|||||「感覚も立派な感情」とする山鳥重 |||

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「五感」について、生理学的な説明+6つめの感覚 p126

  1. 視覚……//眼の網膜が受容する//
    • 視覚的経験……//見えている・見えていないという感情//
  2. 聴覚……//内耳の蝸牛管(かぎゅうかん)が受容する//
    • 聴覚的経験……//聞こえている・聞こえていないという感情//
  3. 嗅覚……//鼻腔(びくう)内面の嗅(きゅう)粘膜が受容する//
    • 嗅覚的経験……//匂う・匂わないという感情//
  4. 味覚……//舌や舌近傍の味蕾が受容する//
    • 味覚的経験……//味がある・味がないという感情//
  5. 体性感覚(触覚)……//身体全領域の皮膚に分布する皮膚感覚器官が受容する触覚温度覚振動覚など//
  6. 6つめの感覚……//関節に備わっている受容器が感じる運動や位置の感覚//
    • 運動覚的経験……//(からだの一部、あるいは全身が)動いている・動いていないという感情//

p127
//これらはすべて独特の感じです。このような、異なった感覚受容器に由来する、それぞれ独特の性質を持つ感情を、神経処理様式特異性感情とか、感覚様式特異性感情と呼ぶこともできますが、いかにも長たらしいので、感覚性感情としました。//

情動性感情と②感覚性感情

p125
//情動性感情がもっとも分かり易い感情ですが、感情はこれだけではありません。//
※「情動性感情」とは……喜怒哀楽などのこと。

p126
//別の大きな感情があります。感覚性感情です。感覚性感情というのは、わたし〔山鳥重〕の造語で、普通は単に感覚と呼ばれています。//
p126
//感覚は外在世界の事物や出来事を知覚し、理解するための土台ですので、普通、神経生理学や心理学では、知覚の神経メカニズムの考察に隠れてしまい、知覚の入り口のように扱われて軽視されていますが、感覚も立派な感情です。感覚の感情性(?)を強調する意味もあって、感覚性感情という、少しくどい表現を使うことにしています。//
p126
//知情意論のパイオニア、ベインは「感覚は、厳密な意味では、心理的印象であり、感情であり、意識の状態である」といい、感覚を感情の1つと考えています。その通りです。スペンサーも、同じく感覚を感情に分類しています。正確には「身体末端に始まる感情が感覚である」と述べています。//


ミミズのこころ

 ミミズはまっすぐな体をしている。片方が口で、もう片方が肛門。口から取り入れたものは「消化」されたら出口に向かう。消化された栄養分は「体内」に吸収される。ということは、吸収されるまでは「体外」に置かれる。ヒトも同じで、ミミズほど一直線ではないが、胃袋の中は「体外」である。
 //タンパク質が「文章」だとすれば、アミノ酸は文を構成する「アルファベット」に相当する。「I LOVE YOU」という文は、一文字ずつ、I、L、O、V……という具合に分解され、それまで持っていた情報をいったん失う。//
 これは、福岡伸一『動的平衡』68ページにある記述。うまいこと言うなあ、と感心した。分解されるまでは異物だから、ヒトの体は絶対に体内へ侵入させない。//体内に入ったアミノ酸は血流に乗って全身の細胞に運ばれる。そして細胞内に取り込まれて新たなタンパク質に再合成され、新たな情報=意味をつむぎだす。つまり生命活動とは、アミノ酸というアルファベットによる不断のアナグラム=並べ替えであるといってもよい。//と続く。
 さて、このミミズに「こころ」があるのだろうか? //中枢神経系を持つ動物なら、どんな動物にもこころはある、と考えるほうが、人間のこころは特別だと考えるより、ずっと無理がありません。//と記すのは、山鳥重(やまどり・あつし)という神経心理学者。(『心は何でできているのか』p55)
 福岡伸一氏は、ミミズに//「君の心はどこにあるの?」と訊ねることができ、その答えを何らかの方法で私たちが感知することができたとすれば、彼らはきっと自分の消化管を指すことだろう。//と記している。(『動的平衡』p73)

 「五感と直観と霊性」で「心の拠り所」に言及した。「ミミズのこころ」を実感することはできないけれど、福岡伸一氏や山鳥重氏の解題に触発される。
 「こころ」のありかは未だに判明していない。
 毛内拡がいうところのグリア細胞のはたらき(アナログ思考)などで、もしかして「こころ」が生じる?と考えるのは無理があろうか。ゆるやかに「霊性」の概念を広げて「霊性=こころ」(心の拠り所)としておいたようがよいかなと思う。

2022.11.10記す

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