||||| ムクロジと青木敬介さん |||

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 ムクロジという名の木に出会ったのは、青木敬介さんが住職を務める播磨灘に面するお寺でのこと。黒い実をてのひらに乗せ「なんでしょう?」と見せてくれた。20代半ばのころ。
 堅そうな丸い実。「はねつき」とヒントをくれた。パンパンと音がする羽根つきだ! 足もとにいっぱい黒い実が落ちていた。髪は多くて、住職の衣装を着ている姿を見たことがなかった。しばしば出会っていて、若かったわたしにいろいろ声かけしてくれていた。

 「播磨灘を守る会」(別のリンク)を結成しその代表をしていた。播磨灘は水産資源の場所として貴重だった(今も)。獲ったサカナを生け簀(いけす)に入れる。水揚げで陸に向かうとき、海水を取り入れている「栓(せん)」を閉じる。サカナが弱るからだ。栓を閉じる境は「いけまへいすいせん」と名がつけられていた。それほどに汚染されていた。
 漁民の集まりで、ひととおり日程を終え、「ご苦労様」と”手土産”を用意していた。そこに合成洗剤の箱が積まれていた。(話を聞いてなかったのか!)と叱りの声が飛び交った。笑いながら、それほどに暮らしが変わってきていると話してくれた。
 住職だが、青木敬介さんは中学校の国語教師で詩人でもあった。「VIKING」同人でもあった。VIKINGを知ったのは青木敬介さんに学んだからだ。そして、「いのちのさかだる」にも出会うことになる。

 落語家の声で「むくろじ」が聞こえてきた。(へえっー、ムクロジがネタになっている)。それで、青木敬介さんを思い出した。
 パソコンで ムクロジを検索した。//羽根突きの謂われの1つに、トンボに似た羽根を飛ばすことで、蚊などの害虫を駆除するというものがあります。大きなムクロジの種は、さながら大きな目玉を持つトンボの頭というところでしょうか。//
 過日、授業で「オニヤンマをアタマにつけていたら蚊にさされないってホントですか?」と訊かれた。質問の意味が、わたしにはサッパリわからなかった。「えっ? なんのこと?」 しどろもどろに応えて一蹴した。(ああ、このことか……と思った)

 //ムクロジの実は昔の石鹸として、灯明の煤の汚れを洗ったり、洗髪に使ったり、身近な生活用品として使われていたのです。//
 この石鹸を落語で話していた。
 脱線するが、ムクロジを説いているこのwebサイトの主は文章がうまい。たくさんの植物の説明がしてある。調べてみると、東京学芸大学のおそらく植物の先生だろう。
 VIKINGの主宰は富士正晴で「竹やぶの仙人」と言われていた。いくらでも脱線しそうだが、ムクロジに出会いたくなった。「いのちのさかだる」も、青木敬介さんのユーモアも、富士正晴に学ぶところがあったからだろう。

 2023.5.15記す

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