを、ドーパミンが脳に送るからである。//

p96
//哺乳類の脳は見知らぬ相手との接近を嫌がる。その相手が脅威をもたらす可能性が高いからだ。そして、生まれたばかりの子ラットは親にとってまさに見知らぬ存在である。母ラットにとって我が子は避けるべき相手であると同時に、近づいて世話をしてやらなければ生き残れない大切な子でもある。哺乳類はそのような厄介なジレンマに陥る。そこで、知らない相手を避けるという自己防衛本能を克服するためにオキシトシンが働き、哺乳類は我が子のそばに近づいて世話をしてやれるのである。
 オキシトシンは、愛情を育み、信頼感を生むという作用から、「催淫剤」や「信頼ホルモン」とも呼ばれる。//

p98
//誰かが血まみれで倒れている時に脳の報酬系を活性化させ、私たちが戸惑いや不快感を抑えて相手の元に駆け寄れるのは、オキシトシンの働きのおかげなのである。//
※乗り物酔いで他者が吐いた汚物を処理し看護(介護)できるのもオキシトシンの働きということだな。

p98 //「世話」と「攻撃性」という二面性//
//同じ哺乳類でも霊長類かそうでないかで、オキシトシンは見知らぬ相手に対して正反対の作用を及ぼす。霊長類でない場合、オキシトシンの分泌量が増えると、見知らぬ相手に対する攻撃性が増す。未知の脅威から我が子を守るという意味で言えば、それも納得がいく話だろう。たとえばヒツジの母親は、乳を求めて近づいてくる、よその赤ちゃんヒツジを追いやる。ところがオキシトシンの分泌を妨げておくと、母ヒツジはよその赤ちゃんヒツジにも乳をやるようになる。つまり霊長類以外の哺乳類では、オキシトシンは子の世話を促すとともに、見知らぬ相手や敵から我が子を守る働きを持つ。それによって、母親は限られた資源を我が子に集中して投資し、自己の遺伝子を次の世代へと伝えるのだ。//
p98
//「世話」と「攻撃性」というオキシトシンのふたつの働きは、人間の場合にも見られる。オキシトシンを投与すると、囚人のジレンマのような行動経済学のゲームに参加する時に気前が良くなる反面、人種の違うプレイヤーに対しては攻撃的になりやすい。
 このようにオキシトシンは、自分が属する内集団のメンバーをひいきにし、”よそもの”である外集団のメンバーに対する敵意を促す。だが霊長類かそれ以外の哺乳類かによって、どこまでが味方で、どこからが敵かを分ける境界線は大きく異なる。霊長類以外の哺乳類では、オキシトシンが働くと、内集団以外の相手をすべて潜在的な脅威と見なし、その敵に対して攻撃的な態度を取る。//
p99
//一方、人間の場合には、相手を少なくとも次の3つのカテゴリーに分ける──「好きな集団のメンバー」「嫌いな集団のメンバー」「どちらに属しているかわからない、見知らぬ相手」。オキシトシンを投与すると、好きな集団のメンバーには親切にする傾向が強まり、嫌いな集団のメンバーに対しては敵意が強まった。それでは、見知らぬ相手に対しては? 好きなメンバーの場合と同様に、親切にする傾向が見られたのである。//

2023.3.1Rewrite
2016.6.26記す

© 2024 ||||| YAMADA,Toshiyuki |||, All rights reserved.